夏川草介「神様のカルテ2」のあらすじ&ネタバレ

神様のカルテ2

【ネタバレ有り】神様のカルテ2のあらすじを起承転結で解説!

著者:夏川草介 2013年1月に株式会社 小学館から出版

神様のカルテ2の簡単なあらすじ

内科医・栗原一止は、夏目漱石を愛する古風な男で、松本の基幹病院に勤務している。深刻な医師不足に苦しむ病院に新年度から新しい医師が加わった。栗原の大学の同級生で、東京帰り血液内科医・進藤達也だ。一方、栗原の住む御嶽荘にも新しい住人として大学生が加わり、再びにぎやかになっていた。

旧友の帰還に喜んだのも束の間、栗原は進藤の勤務態度の悪さに悩まされる。職員の雰囲気を悪くする進藤に、栗原は苦言を呈する。栗原と進藤は大学時代同じ将棋部に所属し、同じ女性に恋した仲だった。真面目だった進藤の変貌ぶりに悩む栗原は、進藤が実は、妻との不仲で帰郷し、幼い娘と一緒に過ごす時間を作るために定時で帰宅しようとしていただけだと知る。

栗原の直属の上司は内科部長と副部長内藤だ。居酒屋で偶然内藤に会い、また、散歩でたまたま内藤夫妻と出会った栗原は、妻榛名共々内藤夫妻との交流を深めて行く。しかし、内藤は悪性の腫瘍に侵されていた。

和解した進藤や外科医の砂山、内藤夫妻を慕う榛名と共謀して、栗原は内藤夫妻の無謀な願いを叶える。数日後この世を去った内藤は、栗原夫婦を我が子のように気にかけ、内藤の母から妻へと伝わった着物を榛名へと託していた。御嶽山登山で夫婦の絆を再確認する栗原と榛名。進藤もまた妻との関係に改善の兆しが見えていると話しながら、栗原と榛名は「一生一緒に生きていこう」と誓うのだった。

神様のカルテ2の起承転結

【起】神様のカルテ2のあらすじ①

心機一転

3月、松本の地域医療を一手に引き受ける本庄病院に勤める内科医栗原一止と、妻で山岳写真家の榛名は雪山歩きを楽しみ御嶽山の威容を目にした。夏には御嶽山に登ろうと約束した二人だが、忙殺される日々が始まる。

新年度、本庄病院に東京帰りの血液内科医進藤達也が加わる。進藤は、変人栗原の数少ない学友の一人。同学年で同僚の外科医砂山と栗原は、信頼できる医師の帰還を喜ぶ。

栗原夫妻の住むボロ宿御嶽荘にも新たな住人が加わっていた。二浪して農学部に入学したばかりの飲兵衛「屋久杉くん」だ。御嶽荘には再びにぎやかな日々が戻っていた。

【承】神様のカルテ2のあらすじ②

垂れ込める暗雲

前評判に反して、進藤の評判は最悪だった。夜間と休日にはほぼ連絡が取れず、病棟ナースの間に不満が溜まる。栗原は上司である内科部長に頼まれ進藤の説得を試みるが失敗。ナースと険悪な状態にある進藤の目を覚ますため、栗原は冷めたコーヒーを進藤の頭からかけるのだった。

栗原は大学時代を回想する。「学部の良心」と呼ばれる進藤と変人の栗原の共通点は、将棋部の最後の部員であること。二人だけの将棋部に、ある時から下級生の女子如月が顔を出すようになる。栗原は如月に恋をするが、告げられぬまま如月は進藤と恋仲になっていた。誰よりも信頼できる進藤だからこそ、栗原は二人の門出を祝福する。

榛名が出張中のある日、栗原は居酒屋で内科副部長の内藤と偶然同席する。内藤から、自身と内科部長の志を聞かされ、栗原は感じ入る。数日後、花見がてら散歩をしていた栗原夫妻は、またしても偶然に内藤夫妻と会うのだった。

【転】神様のカルテ2のあらすじ③

夫婦の関係

栗原は、進藤の勤務態度が悪い理由を知る。娘と過ごす時間を作るためだ。進藤の妻は医師の仕事に没頭するあまり家庭を忘れていた。孤独な娘のために、進藤は父子で松本の実家に戻ったのだった。事情を知り栗原はこれまでの患者至上主義から一変、進藤が娘と過ごす時間を設けられるよう、手伝うようになる。

医師全員が過酷な労働環境に忙殺される中、内藤が倒れた。その病状は重く、入院治療が必要となる。内藤は栗原に後を託し、妻千代と久しぶりに夫婦の時間を持ちながら、治療に専念することになった。

そんな折、栗原が担当する老婦人が亡くなった。昏睡状態の妻に毎日付き添っていた夫も、数時間後後を追うように亡くなる。一方、栗原の受け持つ糖尿病患者の男性は進藤が担当する再生不良性貧血の女性と一緒に食事をするようになっていた。男性のおかげで、女性の状態は改善していく。

【結】神様のカルテ2のあらすじ④

榛名の提案で栗原と進藤、砂山は、病状の悪化した内藤の願いを叶えようとする。それは妻と共に山頂からの星空を見たいという願い。栗原達は代わりに全館消灯した病院の屋上の星空を夫妻に送った。内藤はその数日後、息を引き取る。

初七日に内藤宅を訪れた栗原夫妻に内藤の妻は一着の着物を渡す。内藤の母から妻に受け継がれ、内藤夫妻が榛名に託そうと決めていた品だった。子のない内藤夫妻は、栗原夫妻を我が子のように思ってくれていた。

夏、栗原夫妻は約束通り御嶽山に登っていた。不眠不休で働く夫の心遣いを喜ぶ榛名に、栗原は進藤夫妻に夫婦関係改善の兆しが見え、職場も落ち着いてきたことを告げる。それでも過酷な職場で働く夫を心配する榛名。そんな榛名を愛しく思う栗原は「一生一緒に生きていこう」と語りかけ、誓うのだった。

神様のカルテ2を読んだ読書感想

この巻は、一巻からほんの数ヶ月後、栗原医師と妻榛名が雪山にいるところから始まります。そして、さらに数ヵ月後、二人が約束通り夏山に登ったところで終わります。一巻が医療現場におけるアイデンティティを主軸に動いていたのに対し、今巻は医療と夫婦の愛が軸になっていたと感じました。

栗原夫妻、進藤夫妻、内藤夫妻、患者の老夫妻、砂山医師カップル、患者カップル、この巻にはたくさんの男女とそれぞれの愛の形が登場します。人間には窺い知れない運命の神様のカルテ(記録)には、きっと様々な愛の形が記載されているのでしょう。そして、患者から見て神様のごとき医師の心の中のカルテにも、様々な傷と愛が記録されているのだろうと思いました。

本屋大賞に二冊どちらもノミネートされたこのシリーズは、映画化もされています。人間の根幹に関わる「神様のカルテ1」と愛情にまつわる「神様のカルテ2」。どちらも栗原医師の真面目な人柄を通して改めて人生の幸せについて考えさせられるお話でした。

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