【ネタバレ有り】人間失格 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:太宰治 1948年7月に筑摩書房から出版
人間失格の主要登場人物
大葉葉蔵(おおばようぞう)
主人公。幼いときから人間の営みが分からず、「道化」で人を欺いて生きて来た。
竹一(たけいち)
葉蔵の同級生。葉蔵の道化を見破る。
堀木(ほりき)
葉蔵の悪友。葉蔵が酒や煙草や女にのめりこむきっかけを作る。
ヨシ子(よしこ)
煙草屋の娘。葉蔵の内縁の妻となる。
人間失格 の見どころ!
・葉蔵が破滅に向かって堕ちていく過程
・太宰治自身の人生が反映されたストーリー展開
・葉蔵をとりまく妖艶な女たち
人間失格 の簡単なあらすじ
この作品は、第三者目線で語られる「はしがき」「あとがき」と、第1の手記、第2の手記、第3の手記からなる。
主人公の葉蔵は、人間の営みが理解できない。
そのため、生活の中で人と関わることが恐怖でしかなかった。
そこで思いついたのが、本当の自分の気持ちを押し殺して「道化」を演じることであった。
道化を演じているうちは、他者と問題なく接することができ、葉蔵自身も周囲から面白い子どもとして受け入れられた。
だがしかし、中学に上がった頃から、周囲の人間は自分の道化に気付いているのではないかという疑惑に陥り、戦々恐々と日々を過ごすようになる。
その恐怖から抜け出すために、葉蔵は酒と煙草と女と薬に溺れ始める。
精神状態は混乱を極め、ついには心中未遂や自殺未遂を幾度となく図る。
一度は幸せな結婚をし、幸福を手に入れた葉蔵であったが、その女が出入りしていた商人に犯されたことをきっかけに再び葉蔵は不安定になり、最後は迎えに来た引受人によって精神病院に収監される。
そこで葉蔵は、「人間、失格」だと感じさせられるのであった。
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人間失格 の起承転結
【起】人間失格 のあらすじ①
「恥の多い生活を送ってきました」という、有名な一文から始まる第1の手記は、葉蔵の幼少期が描かれている。
幼いころから人間の営みや幸福を理解できなかった葉蔵は、自分ひとりだけが変わっているような不安と恐怖に襲われる。
食べることの意味すら、葉蔵には理解できなかった。
しかし、人に異端児だと思われないように、理解できないながらも必死に人間に合わせた生活を送っていた。
そんな葉蔵も、人間の営みや感情が理解できないだけであって、人間のことは嫌いではなかった。
むしろ愛されたいと思っていた。
人間をどうしても思いきることができれず、どうすれば自分も人間らしい人生を送れるようになるかと考えた葉蔵は、人間への最後の求愛として、「道化」を演じることで人間とのつながりを求める。
学校では、病弱ではあったが成績が良く、持ち前の「道化」でなんとか生活できていた葉蔵。
彼にとっては、周囲の人間から「尊敬」されることすら恐怖だったので、道化で見下されるべき自分を演じた。
愚直な自分を演じている時だけは、周囲の人間と波長を合わせることができた。
相変わらず人間の営みについては理解ができなかったが、それを他者から見破られないことだけを考えて生活を送っていた。
そのころ葉蔵は、女中や下男に哀しいことを教えられ、犯されていた。
しかし葉蔵それを周囲の人間に話すことができなかった。
女中や下男に対しても抵抗することができず、ただ力なく笑ってされるがままになっていた。
道化としてひたすら面白おかしい人間を演じている葉蔵にとっては、女中や下男の行いに対して抵抗したり、告発することすら恐怖の対象となっていたのだ。
また、そんな嘘偽りだらけの葉蔵が言うことなんて、誰も信用してくれないと思っていた。
