「夜かかる虹」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|角田光代

「夜かかる虹」

【ネタバレ有り】夜かかる虹 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:角田光代 2004年11月に講談社から出版

夜かかる虹の主要登場人物

遠野フキコ(トオノ フキコ)
結婚適齢期を迎える主人公。三つ年下の妹・リカコに振り回される。会社の元同僚から北村修平を略奪し、現在はその会社を退職しフリーターをしている。

遠野リカコ(トオノ リカコ)
フキコの妹で、だらしないが明るい性格で甘え上手。男にすこぶるモテる。ちょくちょくフキコの家に遊びに来るようになり、フキコの彼氏・修平と親密になる。

北村修平(きたむら しゅうへい)
フキコの彼氏。マスコミ系の会社に勤めている。ミーハーは性格でタレントの噂話や自慢話が好き。

夜かかる虹 の簡単なあらすじ

フキコには容姿がそっくりな三つ年下の妹・リカコがいますが、姉妹の性格は正反対。リカコはだらしないけれど明るい性格で甘え上手、昔から男にすこぶるモテてきました。姉のフキコを慕っていますが、幼いころからリカコにお気に入りのおもちゃや洋服、両親の愛情までも奪われてきたと感じているフキコは、リカコのことを可愛がれません。そんな中、リカコが近所に引っ越してきます。ちょくちょくフキコの家に遊びにやって来るようになり、フキコの彼氏とも親しくなっていきます。昔からあらゆるものをリカコに奪われてきたフキコの胸中は穏やかではありません。

夜かかる虹 の起承転結

【起】夜かかる虹 のあらすじ①

テレビ

フキコにはマスコミ系会社に勤める北村修平という彼氏がいます。

修平は会社の元同僚の恋人で、飲み会で修平を気に入ったフキコは、転職の相談をするふりをして親密になり同僚から略奪して付き合うようになりました。

現在、フキコは会社は辞め、サンプリングを配るアルバイトをしながら修平と結婚する日を夢見ています。

毎週金曜日は決まって修平がフキコの家に来るのが日課になっており、その日もいつものように修平がフキコの家でテレビを観ていました。

タレントの噂話をしている修平の横でテレビを観ていたフキコは驚きます。

あるお見合い番組にフキコの見知っている顔があったからです。

三つ年下の妹・リカコです。

リカコは四、五人の男性参加者から求愛され、喜びつつ困惑した表情を浮かべながら、その中の一人を選びます。

甘ったるい声でカメラに向かって喋るリカコの姿に、フキコは釘付けになります。

カップル成立したリカコはその男性と手を取りながら、画面から去っていきますが、フキコは耳が赤くなり鼓動が早くなります。

なにか醜態で不気味なものを見たような気分になります。

【承】夜かかる虹 のあらすじ②

来訪者

フキコとリカコは容姿こそそっくりですが、性格は真反対で、几帳面な性格のフキコに対し、リカコはだらしなく、そのくせ男からはすこぶるモテるのは決まってリカコでした。

お見合い番組に出ていたのが自分なら、同じ見た目でも男性は選ばなかったろうとフキコは思います。

テレビが流れたすぐあとにリカコが男を連れて、フキコの家に遊びに来ます。

家に入れるのをためらうフキコでしたが、リカコのペースに押され、二人を中に招きます。

夜中まで散々一人で喋り続けたリカコは連れの男を置いてふらっと外出し、結局戻ってきませんでした。

リカコが連れてきた男に話を聞くと一方的にリカコから別れを切り出され、同棲していた部屋を処分され帰る家がないとのこと。

しぶしぶ男を泊めることにしたフキコでしたが、寝ているところを襲われかけます。

すべては身勝手なリカコのせいだと腹を立てますが、後日、修平が遊びに来ている時に現れたリカコは、フキコに怒る隙を与えないまま半ば強引に家にあがり、すぐに修平と打ち解けてしまいます。

