【ネタバレ有り】阪急電車 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:有川浩 2008年1月に幻冬舎から出版
阪急電車の主要登場人物
翔子(しょうこ)
美人で仕事もできる大阪の会社に勤めるOL。婚約者を同期に寝取られたが、復讐した後、転職して小林駅に移り住む。
時江(ときえ)
仁川に住む老婦人。愛犬家で、孫娘と共によく散歩をしている。他人のことを放っておけない性格。
ミサ(みさ)
少し派手目の女子大生。イケメンの彼氏と付き合っているが、暴力を振るわれ別れる決意をする。自宅は小林駅周辺。
征志(まさし)
小林駅周辺に住む、読書が趣味の青年。図書館をよく利用している。
阪急電車 の簡単なあらすじ
阪急宝塚線の宝塚駅から西宮北口駅までの8駅を舞台に1駅1話の構成で描いていきます。往路と復路で全16話の短編を繋ぎ合わせて一つの小説となっています。各話で登場人物も異なりますが、時には助け合ったりすれ違ったりしながら話のところどころで絡み合います。婚約者を取られたOL、彼氏と上手くいかない女子大生、彼氏が出来たばかりの女子高生など電車を利用する普通の人々の日常をストーリーの軸としています。
阪急電車 の起承転結
【起】阪急電車 のあらすじ①
図書館をよく利用する征志は、中央図書館からの帰りの電車で隣に座った女性がかつて本の争奪戦に敗れたことがある人だと気づきます。
女性は窓の外を嬉しそうに眺めており、征志も釣られて見てみると生という字が石で川の中洲に作られていました。
女性は得意そうにすごいでしょと征志に話しかけてきます。
生について議論するうち、二人は意気投合し次に会ったら飲みに行こうと約束します。
宝塚南口駅では、白いドレスを着た翔子が電車に乗り込みました。
翔子は5年も付き合った彼氏と婚約までしていたにも関わらず、同期の地味な女に彼を寝盗られた為、婚約破棄を受け入れる代わりに結婚式に招待させていました。
そして白いドレスを着て結婚式に現れ台無しにして来た帰り道でした。
翔子は征志と彼女のやり取りを横目に見ながら、自分は失恋の後なのに、これから恋が始まりそうな二人を見て辛くなります。
逆瀬川駅に着くと、征志は降りていく彼女を追いかけて次と言わずに今から飲みに行こうと誘います。
その横を通り抜け、時江が孫娘の亜美と共に電車に乗り込んできます。
亜美は、白いドレス姿の翔子を見て「花嫁さん」と声を上げますが、翔子は涙を流し始めます。
時江は、翔子に声をかけ慰めると共にアドバイスをします。
翔子は時江の勧めに従い、次の小林駅で降りていきます。
時江は孫娘と犬について話し始めます。
小林駅で降りた翔子は周辺の雰囲気を気に入ります。
スーパーに立ち寄って普通の服を購入し着替えます。
引き出物とドレスを処分し、メイクを直すと、不思議と復讐の念も消えてきて、潮時はいつにしようかと考え出します。
【承】阪急電車 のあらすじ②
小林駅から電車に乗ってきたミサと彼氏のカツヤは、些細なことからケンカを始めますが、カツヤは本気で怒りだしドアを蹴るなど暴れだします。
それを見た亜美が泣きだし、カツヤはさらに激昴します。
仁川駅に着くとカツヤは必死に止めようとするミサを無視して電車を降りていき、時江と亜美も電車を降ります。
ミサは時江に謝りますが、時江はカツヤのことを下らない男と切り捨て、やめておいた方が良いとミサに忠告して去っていきます。
ミサはカツヤと別れようと考え始め、再び電車に乗り込みます。
甲東園駅では、女子高生の集団が乗り込んできます。
ミサはその会話を聞いていると面白おかしく話す中でも自分よりもきちんとした恋愛をしているなあと思い、カツヤとは別れる決心を固めます。
門戸厄神から西宮北口へ向かう電車の中、大学一年の圭一は隣に立つ女の子が同じ大学の同級生だと気づき話しかけます。
圭一は軍オタという自分の嗜好に、彼女は権田原美帆という名前にそれぞれコンプレックスを持っていましたが、お互いにそれを明かしたところで少し打ち解けます。
二人とも大学デビューを狙ったものの失敗しており、異性と付き合った経験もない、地元は関西でなく下宿しているなど共通点も多く、話しているうちにお互いを気に入りその日から付き合うこととなります。
【転】阪急電車 のあらすじ③
ミサが西宮北口駅から宝塚行きの電車に乗ると、後からオバサン軍団がやってきます。
