「puzzle」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|恩田陸

「puzzle」

【ネタバレ有り】puzzle のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:恩田陸 2000年10月に祥伝社から出版

puzzleの主要登場人物

関根春(せきねしゅん)
主人公。検事。

黒田志土(くろだしど)
春と同期の検事。

和人(かずひと)
志土の高校生の頃の同級生。無人島で餓死。

五十嵐重護(いがらししげもり)
無人島で全身に打撲を負い亡くなる。

番場武一(ばんばたけかず)
無人島で感電死状態で発見。

puzzle の簡単なあらすじ

長崎県西彼杵郡の無人島・鼎島で、3人の遺体が発見されます。亡くなった3人は死因がそれぞれバラバラになり、直接的な繋がりも見つかりません。地元の警察がお手上げ状態の中で、島に乗り込んできたのは関根春と黒田志土というふたりの検事です。被害者の謎めいた遺留品によって、思わぬ事件の真相が明かされていくのでした。

puzzle の起承転結

【起】puzzle のあらすじ①

無人島に乗り込んだふたりの検事

8月30日の午後、長崎県西彼杵郡沖の無人島・鼎島で3人の遺体が発見されました。

年齢は30代から40代で死後2〜3日程度経過していますが、9月になっても依然として3人が自殺か他殺かは判明しません。

長崎県警の捜査が進展しない中で真相究明に乗り出したのは、関根春と黒田志土のふたりの検事です。

事件発生以前からこの島は1部の廃墟マニアからは有名なスポットで、民間人の立ち入りは禁止されていましたが不法侵入が後を絶ちません。

春は島内のただならぬ気配を察知していましたが、志土はまるで平気な様子を見せています。

春は志土から意外な事実を聞きました。

亡くなった3人のうちのひとりは志土の同級生であること、ふたりは超常現象研究会に所属していたこと、亡くなった時に高校時代に志土が書いた「さまよえるオランダ人」のパンフレットを持っていたこと。

ふたりはかつては公民館であり今ではただの煉瓦の塊となった建物の前に腰を下ろし、志土がコートのポケットに入れていた菓子パンで小休止を取ります。

【承】puzzle のあらすじ②

3人が持つ3枚のコピーと隠されていた4枚目

志土の同級生はA、後の2人はBとC。

志土が便宜上3人の死者に付けた仮の名前です。

Aの遺体は廃校となった中学校の体育館で発見されていて、司法解剖の結果から死因は餓死であったことが判明します。

Bの死因は全身打撲の内臓破裂になり、倒れていた場所は高層アパートの屋上です。

Cは島の中の閉館された映画館の座席に腰掛けたままの状態で、感電死を遂げていました。

Aが持っていたような奇妙なコピー用紙が、BとCの衣服からもそれぞれ見つかっています。

Bは25000分の1の地形図、Cはアメリカの蒸しパンであるボストンブラウンブレッドのレシピ。

初めて来たはずの島の中を勝手知ったる様子で歩いていく志土と一緒にいるうちに、次第に春の心の奥底には不信感が湧いていきます。

更に気になっているのは、Aが「さまよえるオランダ人」の他に持っていたもう1枚のコピーの存在です。

しつこく追及されて渋々志土が差し出したコピーを見て、春の疑惑は確信へと変わりました。

【転】puzzle のあらすじ③

死んだ3人とただひとりの生き残り

4枚目のコピーは、学生時代に志土が大好きだったスタンリー・キューブリック監督の新作映画製作に纏わる新聞記事でした。

スタンリー・キューブリックのイニシャルは「S・K」、すなわち黒田志土。

さまよえるオランダ人を漢字表記に変換すると「さまよえる和蘭陀人」、和人。

25000分の1の地形図は、五十嵐重護。

ボストンブラウンブレッドは「BB」、番場武一。

亡くなった3人は鼎島に来るまではそれぞれが別の場所でごく普通の社会生活を営んでいて、直接に会ったことはなくインターネットの自殺サイトとメールでのやり取りしかありません。

免許証や身分証明書を始めとする身元の分かる物は一切島に持ち込まずに、自分の名前をさり気なく織り込んだ記事のコピーだけを持ってくるという約束をして集まります。

和人は絶食中に食糧が無くなって、五十嵐に真空状態となった中庭から屋上に吸い上げられて、番場は雷に打たれて。

島が嵐に包まれた夜、生きることに絶望していた3人に死が訪れることになりました。

【結】puzzle のあらすじ④

罪には問われることのない法律の専門家の罪

嵐が去った次の日の朝、3人の遺体が打ち捨てられたままの鼎島はすっかり明るく晴れ上がっていました。

ただひとり生還してありきたりな日常生活に戻った志土は、もう一度あの島を誰かと一緒に訪れて自身が経験した不可思議な体験を話したくて堪りません。

志土の頭の中にふと思い浮かんできたのは、自らと同期で優れた洞察力と知性を持つ関根春の顔です。

志土の告白を聞き終えた春は、海の向こうから迎えの白い船の舳先がゆっくりと近づいてくるのに気が付きます。

志土がたったいま打ち明けた話は全ては状況証拠でしかなく、彼を自殺幇助の罪で起訴することが出来ないのは法律のスペシャリストである春が誰よりもよく知っていました。

志土は船に向かって大きく手を振りながら何かを呼びかけますが、コンクリートの堤防に打ち寄せる波の音が大きくて聞こえません。

春は人類が滅亡した後の都市に、志土とたったふたりっきりで残されたかのような気分になってしまうのでした。

puzzle を読んだ読書感想

恩田作品ではお馴染みとなる、関根三兄弟のうちの長男・春の活躍が痛快でした。

ストーリーの舞台となった廃墟が立ち並んでコンクリートで固められている無人島の殺伐とした風景には、先ごろ世界遺産に登録されて世界中から観光客が押し寄せていると評判のあの島を思い浮かべてしまいます。

さまよえるオランダ人からボストンブラウンブレッドにスタンリー・キューブリックまで。

一見すると無関係に思えていたコピー用紙が、被害者の身元を明らかにしていく展開がスリリングです。

単純な勧善懲悪に終わることなく、罪を犯しながらも裁かれることのなく島を立ち去る黒田志土の姿が何とも後味が悪かったです。

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