「シアター! 1」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|有川浩

シアター!

著者:有川浩 2009年12月にアスキーメディアワークスから出版

シアター! 1の主要登場人物

春川司(はるかわつかさ)
主人公。工務店で営業を担当。現実的でお金にはうるさい。

春川功(はるかわいさお)
司の弟。 劇団「シアターフラッグ」の主宰。夢見がちな性格。

羽田千歳(はねだちとせ)
新人俳優。声優としてのキャリアは10年以上。

黒川勝人(くろかわかつひと)
功の大学時代の同級生。 劇団の創設メンバー。

茅原尚比古(かやはらなおひこ)
劇団の俳優。 ウェブデザイナーとしても活動する。

シアター! 1 の簡単なあらすじ

劇団を運営していた春川功は300万円もの赤字を出してしまい、3つ年上で子供の頃から頼りにしていた兄の司に泣き付きます。

借金を全額肩代わりした司が劇団側に提示した条件は、自分が運営に加わることと2年間の間に300万円の収益を上げることです。

メンバーからの反発や公演当日のアクシデントに悩まされながらも、司は弟の夢に付き合うことを決意するのでした。

シアター! 1 の起承転結

【起】シアター! 1 のあらすじ①

堅実派の兄と理想を追う弟

春川司には3つ年下の弟・巧がいましたが、幼い頃から引っ込み思案な性格が原因でいじめられていました。

売れない役者だった父親は知人のワークショップを手伝っていて、功はそこで演劇の児童コースに通い始めます。

生まれて初めて自己実現をかなえた功は中学・高校と演劇部に在籍して、大学時代には仲間たちと自分の劇団「シアターフラッグ」を立ち上げるほどの熱中ぶりです。

司が工務店に就職して忙しく仕事に追われている中でも、功は大学を卒業した後も演劇にかまけていて一向に定職に就くつもりはありません。

ある時に功の劇団で運営管理を任されていた制作担当者が辞めることになり、これまで立て替えていた300万円もの赤字の一括返済を求められてしまいました。

今から2年の間に劇団で300万円の収益を上げること、債務期間中の資金繰りは全て司が管理すること。

司は300万円を融資する代わりにふたつの条件を突き付けて、達成できなければシアターフラッグを解散することを約束させます。

【承】シアター! 1 のあらすじ②

血のにじむ緊縮財政

司はシアターフラッグに入って2カ月足らずで演技経験はないものの、声優として人気のある羽田千歳に目を付けていました。

彼女の知名度を最大限に生かしてブログで公演情報を告知・宣伝してもらうためには、劇団員でもありフリーでウェブデザインの仕事をしている茅原尚比古の協力も欠かせません。

上映終了後の物販収入でも売り上げを稼ぐために、過去の公演の中で評判がよかった作品をDVDに焼いて出口に並べて販売します。

「ジン」こと秦泉寺太志の実家は映像制作の下請け会社を経営しているために、ほとんど原価だけで作ってもらうことが可能です。

司は次回作の出し物には衣装代やセットに予算を取られる、ファンタジーやSFといった設定を全面的に禁止してしまいました。

演劇に関してはまるっきりの素人である司が脚本の内容にまで口を挟むようになったために、古参の団員・黒川勝人は面白くありません。

金銭感覚に異様なほどシビアな司を皮肉って、黒川は司に「鉄血宰相」というニックネームを付けます。

【転】シアター! 1 のあらすじ③

大盛況の公演に水をさされる

功が書き上げた新作のタイトルは「掃き溜めトレジャー」で、主人公は浪人生でおんぼろアパートが舞台になるためにほとんどお金はかかりません。

勤め先ではリフォームも請け負っている司は、廃棄になる資材を施工主から無料で譲ってセットの代わりにしました。

かつては演劇青年だったという司の上司や、現場でお世話になっている職人さんたちもチケット購入に気前よく協力してくれます。

演劇雑誌では取り上げてもらえないものの、サブカル系情報誌に千歳のインタビューが載ったこともあり初日は大盛況です。

シアターフラッグの公演は年2回のペースで行われているために、2年間で300万円を返済するためには千秋楽までに75万円を売り上げなければなりません。

客足も順調に伸びていく中で最終日の日曜日を迎えた団員たちが本番前の準備に追われていると、館内の非常ベルが鳴り響きました。

今回の会場として確保した文化センターには各階にホールや教室が入っていて、3階にある料理スタジオから火災が発生したようです。

【結】シアター! 1 のあらすじ④

公演は終わっても夢は終わらない

すぐさま消防車が駆け付けて火事はボヤで消し止められましたが、周辺には消火栓からのホースが伸びて館内にも入り込んでしまい予定通りに上演する訳にはいきません。

あきらめきれない千歳や黒川を何とかなだめて、司は功とジンに自宅に保管してある売上金を払い戻し用に取ってくるように指示を出しました。

茅原はオフィシャルサイトを通じて公演の中止を告知しつつ、シアターフラッグが火事を出したと誤解されないように収めます。

払い戻しにやって来たお客さんからはほとんど苦情がなく、楽しみにしていた舞台が観られなかったことを残念がる見舞いの言葉の方が多いくらいです。

後片付けが終わって劇場から出てきた劇団のメンバーたちは、誰も彼もが魂が抜けたようや顔で生気がありません。

普段は金勘定にうるさい司が、景気づけとしてポケットマネーで打ち上げに連れていってくれると聞いた途端に騒がしくなります。

もしも火事がなかったら目標の75万まで届いていたと頭の中で計算した司は、弟たちの夢に期限のギリギリまで付き合うことに決めるのでした。

シアター! 1 を読んだ読書感想

しっかり者のお兄さん・司と、才能は豊かなながら現実と付き合うことが苦手な弟の功との組み合わせには心温まりました。

春川兄弟を得意のパソコン技術でサポートする茅原尚比古や、声優から舞台女優への転身を図る羽田千歳など脇を固めるキャラクターにも魅力があります。

無名の劇団が次から次へと現れては消えていく中で、生き残りをかけた厳しい業界の裏事情も垣間見ることが出来ました。

「鉄血宰相」などど仰々しいあだ名を付けられながらも、少しずつ演劇の世界へとひかれていく司の心変りも印象的です。

正反対の道のりを歩んできた兄と弟が、同じ目標に向かって一歩踏み出していくようなラストも心に残ります。

コメント