そして、その誰にも訴えずにいつも笑っている葉蔵の性格のせいで、女中や下男に付け込まれるのではないかと葉蔵は考えていた。
【承】人間失格 のあらすじ②
葉蔵は実家を離れ、中学に入学した。
そこでも持ち前の「道化」を演じていた。
いつも突拍子もない行動をするので同級生からは人気があった。
笑われるだけで消費される一方の人気ではあったが、葉蔵は自分が道化を演じていることを見破られなければそれでよかった。
しかし、ある時の運動の授業中、葉蔵は道化をついに見破られてしまったのだ。
見破ったのは、勉強もできず、常に運動の授業も見学をしている竹一だった。
授業中、勉強もできず、運動の授業もいつも見学している竹一に、道化を見破られたのだ。
なんとかその失敗をごまかすことができた葉蔵は、竹一にこう告げられる。
「お前は、きっと、女に惚れられるよ」、と。
葉蔵の後年を予言するかのような一言だった。
それから葉蔵は、東京の高等学校へ進む。
高等学校でも葉蔵は相変わらず道化を演じていた。
長年の演技のおかげで、葉蔵の道化ぶりは板についていた。
相変わらず人間の営みは理解できず、恐怖心も持っていたが、それをうまくやりすごして自堕落な生活を送っていた。
そして、学校にも行かずに遊びまわっているうちに、堀木という男に出会う。
堀木は、葉蔵に酒と煙草と女と質屋と左翼思想を教え、いつしか二人は悪友となった。
葉蔵にとって、酒と煙草と女は、人間のことが理解できない自分の孤独をひとときの間救ってくれるものだった。
すぐに金がなくなった葉蔵は質屋通いを始め、生活はどんどん困窮していく。
もともと計画性もなにも持たない葉蔵は、殺伐としたその日暮らしの生活を続けていた。
そんな中で、葉蔵はカフェの女給・ツネ子と出会う。
そのころは、葉蔵の生活環境は急激に変化しており、その変化に葉蔵の精神は悲鳴を上げていた。
次第に葉蔵は生きていくのがつらくなり、鬱々とした日々を過ごすようになる。
そんな時、ツネ子は葉蔵に心中を持ちかけた。
快諾した葉蔵は、2人で鎌倉の海へ飛び込んだ。
ツネ子は死んだが、葉蔵は生き残ってしまった。
これを受けて、葉蔵は自殺幇助罪に問われる。
結果として、起訴猶予となり釈放された葉蔵は、身元引受人のもとで生活を始めることになる。
しかし、葉蔵の病んだ精神状態は回復することはなかった。
【転】人間失格 のあらすじ③
身元引受人の家での生活がはじまったが、窮屈さのあまり、葉蔵はすぐに逃げ出してしまう。
行き場をなくし、堀木の家に立ち寄った葉蔵は、そこでシヅ子と出会う。
夫とは死別し、娘のシゲ子と二人暮らしをしながら働くシヅ子と、葉蔵は気が合った。
そしてすぐに二人は同棲することとなった。
シゲ子は葉蔵になついていたが、次第にシヅ子の無自覚な発言によって葉蔵は傷つき、シヅ子のことを信頼できなくなってしまう。
そんなストレスが原因か、葉蔵の飲酒の量は増え、シヅ子の物をお金に換えて、飲み歩くことが増えた。
シヅ子から何か言われることを恐れた葉蔵は、次第に家に寄り付かなくなってしまう。
ある日、久しぶりに家に戻ってみると、シヅ子とシゲ子が嬉しそうに会話をしている声が聞こえた。
その声を聞いた葉蔵は、「幸福なんだ、この人たちは。
自分という馬鹿者が、この二人のあいだにはいって、いまに二人を滅茶苦茶にするのだ」と感じ、それ以降家には帰らなかった。
その後、葉蔵は京橋のスタンド・バアのマダムに世話になることになった。
そんな生活を送っていた時、葉蔵にお酒を辞めろと声をかけてくる女が居た。
名前はヨシ子といって、バアの向かいの煙草屋の娘だった。
かわいらしいヨシ子に魅力を感じた葉蔵は、お酒を辞めたら、お嫁さんになってくれと頼み込むようになる。