修平の手前、帰れとも言い出せず、盛り上がる2人を苦虫を潰す気持ちで眺めるしかありません。

【転】夜かかる虹 のあらすじ③

嫉妬

リカコは幼い頃からフキコの後をついてまわり、それがフキコは鬱陶しくて仕方ありませんでした。

お気に入りのおもちゃや洋服はリカコの物になり、それまでフキコが一人独占していた両親の関心はリカコに注がれるようになりました。

面白くないフキコは、両親がいないところで遊ぶふりをしてリカコを苛めました。

わけがわからないリカコはその時は泣いてもすぐにまたフキコの後ろを追いかけました。

成長するにつれて姉妹の喧嘩はなくなりましたが、周りから愛されるリカコを妬ましく思う気持ちは今日まで消えずにフキコの心にくすぶっています。

フキコと修平が親密になったきっかけを聞き出したリカコは、同様の手を使って修平との距離を縮めていきます。

修平の紹介で同じ会社で働き出したリカコは、フキコの前で二人しかわからない社内の話を繰り広げ、修平も楽しそうに応戦します。

話題は変わり、リカコのルームシェアについて2人は話し出します。

リカコ曰く、ルームメイトは高校の時に遊び場で出会って以来の知り合いだという女の子で、幼少時に居場所がないとお互い感じていたことが意気投合したきっかけとのこと。

彼女のアバウトで、自分のことに無頓着な性格を好ましく思っていると言い、他人は平気で傷つけるくせに、自分が傷つけられたら大騒ぎするタイプの人間を大嫌いだと言い放ちます。

どんどん仲良くなるリカコと修平を目の当たりにし、フキコはどんどん疑心暗鬼に陥っていきます。

【結】夜かかる虹 のあらすじ④

姉妹喧嘩

毎週金曜日にフキコの家に来ていた修平は、リカコが現れてから仕事が忙しいと言って滅多に寄ることはなくなりました。

邪魔にしても勝手に来ていたリカコも来なくなり、フキコはいよいよ二人の仲を疑います。

真相を確かめるべく、新しくルームシェア始めたリカコの家を訪れます。

リカコは留守で、ルームメイトに出迎えられたフキコは、その家に修平の痕跡を探しますが、散らかり放題の部屋で見つけることはできません。

しばらくするとリカコが帰宅します。

腕を見ると修平がいつも身に着けていた腕時計をリカコがしていました。

ついに爆発したフキコはリカコを罵倒を浴びせますが、リカコは冷静でした。

『私にとられなきゃ大事だって思えないくせに。

私の手に入ったものがよく思えるだけでしょ?それ、まだなおんないの?』と激高するフキコに言い、腕時計は忘れ物だから本人に返しておいてと渡します。

怒りがおさまらないフキコはなおもリカコに食って掛かりますが、ルームメイトに止められ、その場にしゃがみこんでしまいます。

後日、サンプリング配布のアルバイトを終えたフキコは、帰宅途中雷雨に見舞われます。

傘がなく、駅で立ち往生するフキコにそっと傘を差しだしたのはリカコでした。

一つの傘で肩を寄せ合って歩く道すがら、リカコは幼少の頃の思い出話をフキコにします。

そして、傘をフキコに預け、雨の道を走って去っていくのでした。

夜かかる虹 を読んだ読書感想

姉妹の独特な関係性を描いた本作は、姉妹でありながら女同士の妬みや嫉みを苦しいまでに抉り出し、読んでいてざわざわします。

序盤は男たらしでだらしないリカコに嫌悪感を持ちますが、話しが進むにつれてフキコの歪んだ見方に違和感をおぼえ、リカコが修平に話している体でフキコに聞かせる、幼少の頃に抱いていた姉への恨みを吐露する場面では、姉妹どっちもどっちだなあと感じました。

友達同士なら関係が破綻する喧嘩でも、姉妹だといつの間にか元通りになっているのがリアルです。

姉が分が悪くても謝ることはなく、妹が働きかけをするのもよくある光景だなと、我が姉を思い浮かべながら読みました。

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