映画「糸」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|瀬々敬久

糸 瀬々敬久

監督:瀬々敬久 2020年8月に東宝から配給

糸の主要登場人物

高橋漣 (菅田将暉)
本作の主人公。チーズ工房に勤めている。子どもの頃葵を救えなかったことをずっと気にしている。

園田葵 (小松奈々)
本作の主人公。子どもの頃、母と母の恋人に暴力を振われていた。

桐野香(榮倉奈々)
漣の最初の妻。ガンを患う。

村田節子 (倍賞美津子)葵が子どもの頃、漣に渡すお弁当の作り方を教えてくれた人。

糸 の簡単なあらすじ

中学生の頃、運命的に出会い付き合い出した漣と葵でしたが、葵は急に引っ越してしまいます。

転居先を訪ねた漣は、葵がひどい暮らしをしていると知り、葵を連れて逃げました。

けれど漣は葵を守り切ることが出来ず、二人は再び離ればなれに。

大人になった漣の元に同級生の直樹から結婚すると連絡が入り東京へ。

直樹の披露宴に葵も招待されていて、二人は久しぶりに再会しますが、葵はすっかり変わっていました。

糸 の起承転結

【起】糸 のあらすじ①

変わってしまった葵

高橋漣が園田葵に初めて会った時、それは花火大会の日、自転車で転がってしまった漣は自分の方が怪我をしているのに、腕に元々ケガをしていた葵に大丈夫?と声をかけました。

その出会いから二人は付き合い始め、葵はサッカーをしている漣の元へお弁当を届け二人の仲は順調でした。

ある日、帰りたくないという葵に「明日もまた会えるからと」と漣は葵を家に帰してしまいます。

その後葵は突然引っ越し、漣は葵の友達の弓と一緒に葵の家の近所のおばちゃんを訪ねると、そのおばちゃんは葵がお弁当の作り方を聞いてきたときはとても幸せそうだったと教えてくれました。

その後漣は弓を通じて葵の転居先を聞き出し訪ねると、葵の暮らしは母の恋人に暴力を振われるひどいものだと知ります。

漣は葵の手を取り「このままでいいわけがない」と昔行ったことのある小屋で一晩明かしますが、葵の母と恋人が警察に連絡して漣と葵は再び離ればなれになってしまうのでした。

漣は大人になり、チーズ工房で働くもののとても無気力でした。

そんな時、葵からもらったミサンガが切れると親友の直樹から弓と結婚すると連絡が入ります。

漣は初めて東京へ向かい、直樹の披露宴に葵も招待されていると知り、葵を探すのでした。

綺麗に成長した葵は、今は大学生になっていて雰囲気が変わり、少し話が出来たものの直ぐ帰ってしまいました。

葵を追いかけた漣は、最近までミサンガを付けていたことを告白しますが、葵は彼氏の車に乗り込み帰ってしまうのでした。

【承】糸 のあらすじ②

葵への想いに区切りをつけて

葵は漣と引き離された後、母と東京へ移りましたが母はまた新しい男の元へ行き、葵は大学の費用を稼ぐためにキャバクラで働いていました。

キャバクラでは本当の自分を偽り暇つぶしで働いているように装っていましたが、会社を経営する水島は葵が必死に働いていることを見抜き、同棲するようになるのでした。

水島は葵にお金をくれますが、葵は自分で稼ぎたい気持ちがありしかし、水島に前の暮らしに戻ってもいいのか?と言われ取り合えずお金を受け取っていました。

一方、漣は北海道に戻ってから、前以上にぼんやりしていてチーズ工房の先輩・香にフラれたことを見抜かれます。

香は、漣を飲みに誘い自分も中学から付き合ってきた彼氏と結婚するつもりだったのに浮気され別れた話をしてくれました。

その話を聞いた漣はまるで自分に喝を入れるように香に激を入れ、その後二人は一緒に暮らすことにしました。

そして、葵は会社が傾き逃げてしまった水島を探して沖縄に行きます。

葵は、今度は自分が水島を助ける番だと伝えるのでした。

漣は香と暮らすために役所に手続きに来ていて、そこで偶然葵と再会します。

葵は、母親に謝ってもらいたく母親を探しに北海道にやってきたのでした。

葵を放っておけない漣は、母が居そうな場所を一緒に周り、函館の叔父のところまで行きますが、母は亡くなっていたことを知ります。

漣は、葵に守ってあげられなくてごめんと子どもの頃のことを詫び、泣き出す葵を抱きしめるのでした。

漣は香と同棲を始め、葵は水島の元へ戻り、漣は葵への想いに一区切りつけました。

【転】糸 のあらすじ③

起業

沖縄に帰った葵は、また水島がお金を置いて葵の元から去ってしまいました。

葵の居場所はここじゃないと水島に言われてキャバクラ時代の友人・玲子が働くシンガポールへと行き玲子と同じくネイルサロンで働くことにしました。

玲子はその後、お客から理不尽に暴力を受け日本に帰ろうとしますが、暴力を受けた後逃げるとその後うなされると葵に言われ逃げるのをやめて、一緒にネイルサロンの派遣会社を設立します。

