【ネタバレ有り】指の戯れ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:山田詠美 1986年5月に河出書房新社から出版
指の戯れの主要登場人物
ルイ子(るいこ)
ヒロイン。 異性との交遊関係が派手でパーティー好き。
リロイ・ジョーンズ(りろい・じょーんず)
ルイ子の元恋人。 ジャズ・ピアニスト。
DC(でぃーしー)
ルイ子の現在の恋人。
T・ベイビー(てぃー・べいびー)
ルイ子の友人。
指の戯れ の簡単なあらすじ
パーティー会場で所在無げにしていたのは、アメリカ南部出身青年リロイ・ジョーンズです。ルイ子はリロイに声をかけてしばらくの間恋人として連れ歩きますが、無名のピアニストである彼をあっさりと見限ります。失意のまま日本を去ったリロイが社会的な成功を経て舞い戻ってきた時、今度はルイ子が彼に振り回されていくのでした。
指の戯れ の起承転結
【起】指の戯れ のあらすじ①
「パーティーフリーク」とまで揶揄されるような派手好きなルイ子の友人たちと比べると、リロイ・ジョーンズは大人しい性格で野暮ったい服装でした。
周りの人たちのように、 新しいファッションや流行にもまるで感心を示すことはありません。
彼の素性に興味を抱いたルイ子は、グループの中心的な立ち位置にいるT・ベイビーにそれとなく尋ねてみます。
都会育ちで上流階級に属するメンバーが多い中でも、リロイは自身の南部訛りとアフリカ系アメリカ人としての育ちがコンプレックスになっているようです。
ルイ子とリロイは乱痴気騒ぎへと発展している皆を放っておいて、こっそりとクラブの外を出ました。
パーティーの喧騒が遠ざかるに連れて、ふたりの間には不思議なときめきと居心地の良さが涌いてきます。
リロイが間借りするアパートへと招かれたルイ子は、その日のうちに彼と愛し合うようになりました。
それ以降ふたりの関係の主導権を握ったのは、 当然のようにルイ子です。
【承】指の戯れ のあらすじ②
パーティーを抜け出した翌日から、ルイ子とリロイとのカップルは仲間たちの間では知れ渡っていました。
周りから注がれていく好奇の眼差しが続いたために、自然とお互いの部屋に閉じ籠ることが多くなっていきます。
リロイはピアノを弾くことが大好きで、知り合いが経営するバーの閉店後のステージを借りてレッスンに打ち込む毎日です。
移り気なルイ子はリロイとの関係だけでは満足することなく、自堕落な悪友たちのところに戻って明け方まで騒ぐようになりました。
ルイ子とその一向の遊び場は東京都内ばかりではなく、近郊のアメリカ軍基地のクラブにまで及びます。
時折クラブで演奏するリロイの姿を見かけましたが、ルイ子が彼に声をかけることはありません。
間もなくリロイはアメリカへ帰国して軍を除隊処分となり、プロのミュージシャンを目指すことになります。
リロイが再び日本へ舞い戻ってきたという知らせをルイ子が聞いたのは、それから2年の歳月が流れた後のことです。
【転】指の戯れ のあらすじ③
ルイ子は相変わらずパーティーに明け暮れていて、今夜は「ボール」と呼ばれる正装での舞踏会です。
今現在のパートナー・DCと食事やお酒を楽しんだ後に、ダンスフロアへ移動しました。
ステージでタキシードを身につけて踊っている男性が、あのリロイだとはルイ子は夢にも思いません。
今や彼は若手のピアニストの中でもナンバーワンで、過去にルイ子がリロイを「拾った」ことを知ってDCは頻りに感動しています。
取り巻きに囲まれて堂々たる姿には、以前の純朴な田舎の青年の面影はありません。
リロイがさりげなく向ける熱い視線に耐えられなくなったルイ子は、DCの相手をその場にいたパーティー仲間に頼んで会場を飛び出します。
赤坂の街を当てもなくさ迷い歩いていたルイ子を、強引に車の中へ引き摺り込んだのはリロイです。
その日以来リロイは滞在先から幾度となく呼び出し、ルイ子は傷つけられると分かっていながらもホテルの客室まで駆け付けるようになりました。
【結】指の戯れ のあらすじ④
新聞の音楽欄に載っていた記事を見て、ルイ子はリロイの特別公演があることを知りました。
公演終了後には直ぐに帰国してアルバムの制作に入るようで、ルイ子は居ても立ってもいられません。
暑い夏の午後に汗を浮かべて自分のもとを訪れたルイ子に対して、リロイは見下すような笑みを投げ掛けるだけです。
思わず人種差別的な言葉を投げつけたルイ子を、リロイはベッドに縛りつけようとします。
ルイ子がベッドの横のブロンズの置物に手を触れたのは、全くの物の弾みでした。
気がつくとリロイの頭の上に振り下ろしていて、彼はルイ子の前に倒れたままで二度と返事をしません。
リロイの死は有名なジャズミュージシャンが起こした女性への暴行未遂事件として、当分の間ゴシップを賑わします。
ルイ子の両手首と足には縛られたような青アザが付いていたために、警察は正当防衛の判断を下して彼女は罪には問われません。
ルイ子はDCの待つ家に帰って、何日もの間眠り続けるのでした。
指の戯れ を読んだ読書感想
かつては自分が捨てたはずの恋人が、ミュージシャンとして成功を収めて舞い戻ってくる大人のラブストーリーでした。
ふたりの男性の間を烈しく揺れ動きながらも、全てを受け流すようなヒロイン・ルイ子の姿が儚げに映ります。
新進気鋭のピアニストとして脚光を浴びながら、ルイ子への未練を断ち切ることが出来ないリロイ・ジョーンズの生きざまも痛切です。
バド・パウエルからビリー・ホリデイまで、随所に散りばめられたジャズに関する薀蓄も味わいがあります。
破滅的なクライマックスの中にも、何処かピュアなロマンスの余韻を感じました。
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