映画「起終点駅 ターミナル」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|篠原哲雄

映画「起終点駅 ターミナル」

監督:篠原哲雄 2015年11月に東映から配給

起終点駅 ターミナルの主要登場人物

鷲田完治(佐藤浩市)
主人公。どこの企業とも関わらず私選の弁護も引き受けない。ひとり暮らしが長く家事・炊事も苦にならない。

椎名敦子(本田翼)
鷲田の依頼人。風俗業から飲食店のアルバイトまでを転々とする。悪友や裏社会との縁が切れていない。

結城冴子 (尾野真千子)
鷲田の学生時代の同志。自らの短命を予感している。

大下一龍(中村獅童)
父親は極道で若い頃は荒れていた。投資家として財を成す。

堂島恒彦(山田悠介)
鷲田の息子。法学部の学生で正義感が強い。

起終点駅 ターミナル の簡単なあらすじ

裁判官として順風満帆だった鷲田完治が妻子を捨てて田舎町に引っ込んだのは、心から愛していた結城冴子が自らの生命を絶ってしまったからです。

わずかな報酬で法律相談を引き受けていたところ、椎名敦子という若い女性とプライベートでも親しくなっていきます。

過酷な毎日を生きる敦子のひたむきさに触れた鷲田は、成長した我が子と向き合っていくのでした。

起終点駅 ターミナル の起承転結

【起】起終点駅 ターミナル のあらすじ①

都会の法曹エリートが北町の国選弁護人に

都内で結婚生活を送っていた鷲田完治が、旭川地方裁判所に支部長として単身赴任をしてきたのが1988年のことです。

閉廷後に1杯飲みに行くのがスナック「慕情」、お店を切り盛りしているのが結城冴子。

彼女とは大学で学生運動に熱中した仲ですが、司法試験に合格してからは疎遠になっていました。

営業終了後に2階に泊まっていく関係を続けていた矢先、高等裁判所への栄転が決まります。

鷲田は駆け落ちをする覚悟でしたが、誰かの負担になりたくない冴子は線路に飛び込んでしまいました。

逃げるように列車に乗り込んだ鷲田は、終点の釧路駅で降りるとこの地で開業します。

離婚調停を専門にする先輩のおかげで妻とは円満に別れることができ、4歳になったばかりの恒彦とはそれ以来連絡を取っていません。

万引の常習者から不良少年の更正までとボランティアのような案件ばかりを扱っていた時に出会ったのが、大下組の2代目・一龍です。

盛り場でケンカを繰り返していた彼が道を踏み外さなかったのも、鷲田が世話を焼いてやったからでしょう。

起業して成功した一龍から顧問になってくれと頼まれましたが、鷲田は組織に属するつもりもありません。

【承】起終点駅 ターミナル のあらすじ②

ふたりっきりのチキン・パーティー

2014年、「鷲田法律事務」を訪ねてきたのは勤め先でダイエットサプリとだまされて覚醒剤を購入した椎名敦子。

執行猶予付きの判決で済みましたが、頼み事があると自宅まで押し掛けてきました。

敦子に薬物を売ったのは一龍の会社の社員・大場誠で、北海道警察署がその行方を探しています。

敦子とは違って窃盗の前科があるために、逮捕されれば実刑判決は免れません。

人探しの方は専門外のために丁重にお断りをした鷲田でしたが、せっかくなので朝食をごちそうすることに。

鶏肉を揚げた北海道の郷土料理「ザンギ」を気にいったという敦子、大場の悪事には加担しないようにと念を押す鷲田。

採れたてのすじこ、デパートの精肉店で購入した高級肉、お客さんからもらったコーヒー豆とミル… それからというものお土産を片手に頻繁に顔を出すようになった敦子でしたが、ある時に高熱を出して倒れてしまいました。

診療所に連れていくと腎臓が炎症を起こしているとのこと、保険証を持っていない敦子の代わりに診察代を立て替えておきます。

【転】起終点駅 ターミナル のあらすじ③

やり直し裁判の開廷

夜通し側で看病していると、敦子は身の上話を打ち明けました。

生まれたのは東部の厚岸町で両親は漁師、3つ上の兄が敦子の友人を妊娠させたこと、夫婦となったふたりに家を追い出されたこと。

勉強が苦手なために年齢をごまかして夜の仕事をしてきたという敦子を、鷲田は厚岸の実家へと連れていきます。

誰も住んでいない家の中には父と母の遺影が置いてあって、裏には享年45歳と書いてあるだけです。

ふたりで手を合わせてから部屋の中を調べてみると使用済みの注射器が、ここの場所を知っているのは少ない友人を除いては大場しかいません。

近所には使われていない農作物置き場、ここに潜伏していた大場でしたが中毒症状がひどく意識がありません。

大場を病院へ搬送してから道警で事情聴取を受けることになった敦子、一瞬でも彼の死を願ったことを後悔しました。

敦子のおかげでひとりの人間の命が助かったと励ました鷲田は、弁護人として面会に行きます。

大場が法廷で黙秘を貫いたのは、刑務所こそが人生をやり直すチャンスだという鷲田の言葉を信じたからです。

【結】起終点駅 ターミナル のあらすじ④

終着駅から再出発

大場の実刑が確定してから数日後、この街を出るという敦子が最後のあいさつにやって来ました。

抱きついてきた敦子をそっと受け止めた鷲田、ザンギのレシピを手渡して絶対に戻ってくるなと送り出します。

敦子と別れてまたひとりになった鷲田、気になっているのは2カ月ほど前に舞い込んできた1通の手紙で差出人は恒彦です。

進学先は東北大学、サークルは山岳部でアルバイトは家庭教師、司法試験には失敗したものの埼玉地方検察庁に事務官として配属… つい先日結婚が決まったという恒彦は、自分にとって唯一無二の父親である鷲田を招待したいそうです。

式が始まるのは明日の午前11時、今から特急おおぞらのキップを予約すれば今夜には東京駅につくでしょう。

タンスの中から礼服を引っ張り出した鷲田、たまたま外車で通りかかった一龍を呼び止めて助手席に乗り込みます。

釧路はターミナル(始発駅)だから慌てなくても座れるという一龍の言葉を聞いた鷲田は、ようやく自らに科していた25年の量刑が満了したことを確信するのでした。

起終点駅 ターミナル を観た感想

朝食は炊きたてのご飯ではなく焼き立てのトースト、付け合わせは目玉焼きではなくスクランブルエッグ、唐揚げではなくザンギ。

主人公・鷲田の食に関するこだわりが印象的で、出てくる料理の数々も色どり豊かで美味しそうです。

包丁さばきも手慣れたもので、椎名敦子が心ひかれていくのも無理はありません。

自らの過去から目を背けて凍てついていた鷲田の心が、敦子の温かさによって少しずつ雪解けを迎えていくようでした。

道に迷っていたふたりの前にそれぞれの行き先が開けてくるラストシーンが美しく、スタッフロールとともに流れるMy Little Loverの「ターミナル」も名曲ですよ。

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