一方、日本ではその頃東日本大震災があり、妊娠中の香を心配し漣は病院を訪れると香の様子が変でした。

その後、香からガンを患っていると明かされ、それでも香は、赤ちゃんを産むと言うのです。

漣も香の両親も反対しますが、香はぶじ赤ちゃんを産み漣と香織は娘の結と幸せに過ごしました。

しかし、香はガンを再発し亡くなってしまうのでした。

生前香は、娘の結に泣いている人がいたら抱きしめてあげなさいと教育していて、結はそれを実践する優しい子に成長しました。

香亡き後の漣は、以前から挑戦しているチーズのコンクールのため試行錯誤を繰り返し途方にくれますが、失敗作をフードプロセッサーにかけたものを結が美味しいと言ってくれるのでした。

一方、葵は設立した会社が成功しますが、調子に乗った玲子が会社のお金を黙って不動産に投資し銀行に借金し、逃げてしまいうのでした。

葵は、使いたくなかった水島からもらったお金で借金を清算し、最後にシンガポールの日本食堂で不味いかつ丼を泣きながら食べるのでした。

【結】糸 のあらすじ④

運命の終着

帰国後、葵はシンガポールで一緒に働いていた冴島からシンガポールでエステサロンを始めたから一緒に働いて欲しいと誘われました。

シンガポールに向かう葵と美味しいチーズが三ツ星レストランで使ってもらえることになった漣は東京ですれ違っていました。

そんな時葵は、子どもの頃ご飯を食べさせてくれていた近所のおばちゃんが開く「子ども食堂」がネットニュースになっていることに気が付き、北海道に向かいます。

近所のおばちゃんは子ども食堂を始めたきっかけは葵だったとインタビューで答えていて、葵に会いたいと言っていたのでした。

葵はおばちゃんに会いに行き、おばちゃんの作ったご飯を子ども食堂に食べにくる子たちと一緒に食べながら「この味が一番美味しい。

帰ってきたと思う。」

と言いおばちゃんは葵におかえりと言うと葵は号泣します。

その場に居合わせた漣の娘・結は泣いている葵を抱きしめるのでした。

結を迎えにきた漣に気づいた葵は追いかけようとしますが、おばちゃんに漣の奥さんが亡くなったと聞き躊躇してしまいました。

漣は結から、お母さんからの教えを守り泣いている人を抱きしめたら、その人からお母さんのことを褒められた話を聞きます。

さらに、その人に食堂のおばちゃんがおかえりと言っていたと聞かされ、葵が来ていたと確信し漣は子ども食堂に向かいます。

しかし、会社の上司にどこに行くと言われ我に返りますが、結が投げたどんぐりが漣の背中に命中し、香から背中を押されたように感じ漣は、子ども食堂まで車を走らせるのでした。

おばちゃんから葵は函館からフェリーに乗ると教えてもらい、漣はフェリー乗り場に向かい葵をさがします。

葵も漣がそこにいると直感し、漣を探し二人はやっと再会します。

初恋の糸が複雑に絡みあったものの、やっと二人は結ばれ漣は葵と再婚するのでした。

糸 を観た感想

山あり谷ありの人生ですが、山の部分も谷の部分も短くて、もっと見たいと思いましたが、そのためテンポは良く中盤からラストにかけてはひきこまれました。

葵は2回泣きながらごはんを食べるシーンがあり、どちらも秀逸です。

シンガポールで泣きながらご飯を食べるシーンで、葵もいつも思い出の中の漣に助けられてきたと感じられます。

この映画のキーマンは香で、香は漣の妻と言うよりまるで守護霊のようです。

闘病中にあえて昔の彼氏といるところを漣にみせ、漣より好きだったというのは、自分が亡きあと漣が再婚しやすいようにとの配慮に感じます。

そして、まるで香が結の体を借りて背中にどんぐりを投げたように見え泣けてきました。

漣は初恋をこじらせている男性のようですが、いつも香に見守られていることを忘れないで欲しいと思います。

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