【ネタバレ有り】黄色い目の魚 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:佐藤多佳子 2002年10月に新潮社から出版
黄色い目の魚の主要登場人物
村田みのり(むらた みのり)
湘南近辺の高校に通う二年生。叔父でイラストレーター兼漫画家をしている木幡通に心酔している。強情で気が強く、友達と揉めることもしばしば。
木島 悟(きじま さとる)
みのりの高校のクラスメイト。サッカー部に所属しゴールキーパーをしている。独特のタッチで相手の特徴をつかむ似顔絵を描くのが得意。
木幡 通(こばた とおる)
「とおりゃんせ」名義で活動するイラストレーター兼漫画家。飄々とした風貌で、複数の彼女を持ち、縛られることが嫌い。
似鳥ちゃん(にとりちゃん)
長谷観音近くの小さなカフェ『ハーフ・タイム』でウェイトレスとして働く色白の女性。
木島 玲美(きじま れみ)
木島の妹。垢抜けて魅力ある容姿をしている。幼い頃の離婚が原因で父親を知らずに育ったため、父親くらい年が離れた男性を好む。
黄色い目の魚 の簡単なあらすじ
湘南近辺の高校に通う村田みのりと木島悟は、クラスメイトでありながら話したことは一度もなく、双方意識することなく過ごしていました。ところが、美術の時間にお互いの似顔絵デッサンをすることになり急接近。イラストレーターの叔父を持つみのりは昔から絵が大好きで、木島の独特なラインに釘付けになります。対して木島も、みのりの持つモチーフに圧倒されます。お互いを意識するようになった二人は仲を深めていきますが……。
黄色い目の魚 の起承転結
【起】黄色い目の魚 のあらすじ①
湘南近辺の高校に通う村田みのりと木島悟は、クラスメイトでありながら話したことは一度もなく、双方意識することなく過ごしていました。
みのりは小さい頃から人一倍気が強く、クラスメイトと揉めることもしばしば。
中学生のときにいつもくっ付いてきた友達を不用意な言葉で深く傷つけてしまい、後日和解したものの、そのことがトラウマとなり、高校では上手くやろうと自分を隠して過ごしています。
気の許せる友達はおらず、家でも反抗的なみのりは居場所がありません。
唯一寛げる場所は、イラストレーターの叔父がいるアトリエです。
大磯駅近くのマンションにあるそこは、みのりの大好きな場所です。
叔父は姪のみのりを子供扱いすることなく、自分も叔父役をすることに毛嫌いしており、みのりは叔父の通を「通ちゃん」と呼び、通の描くイラストや漫画をこの上なく大事に思ってきました。
対する木島はサッカー部に所属し、いつもサッカー仲間とワイワイ楽しく過ごしています。
幼い頃に両親が離婚し、母親に引き取られてから父親とは疎遠になりましたが、一回だけ父親から絵を習ったことがあり、以来癖のように陰で絵を描き続けています。
【承】黄色い目の魚 のあらすじ②
授業中、いつものように教師の顔をスケッチしていた木島は、教師に見つかり怒られます。
本人も描きたくて描いている訳ではないのですが、治らない癖のようなもので、気が付いたら手が動いてしまっているのです。
教師だけなく、目についた人物を片っ端からスケッチする木島は、ある日昼休みに、みのりの数少ない友達の須貝のスケッチをします。
木島の絵は相手が喜ぶ類のものではなく、むしろ気にしているコンプレックスをえぐり出すのが特徴で、描かれた人は泣きだしてしまう子もいれば、怒り出す人もいるくらいです。
そんな木島をみのりは糾弾します。
午後の授業のチャイムが鳴り、この一件はうやむやになりますが、後日、美術の授業でお互いの似顔絵を描くことになってしまったみのりと木島。
気まずい雰囲気が流れますが、みのりは木島の描くラインに見惚れてしまいます。
