【ネタバレ有り】理由 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:宮部みゆき 1998年5月に朝日新聞社から出版
理由の主要登場人物
石田直澄(いしだなおずみ)
東京の高層マンションの部屋を購入しようとしていた中年の男。ある事情から警察から逃亡生活をする。
八代祐司(やしろゆうじ)
東京の高層マンションから転落死した若い男だが、事件と大きな関わりがある。
宝井綾子(たからいあやこ)
若いシングルマザー。赤ん坊は宝井一家が手伝って面倒を見ている。事件の秘密を隠している。
吉田達夫(よしだたつお)
高層マンションで転落死が起きて駆けつけた刑事。マンション関係者に事件の聞き込みをする。
理由 の簡単なあらすじ
東京の高級高層マンションで転落死と殺人事件が起こり、マンションの事件関係者が大勢登場します。この話には明確な主人公は特におらず、事件関係者へインタビューをするような形で話が進みます。事件関係者たちの話からは、バブル崩壊後の東京と高層マンションから見える奇妙な家庭環境が見えてきます。話によっては、日本の戦中戦後の家庭の話まで掘り下げています。
理由 の起承転結
【起】理由 のあらすじ①
ある日、交番の巡査長のところに女子中学生が尋ねてきます。
彼女は警察から逃亡している石田直澄という男が、自分の家が経営している貸し宿にいることを泣きながら話します。
巡査長はそのことに半信半疑ながらも貸し宿に向かいます。
そこから時間が遡り、ある大雨の夜に東京の高級高層マンションの部屋から若い男が転落死します。
刑事の吉田達夫はマンションの管理人に聞き込みを行いますが、転落死が起った部屋ではさらに中年の男女と老婆の死体が見つかります。
合計で4人も死亡した殺人事件の可能性が高まり、部屋周辺の住民にも聞き込みをしに行きます。
しかし、周辺の部屋の住民たちの人間関係は希薄であり、事件の大きな手がかりは見つかりません。
そして死亡した4人は家族かと思われましたが、マンションの住民台帳には載っていない人物たちであることが分かります。
事件が起こった時間にはエレベーターの防犯カメラに男女2人が写っていましたが、関係があるのか不明です。
初期段階から捜査が難航しますが、住民台帳に載っている本来の住人たちを探すことになります。
【承】理由 のあらすじ②
宝井綾子という若いシングルマザーが風邪をこじらせて入院していました。
綾子が入院している間は、綾子の弟の康隆や両親が赤ん坊の面倒を見ていました。
康隆は大雨の夜に出かけて、その結果入院にすることになった姉の行動を不審に思いますが、綾子は詳しい事情を話しません。
綾子の子供の父親は八代裕二という若い男なのですが、彼は綾子の家に来ると、自分は父親になるつもりはないと無責任なことを宝井一家に言い残して出て行きました。
宝井家は八代裕二に大きな怒りを抱きますが、家族で綾子の子供の面倒を見ることを決意します。
一方、高層マンションでの転落死と殺人事件の捜査では、住民台帳に載っていて実際は部屋に住んでいたはずの家族を探すことになります。
住民台帳には小糸という家族が住んでいたはずなので、警察は小糸一家を探します。
小糸一家の3人は借金の返済が苦しくなり、高層マンションの部屋を競売にかけなくてはならなくなっていました。
ところが、小糸一家の父親である小糸信治は部屋を手放したくないと考えており、占有屋を利用して部屋を取られない方法を考えます。
【転】理由 のあらすじ③
小糸信治は占有屋を利用して部屋を取られないようにしますが、そのために砂川家という架空の家族が用意されます。
小糸家の部屋は、石田直澄という男が競売で手に入れたのですが、占有屋の妨害を受けていました。
石田は困りますが、ある日砂川家の長男が石田へ部屋の譲渡の話を持ちかけてきます。
砂川家の長男というのは、実は八代裕二でした。
彼は石田が自分にお金を払えば、部屋の譲渡をしてやると言います。
しかし八代裕二が取った行動は、1人だけ抜け駆けしてしまうことであり、不審に思った石田は砂川家の他の人間にそのことを話します。
結果的には、架空の砂川家を演じている人間たちに八代の抜け駆けがバレてしまいます。
八代裕二はこれに逆上し、架空の砂川家の3人を殺害してしまいます。
殺害後、八代は石田直澄をマンションの部屋に呼び出し、殺人の罪を石田になすりつけようと脅します。
しかし、マンションの部屋には石田に加えて宝井綾子も現れます。
宝井綾子は自分を捨てながらも、悲惨な家庭で育った八代裕二を心配していたのです。
【結】理由 のあらすじ④
宝井綾子は大雨の中、八代裕二の赤ん坊を連れて高層マンションの部屋に現れました。
綾子は殺人を犯した彼に自首をするようにすすめます。
しかし八代裕二は自首をすすめた綾子に逆に怒り出します。
2人はマンションのベランダで、取っ組み合いになります。
八代は綾子の首をしめて殺害しようとしますが、綾子は必死に抵抗します。
すると、何かの手違いで八代はベランダから転落してしまいます。
部屋には石田直澄と綾子と赤ん坊の3人だけが残りました。
石田は赤ん坊を連れている綾子を不憫に感じ、綾子を部屋から逃げさせます。
結果的に石田はこの事件の容疑者として指名手配されます。
石田は綾子たちを守るために逃亡生活をしましたが、力尽きて警察に捕まります。
ですが警察の捜査が進み、石田は無実であり八代裕二が犯人であることが分かります。
無実が証明された石田は自分の家族の元へ戻ることができました。
石田の無実が証明された背景には、綾子が警察に事情を説明したことがありました。
高層マンションでの凄惨な事件は一応の解決となりました。
理由 を読んだ読書感想
宮部みゆきさんが直木賞を受賞した記念の作品です。
直木賞を受賞する前から、宮部みゆきさんは既に人気作家でしたが、複数回のノミネートの末に今作でようやく受賞しました。
話としては殺人事件を扱ったサスペンスであり、一見珍しくない題材に思えます。
ところが、今作では主人公というのがいません。
事件に関係する人物たちにインタビューをする形式で話が進みます。
こうしたやり方には、賛否両論があるようですが、個人的には作者のチャレンジ精神を評価したいです。
初めて宮部みゆきさんの作品を読むのであれば、他から入ったほうがいいかもしれませんが、ある程度多くの小説を読んでいる人ならば、一風変わった今作を読んで欲しいです。
コメント