【ネタバレ有り】ステップファザー・ステップ 屋根から落ちてきたお父さん のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:宮部みゆき 2005年10月に講談社から出版
ステップファザー・ステップ 屋根から落ちてきたお父さんの主要登場人物
俺(おれ)
物語の語り手。堅気の会社「大野重工」を退職した後に泥棒となる。
宗野直(そうのただし)
双子の中学生の片割れ。右に笑窪がある。
宗野哲(そうのさとし)
双子の中学生の片割れ。左に笑窪がある。
柳瀬(やなせ)
裏社会の情報屋。
画聖(がせい)
模造美術品の製作者。
ステップファザー・ステップ 屋根から落ちてきたお父さん の簡単なあらすじ
泥棒を生業にして生きてきた「俺」でしたが、ある時に屋根の上で雷に打たれて一軒の家の中に落下してしまいます。そこで出会ったのは自由奔放な両親と離れて暮らす、双子の少年・直と哲です。いやいやながらも彼らの義理の父親となってしまった俺でしたが、次から次へと起こる事件に巻き込まれていくうちに微妙な心変わりをしていくのでした。
ステップファザー・ステップ 屋根から落ちてきたお父さん の起承転結
【起】ステップファザー・ステップ 屋根から落ちてきたお父さん のあらすじ①
プロの窃盗屋として生計を立てていた俺は、埼玉県内にある新興住宅地・今出新町の一軒家に狙いを定めていました。
家主は遠縁の伯父から2億円近い遺産を受け継いだ女性で、独り暮らしの上に恋人も親しい友人もいません。
目的の家は厳重な警報装置に囲まれていますが、丘の上にあるもう1軒の家の屋根からロープを渡して侵入することが出来ます。
夜中の2時に上手の家の屋根に登った俺を襲ったのは、激しい稲光です。
意識を失っていた俺が恐る恐る目を開けると、同じ顔をしたふたりの少年が心配そうに覗き込んでいました。
宗野直と哲の父は会社で秘書をしていた女性と、母はこの家を建てた工務店の社長と駆け落ちをして行方不明です。
警察に通報しない条件として双子が要求したのは父親の代わりをすることで、指紋を採られているために逆らう訳にはいきません。
ふとした気紛れで彼らが宿題に使っていた和英辞典で「義父」の項をひいてみると、「a stepfather」と出てきます。
【承】ステップファザー・ステップ 屋根から落ちてきたお父さん のあらすじ②
直が盲腸で緊急入院した時には病院へ、哲の授業参観の日には学校へ、ふたりが置き引きに遭った時は旅行先へ。
あの真夜中の落雷の日以来、俺は何くれとなく双子たちの世話を焼いていました。
いつものように夕食をご馳走するために俺が今出新町の家を訪れると、玄関から出てきたのは40代半ばの男性です。
東京から帰ってきたという直と哲の父を見て、俺は一目散に逃げ出してしまいます。
ようやく疑似親父の役割から解放されたというのに、何故か面白くありません。
未練がましい俺は声だけでも聞こうと、双子の家に電話をかけました。
留守番電話サービスに繋がったために、彼らから教えてもらっていた遠隔操作用の暗証番号を入力します。
録音されていたメッセージは2件、ひとつは直を預かっているという野太い男の声、もうひとつは哲を預かっているという女の声。
どうやら先程会った父親を名乗る男は偽物で、ふたりはそれぞれが別々の犯人に誘拐されてしまったようです。
【転】ステップファザー・ステップ 屋根から落ちてきたお父さん のあらすじ③
俺は日頃からお世話になっている情報屋、柳瀬の事務所を訪れて助けを求めました。
哲を連れ去った女の要求は使い古された1万円札で5000万円、受渡は街外れの造成地にある保安林。
直をさらった男の身代金も同額でしたが、場所は別で保安林から北に500メートルほど行ったオートストア。
タイムリミットは2時間半後で、合わせて1億円もの紙幣を用意しなければなりません。
柳瀬の協力者のひとりに、「画聖」と呼ばれている放浪の偽造絵描きがいます。
電話で事情を説明すると二つ返事で承諾してくれて、1時間ほどたった後に現れた画聖が持ってきたのは万札がギッシリと詰まったサムソナイトです。
もちろん本物のお札ではなく、プラスチック製のブロックの表面に絵が書いてあるだけでした。
スーツケースの中からは作り物の生首が飛び出してくる仕掛けがあり、犯人が腰を抜かしている隙に双子たちの監禁場所を吐かせる寸法です。
直と哲を無事に救出した後、俺と柳瀬は双方の犯人グループにきついお灸を据えます。
【結】ステップファザー・ステップ 屋根から落ちてきたお父さん のあらすじ④
芸術家でもあり犯罪者でもある画聖は誘拐騒動の後に再び放浪の旅に出ることになり、俺と柳瀬とのビジネスパートナーとしての関係性はそれからも変わることはありません。
ひと仕事終えて気が大きくなった俺は、双子たちと一緒に都心のホテルに1泊して豪遊しました。
翌日の午後に彼らを今出新町の自宅まで送り届けると、留守番電話には1件のメッセージが残されています。
哲が再生ボタンを押すと、聞こえてきたのは今度こそ本物の双子の父親の声です。
いつかきっと1度は帰ると機械の中から言っていますが、まだ暫くは時間がかかることでしょう。
母親からは相変わらず連絡はありませんが、同じようにして戻ってくるかもしれません。
その夜は梅雨明けで星が綺麗だったために、俺はふたりと庭でバーベキューを楽しみつつ夜空を見上げます。
天の川の流れのようにいずれは行き着くところに行き着くはずですが、それまで俺は直と哲と共に3人で暮らすことを決意するのでした。
ステップファザー・ステップ 屋根から落ちてきたお父さん を読んだ読書感想
ある日突然に始まっていく泥棒と双子の男の子たちとの、疑似家族のような関係性がユーモアたっぷりとしていました。
一見すると無邪気な少年にしか思えない宗野直・哲が、海千山千の犯罪者をあっさりと手玉に取ってしまう展開が痛快です。
血の繋がった父親と母親に見捨てられながらも、学校に通いながら家事をこなして逞しく生きていく姿に励まされます。
赤の他人に対して何の躊躇もなく、「お父さん」と呼びかけるシーンも印象深かったです。
真っ当な人生を送ってこなかった泥棒に芽生え始めていく、無償の愛には心温まるものがありました。
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