しかし、水彩画が課題にもかかわらず、デッサンをはじめた木島に美術教師は叱責し、木島を教室から追い出してしまいます。
みのりは木島の後を追いかけます。
そして、木島の描く絵には人を怒らせたり、惹きつけたりするくらいパワーがあると伝えます。
その日以来、二人はお互いを意識するようになります。
【転】黄色い目の魚 のあらすじ③
美術の授業以来、木島はみのりがモチーフの絵を描くようになります。
木島の熱視線を感じながら、みのりは大好きな叔父のアトリエに通い続けます。
最近通は同じ女の子の絵しか描きません。
モデルのその子をとても大切に思っていることが、側にいるみのりにも伝わってきます。
そのモデルの正体は、木島たちがよく通っている『ハーフ・タイム』というカフェの店員でした。
木島に誘われ店を訪れたみのりは、モデルの似鳥ちゃんと対面します。
似鳥ちゃんはみのりたちよりも年上で、色白で可愛らしい顔に、口の横に小さな傷がありました。
似鳥ちゃんは通の絵を快く思っていないらしく、モデルにされて迷惑していると発言。
みのりは似鳥ちゃんの言葉が許せず、似鳥ちゃんに食って掛かります。
そんなみのりの態度を見て、木島はみのりにとって叔父の通は大切な人なのだと理解します。
木島はみのりを通じて、どんどん絵の世界に没頭するようになっていきますが、母は別れた旦那と木島を重ね、絵を描くことをやめさせようとします。
そんな中、妹の玲美がネットで出会った年の離れた男の家と暮らすと家を飛び出してしまいます。
【結】黄色い目の魚 のあらすじ④
玲美の家出騒動で家は荒れ、そこにサッカー部連中とのいざこざも重なり、木島は居場所がなくなります。
フラフラと彷徨い辿り着いた『ハーフ・タイム』で似鳥ちゃんと話した木島はそのまま似鳥ちゃんが住む家へ付いていき、二人は関係を持ってしまいます。
そのことをみのりにだけは知られたくなかった木島でしたが、勘のいいみのりは、いつもと様子の違う木島に、似鳥ちゃんのことを問いただします。
言葉を濁す木島でしたが、まっすぐこちらを向くみのりの視線に耐えきれず、正直に打ち明けてしまいます。
ショックを受けたみのりは、通のアトリエへ逃げ込み、木島を避けるようになります。
みのりから避けられても木島はみのりの絵を描き続けます。
スケッチブックいっぱいにみのりの絵を描いていきます。
みのりと木島は話さないまま時間は流れました。
納得のいく絵が描けた木島はみのりに電話をします。
久しぶりのみのりの声に緊張する木島。
みのりは『七里ガ浜で待ってる』とだけ言って電話を切ります。
具体的な場所はわからないまま、木島は走りながら七里ガ浜に向かいます。
みのりの姿を見つけた木島は息を切らしながら、みのりに書きあげたスケッチブックを渡します。
そしてみのりに、おばさんになっておばあさんになっても一生かけてみのりを描き続けたいと宣言し、みのりは、やっと笑顔になり、二人はいい絵を描き続けることを誓い、指切りげんまんするのでした。
黄色い目の魚 を読んだ読書感想
湘南が舞台のこの小説は、鎌倉や七里ガ浜、長谷が登場し、訪れたことがある人なら情景を思い浮かべてしまうようなところが魅力です。
高校生のみのりと木島を中心に繰り広げられる人間模様が青春ど真ん中という感じで、思春期特有の息苦しさや将来の夢、友達や家族との関係がリアルな心理描写で書かれています。
興味の対象が変わり、木島がサッカーの練習よりも絵の勉強に時間を割きたいと思ったり、みのりがこれまで最も影響を受け、心酔してきた叔父の通との関係性に悩んだり、成長過程にある二人の心情が緻密に描写されています。
重いテーマにもかかわらず、通り抜けの良い文章で、青春小説としてお勧めの作品です。
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