監督:中村義洋 2009年3月に東宝から配給
ジェネラル・ルージュの凱旋の主要登場人物
田口公子(竹内結子)
ヒロイン。血を見るのが苦手で心療内科医に転身した。患者の愚痴を聞くのがうまい。
白鳥圭輔(阿部寛)
東大卒業後に厚生労働省に入省。挑発的な言動で相手の本音を引き出す。
速水晃一(堺雅人)
若くして救命救急のセンター長に就任。軽傷者でも重傷者でも受け入れを断らないのがポリシー。
沼田利博(高嶋政伸)
精神神経外科の准教授。患者の気持ちよりも収益と効率を重視する。
小峰小太郎(林泰文)
精神科講師で沼田の腰巾着。甘いお菓子と苦いコーヒーが大好き。
ジェネラル・ルージュの凱旋 の簡単なあらすじ
救命救急センターのリーダー・速水晃一が出入りの業者から賄賂を受け取っているという疑惑が持ち上がり、調査に乗り出したのが田口公子です。
交通事故で入院していた厚生労働大臣官房付の白鳥圭輔の助けを借りながら、田口は速水を陥れようとしていた黒幕・沼田利博の存在を突き止めます。
直後に発生した火災で人命救助に当たった後で、速水は巨大な大学病院から小さな診療所へと旅立つのでした。
ジェネラル・ルージュの凱旋 の起承転結
【起】ジェネラル・ルージュの凱旋 のあらすじ①
東城大学医学部附属病院で発生した心臓病患者の連続死の真相を突き止めた田口公子は(シリーズ第1弾「チーム・バチスタの栄光」参照)、病院長の推薦によって倫理委員会の委員長に就任していました。
ある時に救命救急センターの速水晃一が医療メーカー「メディカルアーツ」と癒着しているという、匿名の告発状が舞い込んできます。
心臓カテーテルの使用頻度を調べてみれば一目瞭然で、告発の内容が本当であれば看護師長の花房美和も共犯でしょう。
速水は「ジェネラル(将軍)」の異名を持つほどの優秀な医師ですが、独断専行が目立ち院内には敵が多いのも事実です。
ようやくバチスタ事件のダメージから回復してきたこの病院にとって、これ以上のスキャンダルは致命傷になりかねません。
病院長から内密に調査することを頼まれた田口が救急センターを訪ねてみると、速水がメーカーの営業担当者・磯辺信也から紙袋を手渡されている場面を目撃します。
院外レクリエーションのソフトボールで田口も磯辺とは交流がありましたが、次の日に屋上のヘリポートから転落して亡くなってしまいました。
【承】ジェネラル・ルージュの凱旋 のあらすじ②
オートバイにひき逃げされて救急センターに搬送されてきたのが、以前に田口と組んでバチスタ事件を解決した白鳥圭輔です。
一般の病室に空きがないために小児科病棟に入院することになった白鳥にも、告発文が送られてきていました。
白鳥のもとに届いたのはワープロプリントで速水の単独犯行説、田口宛のは手書きで速水・花房による共犯説。
速水の活躍の陰に隠れてくすぶっている沼田利博の研究室を訪ねると、助手の小峰小太郎がドリップコーヒーを淹れておもてなしをしてくれます。
沼田は投薬治療と診療時間の短縮による利益確保をモットーとする精神科医で、ひとりの患者とじっくりと向き合う田口とは明らかに別タイプです。
告発文書をばらまいて速水を失脚させる狙いだという白鳥の推理を突き付けられても、沼田はまったく動じません。
沼田は小峰にスケジュールの調整をさせて、特別倫理委員会の開催を要請してきました。
速水は委員会に出席して身の潔白を証明する羽目になり、白鳥も院外からのオブザーバーとして参加します。
【転】ジェネラル・ルージュの凱旋 のあらすじ③
メディカルアーツのカテーテルを使っているのはあくまでも医療器具として優れているからで、速水は事実無根の中傷だと主張します。
速水がセンター長への就任を要請された5年前、ドクターヘリの導入や各部門から出向医を出すことを病院側は約束しました。
実際にはセンターの専属医だけで現場を回している過酷な現状で、人員も病床もまったく足りていません。
事務長から赤字部門は切り捨てると脅されていた速水は、業者からリベートを受け取って消耗品代や器材費に使っていただけです。
花房は領収書を保管してファイルしていたために、速水が個人的な利益を要求していないことが証明されました。
告発文を書いて送ったも速水と花房で、もしもの時はふたりで病院を去って救命救急センターを白紙から建て直す覚悟です。
すべては救命救急の部門を縮小して新しくメディカルセンターを立ち上げることを目論んでいた沼田の仕業ですが、磯辺は音声データを残して田口に渡しています。
沼田と事務長との会話の背後から小峰がコーヒー豆を挽く音が録音されていて、彼こそが磯辺を屋上から突き落とした犯人でした。
【結】ジェネラル・ルージュの凱旋 のあらすじ④
小峰の身柄が警察に引き渡されて沼田の悪事が明るみに出た頃、付近の高速道路ではガソリンを積んだトレーラーが横転して大規模な火事が発生していました。
多数のケガ人が救急車で東城大病院のロビーに運び込まれてきたために、速水が現場の陣頭指揮を執ります。
極度の疲労と緊張で顔面が真っ青になっていた速水に、そっと赤い口紅(ルージュ)を差し出したのは花房です。
速水たちができるのは応急措置や止血くらいで、メンタル面で患者やその家族をきめ細やかにケアするのは田口にしかできません。
白鳥も厚労省の上司と掛け合って他県から緊急医療用のヘリコプターを応援で回してもらい、多くの人の命を救うことに成功します。
磯辺の死に責任を感じていた速水は辞表を提出しましたが、病院長が命じたのは極北救急センターへの出向です。
退院が決まった白鳥は田口から花束を受け取ってタクシーに乗り込み厚生労働省へ、速水と花房は手をつないで北海道へと向かうのでした。
ジェネラル・ルージュの凱旋 を観た感想
1時間のあいだ休み無しで心臓マッサージを繰り返したとして2000円程度にしかならないという、救命医療の過酷な現場がリアルに描かれていました。
製薬会社と大学病院との持ちつ持たれつとの関係性についても、鋭くメスが入れられていて考えさせられますよ。
主人公の田口公子はいつの間にやら「東城医大の裏番」と言われるほど出世していますが、相変わらずマイペースな様子には笑わされます。
ほどよい脱力感で田口役を演じている竹内結子、面の皮が厚い白鳥圭輔にはピッタリな阿部寛。
海堂尊原作の小説はこれ以降も続いているだけに、ふたりの共演が本作で見納めとなってしまったのが残念でなりません。
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