【ネタバレ有り】ジョゼと虎と魚たち のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:田辺聖子 1987年1月に角川書店から出版
ジョゼと虎と魚たちの主要登場人物
ジョゼ(じょぜ)
本名山村クミ子。足が悪く幼い頃から車椅子生活を送る。父親が再婚し、一時期は父親と再婚相手の女性と連れ子と四人で暮らしていたが、生理がはじまり車椅子が必要なジョゼの存在は鬱陶しがられ、施設に入れられる。十七歳で祖母に引き取られ、以来高齢の祖母と二人暮らし。高飛車な性格できつい物言いをする。
恒夫(つねお)
貧乏な大学生。坂道から落とされたジョゼを助けたのがきっかけで、ちょくちょくジョゼと祖母の暮らす家を行き来するようになる。
祖母(そぼ)
施設に入れられ、引き取りてのなかったジョゼの面倒をみる。優しいが、人前にジョゼを出すことを嫌がる。生活保護を受けて暮らしている。
ジョゼと虎と魚たち の簡単なあらすじ
足が悪く車椅子生活を送るジョゼは、高齢の祖母とひっそり暮らしていました。ある日、心無い人のいたずらで坂道から落とされたジョゼは、大学生の恒夫に助けられ、それをきっかけに二人は交流を深めていきます。
ジョゼと虎と魚たち の起承転結
【起】ジョゼと虎と魚たち のあらすじ①
ジョゼこと山村クミ子は、高齢の祖母と二人暮らしをしています。
足が悪く幼い頃から車椅子生活を送るジョゼは、赤ん坊のときに母親が家を出て行ってしまったので、実母の記憶がありません。
父親が再婚し、一時期は父親と再婚相手の女性と連れ子と四人で暮らしていましたが、生理がはじまり車椅子が必要なジョゼは鬱陶しがられ、施設に入れられることになりました。
十七歳で祖母に引き取られ、以来生活保護を受けながらひっそりと暮らしていました。
祖母はジョゼに優しかったのですが、人前に出すことを嫌がった為、外の世界との接点はほぼありませんでした。
そんなある日、祖母と近所に買い物に出掛けた際に、心無い通りすがりのいたずらで、ジョゼは車椅子ごと坂道から突き落とされます。
祖母の悲鳴で、坂道を下ってくる車椅子の存在に気づいた青年が、体を張って制止してくれたので、惨事は免れましたが、ジョゼはショックで青ざめ、口もきけない状態でした。
そんなジョゼを心配し、家まで送り届けてくれたのが、貧乏大学生をしている恒夫でした。
【承】ジョゼと虎と魚たち のあらすじ②
恒夫ははじめ、小柄で化粧っけがなく市松人形のようなジョゼを年下の少女だと思っていましたが、話してみて、見た目とのギャップに驚かされます。
高飛車できつい物言いをするジョゼに慣れないうちは戸惑っていた恒夫でしたが、ちょくちょくジョゼとおばあちゃんが暮らす家に出入りするうちに、気にならなくなってきました。
ジョゼは気難しい性格の持ち主だったので、障がい者ボランティア団体の人からも距離を置かれているようで、外の風を運んでくるのは恒夫だけでした。
ある日、高齢の祖母が台所に立つのが億劫になると代わって料理をしたりしていました。
長いこと時間をかけて料理を作り、好きな読書をしてジョゼは毎日を過ごしていました。
時々遊びに来る恒夫が唯一の話相手でしたが、大学生でそれなりに忙しくしている恒夫に甘えることはありませんでした。
ジョゼという名前は、フランスの女流作家・フランソワーズ・サガンの小説に登場するヒロインの名前からとったもので、ある日突然、「山村ジョゼ」と名乗ることにしたのです。
ジョゼという名前にしたら、恒夫があらわれたので、ジョゼにとっては幸運を導いてくれる名前のように思えたのです。
【転】ジョゼと虎と魚たち のあらすじ③
就職活動や遊びに忙しく過ごしていた恒夫は、久しぶりにジョゼたちの住む家を訪ねます。
するとそこには見知らぬ人が住んでおり、おばあちゃんは亡くなって、車椅子のお孫さんはこの先のアパートで一人暮らしをしていると教えられます。
慌てて、ジョゼが住んでいるというアパートに駆け付けた恒夫は、やせ細って色艶を失ったジョゼと対面します。
顎がとがり、栄養失調のようなジョゼを見て、恒夫は自責の念にかられます。
これまでの近況をジョゼから聞いた恒夫は、思わず『めしはちゃんと食うとんのか、痩せてかわいそうに。
顔、しなびとるやないか。
』と言ってしまいます。
「しなびとる」と言われたジョゼは激怒し、恒夫に哀れむなと背中を向けてしまいます。
恒夫は怒鳴られて所在ないので、一旦帰ろうとしますが、怒らせたまま帰ろうとする恒夫にジョゼはさらに機嫌を悪くします。
途方に暮れる恒夫にジョゼはようやく本音を吐露します。
一人きりで寂しかったこと、少しでも話相手になって欲しいこと。
ジョゼが初めてみせるか弱い一面に、思わず恒夫は欲情してしまいます。
【結】ジョゼと虎と魚たち のあらすじ④
勢いでジョゼを抱いてしまった恒夫でしたが、その日を境に二人は彼氏彼女として付き合うようになります。
翌朝、久しぶりにジョゼを外に連れ出してあげようと恒夫がデートを提案すると、ジョゼから動物園に行きたいとリクエストされます。
恐怖に固まりながら虎を眺めるジョゼは、好きな人ができたら、虎を見たいと思っていたと打ち明けます、怖くてもすがれる人がいたら大丈夫だと思っていた。
けれど、そんな人一生かかってもできないと思っていたとも。
ある日、新婚旅行と称して二人は車で海に出掛けます。
実際には籍は入れておらず、ただの旅行でしたが、ジョゼは人生初めての旅行にご機嫌です。
水族館に遊びに行くと、いろいろな魚がおり、初めて見る魚たちにジョゼはまたしても大興奮。
恒夫が呆れるほど飽きずに魚に見入ります。
その夜、ホテルに戻り眠っていたジョゼですが、夜中にふと目が覚めます。
カーテンを払った窓から月光が差し込み、まるで海底洞窟の中にいるようです。
そしてジョゼは『死んだんやな』と思います。
ジョゼにとって幸福と死は同義語でした。
魚のように横たわる自分を死体になぞらえて幸福を噛みしめるのでした。
ジョゼと虎と魚たち を読んだ読書感想
映画化されもされた本作は、足が不自由なジョゼと、大学生の恒夫の交流を描いた青春小説です。
小説は二人が結ばれて、平穏な同棲生活を送っているところで終わっていますが、映画はより現実的でアンハッピーな結末を迎えます。
私は映画を観てから小説を読んだので、あっさりとした結末の原作に初見は物足りなさを感じましたが、読み返すうちに、これはこれで良いと思うようになりました。
ジョゼが幸福絶頂の中で物語が終結しているので、幸せの余韻に浸ったまま読み終えることができます。
原作も映画も素晴らしいので、どちらもおすすめです。
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