映画「ソロモンの偽証」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|成島出

ソロモンの偽証

監督:成島出 2015年3月に松竹から配給

ソロモンの偽証の主要登場人物

藤野涼子(藤野涼子)
ヒロイン。公立中学の2年生で学級委員を任されている。意思が強く何事も最後までやり抜く。

柏木卓也(望月歩)
涼子のクラスメート。1カ月ほど不登校が続いている。

森内恵美子(黒木華)
涼子の担任。教師になって2年目で頼りないが生徒からは人気がある。

大出俊次(清水尋也)
学校一の問題児。恐喝や窃盗を繰り返し補導されている。

神原和彦(板垣瑞生)
柏木の小学時代の友人。私立の有名校に合格した秀才。

ソロモンの偽証 の簡単なあらすじ

同じクラスの柏木卓也の転落死の謎を解き明かすために、藤野涼子は友人たちと力を合わせて模擬裁判を開きます。

不良少年として有名で真っ先に容疑者に上がった大出俊次を弁護するのは、他校からやってきて涼子に協力を申し出た神原和彦です。

神原は自分の目の前で柏木が飛び降りたことを法廷で告白して、大出の無実を証明するのでした。

ソロモンの偽証 の起承転結

【起】ソロモンの偽証 のあらすじ①

クリスマスの惨劇から疑惑の告発状

城東第三中学校に通う藤野涼子が校庭で柏木卓也の遺体を発見したのは、ウサギ小屋の掃除をするためにいつもより早い時間に家を出た1990年の12月25日のことです。

遺書は発見されませんでしたが柏木は11月14日以来学校に来ていないために、警察は自殺と結論づけました。

涼子の自宅に封筒入りの手紙が届けられたのは年が明けた1月7日のことで、柏木は大出俊次によって屋上から突き落とされたことを告発しています。

大出の実家はバブルで利益を挙げている材木店ですが、これまでも息子が起こしたトラブルをお金でウヤムヤにしていたために評判は良くありません。

同じ内容のものがテレビ局の報道部にも送られていましたが、中身はボロボロで宛名は涼子や柏木の2年A組を受け持っている森内恵美子です。

森内は告発状を破り捨てたとして職員会議で非難を浴びますが、本人にはまったく身に覚えがありません。

卒業式を終えた後で森内は校長に辞表を提出しますが、告発状が自宅のポストから盗まれたことを証明するために調査会社に依頼します。

【承】ソロモンの偽証 のあらすじ②

真実を法廷に引きずり出す

告発状を出した疑われているのは三宅樹里という女子生徒で、前々から大出のグループから悪質ないじめを受けていました。

大出も三宅もうわさだけで犯人のような扱いを受けていますが、どちらかがウソを付いていることは間違いありません。

3年生になった涼子が紹介されたのは東都大付属中学校に通っている神原和彦で、去年の暮れに行われた柏木の葬儀に参列していたのを覚えています。

柏木とは小学校の時に学校や塾で仲が良かったものの、中学に入ってからは一度も会っていないそうです。

柏木がどうして死んだか知りたいという神原のために、涼子は学校で自分たちで裁判をすることを思い付きました。

準備期間は3週間で開廷は夏休み、場所は体育館、判決の言い渡しまで5日ほど、判決を下すのは裁判長ではなく陪審員。

告発状の中身を信じて大出の有罪を証明する検事の役は涼子で、大出と利害関係のない神原が弁護人を引き受けました。

先生の多くは裁判を阻止しようと圧力をかけてきますが、森内が顧問をしていたバスケ部員や元2年A組の生徒たちは彼女の無念を晴らすために結束していきます。

【転】ソロモンの偽証 のあらすじ③

貴重な証言と救いのための裁判

学校内裁判として開廷した1日目、弁護側の証人としてやってきたのは少年課の刑事・佐々木礼子。

当初から柏木の死は自殺だと断定している警察は、今回の事件に大出は関わっていないと証言しました。

2日目の証人は元2年A組の担任の森内、頭に包帯を巻いた姿。

森内が住んでいるマンションの隣の部屋には垣内美奈絵という女性がいて、夫から暴力を受けているため精神的に安定していません。

逆恨みをした垣内は他人のポストから郵便物を物色するようになり、告発状を盗んだのも部屋に押し入って森内にケガを負わせたのも彼女の仕業です。

二度と教壇に立つつもりはないという森内ですが、この機会を与えてくれた涼子たちに感謝を告げて立ち去ります。

3日目、大出のアリバイを証明したのは事件の日に大出家に出入りしていた不動産会社の社員。

一方では大出がこれまで重ねてきた悪事の数々が次々と明るみに出て、ひとりで調べ上げたのは弁護人であるはずの神原です。

神原の目的は大出のいじめによって傷つき、告発状を書かなければ生きていられなかったほど追い詰められていた三宅を救うことでした。

【結】ソロモンの偽証 のあらすじ④

最後の証人と生き残った者への判決

最終日に現れたのはこの町で電器屋を営む小林修造という高齢の男性で、事件のあった夜に店の前の電話ボックスで中学生らしき少年の姿を目撃していました。

あらかじめ柏木家を訪ねて通話記録を見せてもらっていた涼子たちは、柏木が公衆電話で呼び出されていたことを調べています。

小林が指を差したのは神原で、彼こそが柏木が死ぬ直前に会話を交わした人物です。

弁護人の席から証言席へと移動した神原は、小学校の時に柏木と共有したふたりだけの秘密を打ち明けました。

神原の秘密は7歳の時に父親が母親を殺害して自殺したこと、柏木の秘密は退屈な人生を一瞬で終わらせる計画を立てていること。

小林電器店の向かい側には神原が両親と住んでいた団地があり、悲しいことばかりではなく楽しかった思い出もあります。

あの日屋上に呼び出された神原は生きていくことを選び、柏木は自ら死を選んだのが真相です。

陪審員によって無罪の判決が言い渡された大出は、神原と無言で握手をすると振り返ることもなく姿を消します。

一生に一度あるかないかの大仕事をやり遂げて友だちになった涼子たちは、それぞれの思いを胸に抱きながら正門へと向かって歩いていくのでした。

ソロモンの偽証 を観た感想

時代設定は1990年代の初めですが、主人公の藤野涼子を始めとする10代の少年少女たちは今どきの若い世代とそれほど変わりはありません。

バブル景気が弾ける寸前の大人たちの異様なほどの浮かれ具合と、子どもたちの冷めたまなざしとのコントラストが際立っていました。

中学生が自力で裁判を開いてしまうという行動力と知性には感嘆しますが、やっかい事から目を背ける教師や保護者への鋭い批判にも考えさせられます。

被告人を罰することでも有罪判決を下すことでもない、スリリングな学校内裁判に隠された意外な目的にも驚かされるでしょう。

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