春琴抄(谷崎潤一郎)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

春琴抄(谷崎潤一郎)

【ネタバレ有り】春琴抄 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:谷崎潤一郎 1951年2月に新潮社から出版

春琴抄の主要登場人物

春琴(しゅんきん)
本名は鵙屋琴。9歳で視力を失い以後は三味線の師匠となる。

春松(しゅんしょう)
春琴の師匠。

温井佐助(ぬくいさすけ)
春琴の1番弟子。

鴫沢てる(しぎさわてる)
春琴の2番弟子。

美濃屋利太郎(みのやりたろう)
雑穀商の息子。

春琴抄 の簡単なあらすじ

大阪の薬商人の家に生まれ育った春琴は9歳の時に視力を失って、以後は三味線の稽古に励んでいきます。そんな彼女に付き添って何くれとなく世話を焼いているのが、奉公人の佐助です。佐助自身も三味線奏者の道を歩んでいくことを決意し、春琴の罵倒にただひたすら耐え忍びます。恋人でもなく夫婦でもない関係を続けていくふたりに、悲劇が降りかかってくるのでした。

春琴抄 の起承転結

【起】春琴抄 のあらすじ①

美しき盲目の少女と陰ながら支える少年

鵙屋琴は大阪道修町に7代に渡って続いてきた、薬商人の家に次女として文政12年(1829年)の5月24日に生まれます。

幼い頃から容姿端麗な少女として近所でも有名で、読み書きも得意で踊りに秀でていました。

9歳の時に不幸にも眼病を患い視力を失ってしまい、舞踏家としての夢は諦めざるを得ません。

春琴がその代わりに歩んでいったは、三味線の演奏家としての道のりです。

自宅から1キロほど離れた場所にある靱という町に住んでいる、名人・春松に弟子入りを志願して稽古に精進して腕を磨いていきます。

15歳を迎えるあたりからは春琴の才能はみるみるうちに開花していき、同門の弟子たちの中にも敵う者はいません。

師匠の家まで彼女の手を引いて連れていくのは、温井佐助という春琴よりも4歳年上の少年の役割です。

本来であれば春琴の実家で丁稚奉公に励んでゆくゆくは商人となるはずでしたが、佐助は春琴に心惹かれていき彼女と同じく三味線奏者を目指すことになりました。

【承】春琴抄 のあらすじ②

異様な師弟関係とうやむやになった妊娠騒ぎ

春松が弟子に手ほどきをする稽古場は奥の中2階にあり、春琴を案内した佐助は一旦控の間に下がって待機しているのがお約束です。

漏れ聞こえてくる音から自然と音曲に慣れ親しむようになった佐助は、丁稚たちが寝静まった深夜遅くにコッソリと三味線を持ち出して見様見真似で練習するようになりました。

佐助の隠された才能に気付いていた春琴は、彼と三味線の師弟関係を結びます。

春琴は元来が気性の激しい性格になり、弟子となった佐助の至らなさを烈しく詰り、時には演奏に使う撥を握りしめて殴りつける始末です。

気弱な佐助は涙を流しながらも、稽古と折檻に耐え忍び逃げ出すことはありません。

そんな中で突如として降って湧いたのが、春琴の妊娠騒ぎです。

鵙屋の両親から問い詰められても、春琴は頑として相手の男性の名前を白状しません。

やがて春琴は佐助にそっくりな男の子を出産しましたが、ふたりは夫婦になることもなく産まれた子は養子に出されていきました。

【転】春琴抄 のあらすじ③

春季一門の誕生と不吉な放蕩息子

お稽古に着ていく着物から髪飾りに、お化粧に使う糸瓜の水からウグイスの糞、果ては愛玩用に飼っている雲雀や鸚鵡まで。

春琴は裕福な家庭に生まれ育ったせいか、金遣いが荒く周囲の人たちを困らせてばかりです。

その一方では三味線の上達ぶりに関しては留まることを知らずに、師匠の春松が亡くなったのを機会に独立して看板を掲げることを認められます。

佐助を引き連れて道修町の実家を出た春琴が終の棲家としたのは、淀橋筋に構えた一戸建てです。

新たに鴫沢てるという女性の弟子も加わって、春琴一門の船出となりました。

てるの話では春琴の美しさを目当てにして三味線を習いにくる男性も多かったらしく、土佐堀の雑穀商人の息子で放蕩者の美濃屋利太郎もそのひとりです。

元々才能もなく鼻から三味線に興味がなかった利太郎に対して、春季は殊更厳しく接します。

遂には撥で額を叩き割られて流血した利太郎は、「覚えてなはれ」の捨て台詞を残して姿を眩ますのでした。

【結】春琴抄 のあらすじ④

永遠に美しいままの春琴

春季に危害を加えたのは利太郎であるとか北ノ新地に住んでいた芸者の卵であるとか諸説飛び交っていましたが、未だにその真相は明らかになっていません。

3月も終わりを告げるある日の午前3時頃、佐助は春琴の悲鳴を聞いて飛び起きました。

何者かが雨戸をこじ開けて侵入して、鉄瓶に入った熱湯を春琴の顔にかけたようです。

それ以降春季は顔面を包帯で覆った変わり果てた姿になり、通いの医師の他には佐助にさえ素顔を見せようとはしません。

佐助は美しかった頃の春琴の姿だけを胸の内に焼き付けようと、自らの両目に縫い針を突き刺してしまいます。

ふたりは共に光を失った三味線奏者として、弟子のてるに傅かれながら天寿を全うしました。

春琴は明治19年(1886年)10月14日、58歳でこの世を去ります。

春琴亡き後は佐助が一門の師匠となり、弟子たちの看護を受けながら83歳の大往生を遂げました。

ふたりのお墓は大阪市内の下町寺にあり、死後も寄り添うように並んでいるとのことです。

春琴抄 を読んだ読書感想

美しくもサディスティックな性癖を持つ三味線の師匠と、ただひたすらに彼女に尽くす弟子との異様な関係性に引き込まれていきました。

視力を失ったヒロインの春琴が、音楽と小鳥を愛でることに全ての情熱を注いでいく様子には鬼気迫るものがあります。

肉体的な暴力を受けても言葉で罵られて精神的なダメージを負いながらも、生涯をかけて春琴を守り抜くことを誓った奉公人・佐助の姿が涙ぐましいです。

世の中の流れから取り残されていくようなストーリー後半の展開の中にも、お互いへのピュアな気持ちが伝わってきてホロリとさせられました。

コメント

  1. 内田祐司 より:

    介護する立場の者が、介護出来ない状況を自ら作り出すとは…。
    気違い染みたこの状況は、全世界の人間は決して容認しないであろう。
    様々な人間たちは日々極めて困難の状況下、命がけで生き抜いているのであり、このような馬鹿げ切った選択などする筈もない。
    この作品にもし涙する者があるなら、自分の知能指数を疑ってみるべきである。

  2. 果南 より:

    介護の話じゃない事が理解できない知能指数の低さでは何も読むに値しないでしょうね