しかし、ある日どうしても我慢することができずに、自分から酒を飲んでしまう。
しかし、その姿を見ても、ヨシ子は葉蔵が酒を飲んだことを信じなかった。
そんなヨシ子の純粋な心に、葉蔵はどんどん惹かれていった。
そうしてツネ子を内縁の妻にすることになり、同棲がはじまった。
この生活は、葉蔵が生まれて初めて手に入れた安定と幸福だった。
葉蔵は次第に、人間らしさを取り戻していき、この生活が続けば、自分は道化を手放すことができるかもしれないと予期するまでに至る。
だが、ヨシ子は家に出入りする商人に襲われてしまう。
ヨシ子は、人を信頼することにおいては天才的な能力を持っていたはずなのだが、この一件以降、葉蔵にさえびくびくするようになってしまった。
葉蔵は、このヨシ子の変貌ぶりに対してショックを受け、自殺を考えるようになる。
そしてある日、ヨシ子が隠していた致死量のジアールを飲み、眠ったのだった。
【結】人間失格 のあらすじ④
葉蔵は死ねなかった。
三日三晩眠り続け、ようやく目を覚ました葉蔵の前には、身元引受人とバアのマダムが居たのだった。
いきさつを知った二人は、ヨシ子と別れるように言うのだが、葉蔵はヨシ子と離れることができなかった。
だが、ヨシ子は、自分の身代わりになって葉蔵が薬を飲んだのだと思い込んでいた。
葉蔵に対しびくびくとした反応を見せるようになったヨシ子を見て、葉蔵はもう昔のような幸せな生活は送れないことを悟る。
葉蔵はある雪の日、酒を飲んで歩きながら、喀血した。
自殺未遂のせいで、体が弱っていたのだ。
葉蔵は、近くにある薬屋に入り、そこで薬としてモルヒネを処方してもらう。
このモルヒネの効果は絶大であった。
これに味をしめてしまった葉蔵は、モルヒネ中毒になってしまう。
しかし、葉蔵には金がなかった。
何度もツケを繰り返した結果、その額はとても払えない金額となり、ついには薬屋の女主人と関係を結ぶまでに至る。
この状況に耐えきれなくなった葉蔵は、ついに自分の状況を説明し、金の無心をする手紙を実家に送る。
その結果、身元引受人と堀木が心配して葉蔵のもとにやってきた。
二人は葉蔵を車に乗せ、ある施設まで運んだ。
葉蔵は、体調が優れないことから、療養所に連れていかれるのだと信じていたが、到着した場所は精神病院であった。
今まで、葉蔵は自分の狂気を自覚したことはなく、正常な人間だと信じて生きてきたのだが、これがきっかけで自分は狂った廃人だということを思い知らされる。
その後父が亡くなり、葉蔵は東北に戻った。
そこで葉蔵は、幸せも不幸せもない生活を送る。
「いまは自分には、幸福も不幸もありません。
ただ、一さいは過ぎていきます。
自分がいままで阿鼻叫喚で生きて来た所謂「人間」の世界に於いて、たった一つ、真理らしく思われたのは、それだけでした。」
何一つ理解できなかった人間としての生活において、葉蔵は一つだけの真理にたどり着いたのだった。
人間失格 を読んだ読書感想
太宰治の遺作ともいわれる作品。
正確には、「グッドバイ」が遺作になるが、未完成のため、完成した作品の中では人間失格が遺作であり、代表作でもある。
この作品は、太宰本人の人生、考えを反映した部分が多くある。
太宰の作品自体、彼の人生がもととなっているだろう作品は多くあるが、この作品は特に彼の人生、考えが描かれているといってもよい。
大葉葉蔵の人生が描かれた作品だが、太宰について知るにはとてもよい作品。
言い回しが難しい部分があり、理解するには一度読むだけでは足りないかな?と感じる。
何度も読むうちに、新しい発見ができる。
人間失格の主人公・大葉葉蔵と同じ名前の主人公が登場する「道化の華」もおすすめ。
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