映画「完全なるチェックメイト」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|エドワード・ズウィック

映画「完全なるチェックメイト」

監督:エドワード・ズウィック 2015年12月にギャガから配給

完全なるチェックメイトの主要登場人物

ロバート・ジェームズ・フィッシャー(トビー・マグワイア)
主人公。「ボビー」の愛称で知られるチェス界の新星。記憶力がずば抜けているがわずかな雑音でも集中力が乱される。

ボリス・スパスキー(リーヴ・シュレイバー)
ボビーのライバル。ソ連のグランドマスターで完全無欠のマシーンと恐れられる。

レジーナ・フィッシャー(ロビン・ワイガート)
ボビーの母。歳を取っても革命に憧れる。

ビル・ロンバーディ(ピーター・サースガード)
ボビーのセコンド。聖職者でありながら代表選手の選抜委員も務める。

完全なるチェックメイト の簡単なあらすじ

幼い頃に独学でチェスを覚えたボビーことロバート・フィッシャーは、類いまれな才能を発揮していきます。

アメリカ代表として挑戦権を得た相手は、無敵の強さを誇っていたソ連のボリス・スパスキーです。

幾度となく敗戦を喫しながらもついにスパスキーに勝利したボビーですが、その後は不遇の時代と激動の人生を歩んでいくのでした。

完全なるチェックメイト の起承転結

【起】完全なるチェックメイト のあらすじ①

冷戦下の熱き頭脳戦

1955年、若干12歳でアメリカのチェスマスターに輝いたのはロバート・ジェームズ・フィッシャー。

次の目標は世界王者になることですが、ブルックリンの自宅には深夜になっても大勢の見知らぬ男女が出入りしていました。

政治活動に熱心な母のレジーナは次々と交際相手を変えていて、ボビーは実の父親の顔を見たことがありません。

昼も夜も自分の部屋に閉じ込もって戦術を研究しているボビーとしてはとにかく静かな環境が必要で、学校にも行かずにチェスクラブに泊まっています。

ユーゴスラビアのインターゾーン大会でも優勝しましたが、世界最強と言えばやはりソビエト連邦のプレイヤー。

いよいよ現王者ボリス・スパスキーの対決候補に挙がったボビーですが、ソ連としてはアメリカに譲り渡す訳にはいきません。

捨て駒要員をぶつけて故意にドローに持ち込み、ボビーのポイントがスパスキーを上回らないように裏工作をするつもりです。

ボビーはワシントン・スクエアの古本屋でソ連に関する書籍を片っ端から買い漁り、彼らのプレースタイルを研究していきます。

【承】完全なるチェックメイト のあらすじ②

東のキングが西海岸に上陸

1965年、サポート役を探していたボビーが弁護士を通じて面会を求めたのはかつてスパスキーに勝ったこともあるビル・ロンバーディ。

現在は一線を退いて福音派の神父としても活動しているビルですが、自分の過去の対局をすべて記憶していたボビーのことを気に入りました。

ソ連の選手団が親善試合のためにカリフォルニア州に到着したと聞いて、ボビーはビルを連れて現地入りします。

スパスキーが泊まるのは最高級のビバリー・ヒルトンホテル、ボビーたちはエアコンが故障したルート66のモーテルと待遇の差は歴然です。

ボビーが要求した条件は3つ、会場には黒いリムジンで乗り入れること、チケットの売上金の30パーセントをもらうこと、観客席との距離を1・5メートルを空けること。

万全の体制で臨んだスパスキーとの初対決は惨敗、ボビーは2位で表彰式にも出席せずマスコミの取材にも応じません。

再戦までには世界中を飛び回ってトーナメントを勝ち抜かなければならないために、3年ほどかかるでしょう。

【転】完全なるチェックメイト のあらすじ③

盤上の世界大戦が勃発

ハンガリー、チュニジア、イスラエル、カナダ… 1967年に国際試合に復帰したボビーは次々と各国のナンバーワンを打ち負かしていました。

その一方ではアメリカ人でありながら東側諸国に好意的、ユダヤ系でありながら同胞を批判するなど問題発言も目立っています。

連邦捜査局からはスパイの疑いを掛けられているようですが、政治に興味はなく誰よりも強くなりたいだけです。

アメリカ人として初めて世界選手権の決勝まで駒を進めたボビーですが、会場となるレイキャビクに姿を現しません。

スパスキーのもとには早くもブレジネフ書記長から前祝いのシャンパンが届けられ、国際チェス協会が不戦勝を通告するのも時間の問題でしょう。

精神的に追い詰められて雲隠れしていたボビーに、秘書を通じて電話を掛けてきたのは国務長官のヘンリー・キッシンジャー。

合衆国のために戦ってほしいという大統領直伝のメッセージに心を動かされたボビーは、ようやく覚悟を決めて世紀の一戦に臨みます。

【結】完全なるチェックメイト のあらすじ④

神の一手に近づいた人間の代償

1972年7月11日、初戦を落としたボビーは観戦者のささやきやカメラのフィルムが回る音がうるさいとクレームを付けました。

次の試合をボイコットしたボビーに対して、スパスキーは唯一気密性が保たれている卓球室での無観客試合を了承します。

第3・5局を取り返してイーブンに持ち込んだ第6局、再び舞台をメインホールに移すと記者も観客も息を殺して身動きさえしません。

極めて重要なこの局面でボビーは王道のシシリアン陣形を捨てて、まったく前例のない指し手を使いまさに人知をこえた美しさです。

42手でチェックメイトとなったスパスキーがそっと手を差し出すと、会場からは割れんばかりの拍手が巻き起こります。

この局が決め手となって世界一にのぼり詰めたボビーですが、すでにメンタル面では限界を迎えていたのでしょう。

推定数100万ドルのオファーを断って防衛戦を拒否、タイトルを剥奪された末に放浪罪で逮捕、経済措置に違反したために国外追放… アイスランドに亡命して市民権を得たボビーは、母国の土を踏むことはなく2008年に波乱に満ちた生涯の幕を閉じるのでした。

完全なるチェックメイト を観た感想

天才と紙一重の変わり者ボビー・フィッシャーと言えば、一時期日本人女性と結婚していたり蒲田に滞在していたことで親しみが湧いてきます。

そんなボビーの持論によるとチェスは4手進むだけで3000億通りの可能性、1ゲーム平均が40手だとするとその組み合わせは銀河の星の数に匹敵するというから驚きです。

まさに一歩でも足を踏み入れると抜け出せなくなる迷路のようなもので、晩年の彼が深い闇へと落ちていったことも納得できますね。

天真で激情型のボビーをヒーローのように演じているトビー・マグワイア、クールな横顔が格好いいスパスキー役のリーヴ・シュレイバー。

想像を絶するような緊張感が画面を通じてこちらまで伝わってくるような、ふたりの名演は必見です。

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