翔子がミサの隣の空いている席に座ろうとすると、オバサンはその席目がけてカバンを投げて席を確保します。
あまりのことに唖然とする翔子とミサですが、怒ろうとしたミサを制して翔子は立ち去ります。
ミサは品のないオバサン達を横目に少し自分の過去を振り返っていました。
結局カツヤと別れるのには半年ほどかかり、その間に何度もアパートに押しかけられて殴られたり、部屋の前で怒鳴り散らされたりしたために困り果てたミサは幼なじみのマユミを頼ったのでした。
マユミの兄の健吾は、ミサも旧知の仲なのですが、大学の空手部で副主将をしています。
カツヤを呼び出しミサと別れるように約束させ、今後二度と手出しが出来ないようにしてくれました。
そんなことを考えていると、ミサの隣に座っていたオバサン達の一人、康江が苦しみだします。
それほど裕福で無い家庭の康江は、家族を差し置いて自分だけが高いランチを食べに行くことに葛藤を抱えており、胃が痛くなったのでした。
しかし、オバサン軍団は誰も康江のことを心配せず、他人であるミサだけが気遣ってくれます。
門戸厄神駅で降りた後、胃薬を飲んで休んだ康江は共に電車を降りてまで介抱してくれてミサに事情を話します。
ミサからはオバサン軍団との付き合いを止めた方が良いと忠告され、康江はミサに礼を言うと共にその忠告に従うことを決めます。
甲東園を過ぎたあたり、圭一と美帆が線路の切り通しに生えるワラビを見ています。
窓から見えるワラビを取りたがる美帆に対し、圭一は過去の甘い思い出を振り返りつつ、もう少し安全な山菜採りを提案します。
【結】阪急電車 のあらすじ④
翔子は結婚式への討ち入りからしばらくして転職し小林駅の近くに引っ越していました。
午後が休みとなり会社から早く帰ってきた電車内にて、小林駅へ引っ越してきて良かったなと物思いに耽りながら、傍でワラビについて話す仲睦まじい大学生カップルを羨ましく思います。
小林駅で降りると、小学生の女の子がイジメを行なっている現場に出くわしますが、イジメられている子は毅然とした態度で対応しています。
翔子はその子が座るベンチの隣に腰掛けると励ましの言葉をかけそっとハンカチを渡します。
実は女の子もショウコという名前だと分かり、翔子は自分は少し躓いたけど幸せになるために頑張るから共に頑張ろうと約束します。
女の子と別れ階段を登ると、到着した電車からミサが降りてきます。
先ほどの西宮北口駅での出来事からミサは翔子に話しかけ、二人は自身の体験した事を話のネタにお茶をしようと歩き出します。
逆瀬川駅にて、宝塚行きの電車を待っていた時江は隣に立つカップルが半年ほど前に見かけた恋に発展しそうだった男女だと気づきます。
時間の経つのは早いものだと感じながら、時江は孫娘の亜美と共に電車を待っていました。
電車に乗り込むと喧しいオバサン軍団がおり、亜美が何で大人なのにうるさくしてるのと尋ねてきます。
それを聞きつけたオバサン達が文句をいってきますが、時江は真っ向から受けて立ちます。
征志と彼女のユキのカップルも時江に加勢するとオバサン達は完全に論破され、宝塚南口駅にて逃げるように降りていきます。
時江と亜美に別れを告げ、征志と彼女のユキは別車両に移り出会った頃の思い出に浸ります。
二人は出会う前からお互いを意識しており、付き合い始めてからも共通の趣味である図書館通いや時々飲みに行くというデートを重ねていました。
そろそろ結婚を見据えて同棲しないかという征志の提案をユキは快諾し、物語は幕を閉じます。
阪急電車 を読んだ読書感想
関西の私鉄それも支線である阪急今津線の沿線を舞台にした小説です。
しかも特定の主人公がいるわけでもなく、人々の普段の生活を物語にしてしまうという部分が斬新でなかなか無い発想の作品だと思います。
登場人物は特に変わった所のないOLや大学生、高校生、主婦、老婦人などであり、これらの人々が時には交わり、時にはすれ違いながら暮らしているところを上手く話として繋いでいっています。
場合によってはたまたま会って一言二言会話を交わしただけでも、アドバイスを受けた側は人生を大きく変えるような決断をすることもあります。
人と人との繋がりというものはそうやって成り立っていくのかもしれないなとしみじみ思えるような小説になっています。
この小説を読むと、電車に乗っている他人の言動が気になるようになるかもしれません。
意外といつもの通勤や通学中に人生を変えるような出会いがあるかもしれないので、ただ電車に乗るという事がとても楽しみになる本です。
コメント