【ネタバレ有り】こうばしい日々 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:江國香織 1990年9月にあかね書房から出版
こうばしい日々の主要登場人物
大介(だいすけ)
日本人の両親を持つアメリカ育ちの11歳。日本の記憶がなく、アメリカ男児として誇りを持っているが、同級生から差別されることもしばしば。
ジル(じる)
大介の同級生でガールフレンド。お喋り好きでおませな性格。
マユコ(まゆこ)
大介の大学生の姉。高校まで日本で暮らし、四年遅れてアメリカにやって来た。成績優秀で日本育ちに誇りを持っている。
ウィル
マユコと同じ大学に通う大介の友達。日本に強い関心を持つ。
パーネルさん(ぱーねるさん)
大介の通う学校の給食配膳として働く。
こうばしい日々 の簡単なあらすじ
日本人の両親を持つアメリカ育ちの11歳の大介は、日本人の見た目をしながら日本の記憶がなく、アメリカ男児としての誇りを持っています。料理上手なママに寡黙なパパ、日本贔屓な姉の四人暮らしです。同級生から日本人であることをからかわれることもありますが、大介はそれなりにアメリカ生活を楽しく過ごしていました。しかし、ガールフレンドのジルと喧嘩をしてしまい……。
こうばしい日々 の起承転結
【起】こうばしい日々 のあらすじ①
日本人の両親を持つ大介は、二歳のときに父親の転勤でアメリカに来て以来、11歳の今日までアメリカで暮らしているので、日本の記憶がありません。
日本人の見た目をしながら、アメリカ男児としての誇りを持っています。
大学生の姉・マユコは、日本の高校に通うため、大介たちより四年遅れてアメリカにやって来ました。
当時英語しか話せなかった大介と、ほとんど英語を話せなかったマユコは兄妹喧嘩さえできませんでしたが、猛勉強の末英語を習得したマユコは今ではすっかり憎まれ口を叩いてきます。
マユコは日本贔屓で、ママが作るコーンの入った味噌汁を見ては、これは味噌汁じゃないと怒ったり、成績優秀なことを褒められても、日本で教育を受けてきた人間なら出来て当然だと言い返します。
大介は日本人の見た目をしていながら、算数が得意じゃないことを同級生からからかわれたりするのが不服なので、何かにつけてアメリカと日本を比べたがる心理が理解できません。
自分はアメリカ育ちのアメリカ男児としての誇りを持っているからです。
【承】こうばしい日々 のあらすじ②
大介のママは料理が得意です。
肉パイやローストターキー、鴨肉のローストの他、大介の大好物のバナナスプリット(アメリカの伝統的なアイスクリームデザート。
アイスクリームもバナナも見えないほど生クリームたっぷりかかり、刻みチョコレートとシナモンがたっぷりちらしてある)や、焼きリンゴ等のデザートも上手で、週に二回お料理教室に通うほか、社会問題についても興味がありシンポジウムなんかにも参加しています。
日本人駐在員妻の会のメンバーでもあるので、日本料理を作ったりもします。
パパは仕事が忙しく、水曜日しか夕食をいっしょにとることはありません。
寡黙で会話はイエスかノーしかなく、大介はパパとの夕飯は緊張します。
野球が好きな大介は、たまにパパに球場に連れていってもらったりしますが、会話が気詰まりだったりします。
大介はアメリカンスクールに通っていて、ジルというガールフレンドがいます。
スクールバスは隣同士に座り、学校帰りはお互いの家に遊びに行ったりもします。
ただ学校では付き合っていることは内緒にしています。
大介はからかわれるのが恥ずかしい年ごろなのです。
ウィルという大学生の友達もいます。
ウィルは、マユコと同じ大学に通う学生で、日本文学や日本文化に関心を持つ変わった青年です。
他にも、大介の学校の給食配膳係をしているパーネルさんという老婦人とも友達です。
【転】こうばしい日々 のあらすじ③
ある日、学級会で劇をすることになった大介のクラスは、配役決めが行われていました。
脇役の一人を希望していた大介でしたが、なにかと大介につっかかってくるクラスメイトのサミュエルが嫌がらせで大介を主役に推薦してきます。
女子から人気のあるクラスメイトを抜擢した大介でしたが、多数決で大介が主役に選ばれてしまいます。
そこでジルが驚きの行動に出ます。
大介の相手役に立候補したのです。
クラスメイトから冷やかしを受け、いたたまれなくなった大介はジルに対し、冷たく接してしまいます。
大介の大人げない態度にジルはご立腹。
二人は言い争いになってしまいます。
以来、口をきかなくなった大介とジル。
劇の練習が始まると、二人への冷やかしはますますヒートアップ。
しつこいサミュエルに大介はついカッとなり、暴力をふるってしまいます。
サミュエルも負けじと反撃にでて取っ組み合いに喧嘩になります。
黒人の担任教師・ミズ・カークブライドから呼び出された大介は、サミュエルに「色男の日本人」と言われたことを話します。
自分は、日本のことは覚えていないし、日本語も話せないとも。
すると、ミズ・カークブライドは、自分はアメリカで生まれてアメリカで育ったアメリカ人だが、それでも黒人に子供を教育して欲しくないという人は何人もいると打ち明けます。
そして『ねえ、ダイ。
一つのことを、はじめから知っている人もいるし、途中で気がつく人もいる。
最後までわからない人もいるのよ。
』と諭します。
【結】こうばしい日々 のあらすじ④
ジルとは険悪な状態が続いていました。
怒っているジルは、劇の練習の最中、大介と目も合わせません。
意地を張るなと大介が注意すると、つまらない意地を張って、くだらない喧嘩をしたり、今までは隣同士で座っていたバスの席を、勝手に変えたりしたのは大介の方だとそっけない返答が返って来ます。
取り付く島もないジルの態度に大介は為す術がありません。
憂鬱な毎日を送る大介でしたが、ある日学校から帰ると、ママが大介の好物の焼きリンゴを焼いてるようでした。
甘い香りに誘われてキッチンに向かうと、そこにはジルの姿が。
困惑する大介にジルは、『ダイに会いに来たわけじゃないわ』と言い放ちます。
無言で焼きリンゴを平らげる二人。
いつもはやかましいくらいにお喋りなジルはこの時ばかりは一言も話しません。
そして早々にジルは席を立ってしまいました。
帰るというジルに、ママが送るように大介に言います。
少し距離をとりながら歩く二人。
ジルの家が近づくにつれて重い空気が漂います。
それまで後ろを振り返らず、前だけを見て歩いていたジルが大介の方を振り返り、『おこっているのよ』と毅然とした態度で言います。
謝っても許すかどうかわからないわというジルは、ぎりぎりの表情をしていて、告白してきた時と同じ顔をしていました。
大介はジルの口にそっとキスしました。
こうばしい日々 を読んだ読書感想
アメリカ育ちの日本人の少年の日常を鮮やかに描いた『こうばしい日々』は、大介少年が楽しく、時には悩みながらちょびっとだけ成長する様子が楽しめます。
デリケートな人種差別を織り交ぜながらも、少しばかりの葛藤に抑えているところが肝かなと思います。
作品のみずみずしさが損なわれることなく物語が展開されていきます。
美味しそうな料理が数々登場するのも魅力の一つで、バナナスプリットや焼きリンゴの描写は読んでいて思わずよだれが出てくるほどです。
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