「憤死」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|綿矢りさ

「憤死」綿矢りさ

【ネタバレ有り】憤死 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:綿矢りさ 2013年3月に河出書房新社から出版

憤死の主要登場人物

私(わたし)
本作の主人公。幼少の頃、目が悪く分厚い眼鏡をかけており、給食の時間に牛乳をもどしてからは「ゲロ子」とあだ名をつけられ不遇な小学校生活を送る。小学生の時に親しくしていた友人の佳穂が飛降り自殺をはかったと噂を聞き、興味本位でお見舞いに行く。

佳穂(かほ)
金持ちの自慢好きで、いわば女版スネ夫のような性格。学校内ではおとなしいが、私と二人きりになる放課後は女王様のような振る舞いをする。大学生の頃に留学から一時帰国した際は、金持ちのいやらしさが全面に出て威圧感が増していた。現在はニートのような生活を送り、飛降りするが足を骨折するだけの軽傷で済み、入院している。

憤死 の簡単なあらすじ

近眼眼鏡で、給食の時間に牛乳をもどしてからは「ゲロ子」とあだ名をつけられ不遇な小学校生活を送るはめになった私は、小学生の時に親しくしていた友人の佳穂が飛降り自殺をはかったという噂を聞き、お見舞いに行くことに。私には佳穂の身を案じる気は毛頭なく、ただの興味本位です。子供の時から家が金持ちのなのを良いことに選民意識が強く、自慢好きで、いわば女版スネ夫のような性格だった佳穂。大学生の頃に再会した佳穂は、金持ちのいやらしさが全面に出て威圧感が増していました。そんな彼女が飛降り自殺をはかったというのです。佳穂に一体何が起きたのでしょうか。

憤死 の起承転結

【起】憤死 のあらすじ①

主従関係

小学校の頃にいつも一緒に遊んでいた友人の佳穂が飛降り自殺をはかった噂を聞いた私はお見舞いに出向きます。

私の小学生時代ときたら近眼眼鏡で、給食の時間に牛乳をもどしてからは「ゲロ子」とあだ名をつけられそれは不遇なものでした。

そんな私といつも一緒にいたのは同級生の佳穂という少女でした。

佳穂は家がお金持ちで、子供ながらに本人もそれを自覚しており、選民意識が強く自慢しいな女版スネ夫のような性格の持ち主でした。

見た目は太っていて魅力に乏しい外見でしたが、佳穂は身の程知らずで、うぬぼれ屋でもありました。

友人として佳穂を好ましく思ったことは一度もなく、クラスのはじかれ者同士自然と一緒にいることになったのです。

学校では育ちの良いおっとりとした子を装っていますが、放課後私と二人きりになると、女王様のように振舞い、決まって私は家来役でした。

しかし、佳穂の家では、普段めったに食べられないショートケーキがおやつに出たりするので、美味しいおやつ目当てで仲良くしていました。

【承】憤死 のあらすじ②

癇癪

小学生の頃にうさぎ当番がありました。

クラスのみんなで飼っていたうさぎの世話を持ち回りでしていたのですが、佳穂は笑顔でしかし頑なに拒否し続けていました。

動物の世話はお手伝いさんがやるものだと考えていたのです。

それでもクラスメイトから非難され、しぶしぶ引き受けた佳穂は、うさぎ小屋に向かい驚きの行動にでます。

『鳥が威嚇するような鋭い叫び声をあげたかと思うと、彼女は花壇の土を踏み散らし、餌入りのバケツを小屋の金網に思いきりぶつけます。

両手を振り、地団駄を踏んで、体全部で金網を揺すります。

髪をふり乱して金網を揺すり、奇声をあげながらバケツを蹴飛ばす佳穂の姿は、怒りというよりほとんど発作じみた行動です。

』怒り狂う佳穂の姿に私はほれぼれとします。

それまでは、密かに心の中で佳穂を馬鹿にし、友人としては一度も好きだと思ったことはありませんでしたが、私は佳穂の非凡な怒りの才能を発見し、研究対象として佳穂に興味を持ちます。

【転】憤死 のあらすじ③

成長

中学生になると私と佳穂は疎遠になったものの、大学時代に一度会う機会がありました。

留学から一時帰国した佳穂は、金持ちのいやらしさが全面に出て、小学生の頃にあった無邪気さがなくなり、威圧感が増していました。

自慢話は昔からでしたが、話すこと全部が全部その手の話で、以前は私の前でしか見せていなかった佳穂の高慢さが外に表れるようになっていました。

子太り気味も相変わらずで、本人的にはそれも魅力の一部と捉えているようです。

父親の仕事関係で出会った19歳年上の男性に恋をしているらしく、私はその話だけ唯一面白く聞くことができました。

大学生になり更にパワーアップしている佳穂の勘違いぶりを、寒々しくも興味深く見守っていた私。

さらに数年経ち、看護師として働いていた私の耳に佳穂が飛降り自殺をはかったという噂が入ります。

あの佳穂に一体何が起こったのかと興味が湧いた私は、早速入院している病院に佳穂の様子を伺いに出向きます。

【結】憤死 のあらすじ④

憤死

佳穂は自宅のバルコニーから飛降りをしながらも、奇跡的に足の骨折だけで命に別状はありませんでした。

ベッドに横たわる佳穂に私は近況を尋ねます。

ほとんどニートのようなもので、たまに料理教室に通っているぐらいなのだと、恥ずかしそうに肩をすくめながら答える佳穂に、私はがっかりしてしまいます。

いつも自信満々で自信に満ち溢れていた佳穂はそこにいませんでした。

どうして飛降りなんかしたのか理由を聞いてみると、一世一代の恋に破れたからだという返答が。

どうやら以前話していた19歳年上の男性とうまくいかなったようなのです。

ヒロインを気取る佳穂はさらに続けます。

死ぬ気なんてなかったこと、別れが悲しくて生きていられないと悲観して飛降りたわけではないこと。

なんと佳穂は怒りにまかせて飛び降りたというのです。

飛降りでもしなきゃ腹の虫がおさまらなかったという佳穂の言葉に、私はそうでなくちゃと嬉しくなります。

うさぎ小屋の掃除に起こした癇癪を目撃して以来の尊敬の念を私は佳穂に抱くのでした。

憤死 を読んだ読書感想

「憤死」というパワーワードに負けず劣らず、女版スネ夫の佳穂のキャラクターが強く、最後まで面白く読める作品です。

私の冷めた目線は綿矢作品の『蹴りたい背中』の主人苦を彷彿とさせます。

高慢で選民意識が強く、自慢しいの佳穂と付き合っているのは、おやつの為だけだと断言する主人公の潔さは、自分が佳穂だったらつらいなあと思います。

おそらく佳穂は主人公よりは友人として好いている気がするので。

たしかに一人ミュージカルを延々披露されるのはつまらないだろうし、毎日自慢話を聞くのもうんざりすると思うけど、もうちょっと温かい目でみてあげて、と佳穂寄りだった過去を持つ自分は思います。

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