映画「夢売るふたり」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|西川美和

映画 夢売るふたり

監督:西川美和 2012年9月にアスミック・エースから配給

夢売るふたりの主要登場人物

市澤里子(松たか子)
本作の主人公。小料理屋いちざわを夫・貴也と営む働きもの。

市澤貴也(阿部サダヲ)
里子の夫で板前。優しく人たらし。

棚橋咲月(田中麗奈)
30歳独身。貴也に執着する。

睦島玲子(鈴木砂羽)
いちざわの常連で不倫していた。

夢売るふたり の簡単なあらすじ

火事で経営していた料理屋を失った里子と貫也は、里子の選んだ幸薄い女性をターゲットにし、その心の隙間に貫也が入りお金を借りるという詐欺を働くようになります。

しかし、二人は夢を売っているとその行為を正当化していました。

しかし、お金を得るためには貫也はよその女性のところに入り浸りになり里子の寂しさは募っていくばかりです。

そんな時、ターゲットの女性が探偵を雇い貫也の素性が明らかになってしまい…。

夢売るふたり の起承転結

【起】夢売るふたり のあらすじ①

火事からの闇落ち

里子と貫也は夫婦で小料理屋いちざわを営んでいましたが、ある日、焼き鳥の火がメニューにうつりあっという間にお店が全焼してしまうのでした。

里子はそれでも気持ちを切り替えてラーメン屋で働きはじめますが、貫也は新しい職場で自我を出し過ぎ上手く行かずに辞めてしまいます。

貫也はいつまでもくよくよし、いちざわの焼け跡で酒を飲んでいました。

そんなある日、貫也はいちざわの常連客の玲子に駅のホームで会い、二人とも酔っぱらっていたため、その場のノリで貫也は玲子の家に泊まります。

玲子は、不倫相手が事故に遭い、その弟から高額の手切れ金を渡され傷ついていました。

玲子はいちざわが燃えてしまった貫也を同情し、もらった手切れ金をくれたのでした。

大金を手にした貫也は浮かれて家に帰りますが、すぐに里子に浮気したことがバレてしまいます。

怒った里子は、玲子からもらったお金を燃やしてしまいますが、我に返りお札を濡らして乾かし、そして、自分をさらけだし同情させる手を使って更なる大金を手にしようと考えたのでした。

二人一緒に料亭で働き、里子が寂しい女性を獲物に決め貫也がその獲物からお金を出させるという方法でお金を巻き上げ、また二人でお店を開こうと目論みます。

しかし、あくまで詐欺ではなくお金を貸してもらうと考えで、そのためきちんと借用書を書いてもらい倍にして返そうと思っていました。

里子は、寂しい女性の心を貫也が埋めるのだから夢を見せてあげれると思っていました。

【承】夢売るふたり のあらすじ②

溝ができるふたり

ターゲットの咲月は、30代の女性で独身。

肩身の狭い実家暮らしをしていました。

貫也は里子の指示で泣いている咲月にハンカチを渡し、心の隙間に忍び寄っていき男女の間柄となって行きます。

店の再建のためと料亭の客たちから借用書を取ることに成功した里子と貫也は、だいぶお金が貯まったので、スカイツリーが見える場所に新しく店を構える夢が実現しかけていました。

そして、次なるターゲットを求め料亭を辞め、里子と貫也は、兄妹のふりをしてハローワークで小さな料理屋を紹介してもらいます。

今度のお店は、若い女性が来るようなお店ではありませんでした。

ターゲットを見つけるために、里子は婚活パーティーに顔を出し、いかにも男っ気がなさそうなウェイトリフティングの選手のひとみと仲良くなります。

里子は、ひとみに貫也を紹介し、貫也とひとみは仲良くなっていきます。

しかし、里子はひとみから引き揚げようと提案するのです。

里子はさすがに貫也がひとみを女性としてみることは厳しいのではないかと感じたのでした。

しかし、そんな風に感じる里子の方が気の毒だと貫也に言われてしまいます。

この頃から里子と貫也には溝ができ始めていくのです。

里子はひとみにガンだと嘘をつき、貫也を使ってひとみから大金を取ろうと考えていましたが、ひとみがよこしたのはお見舞金だけでした。

ひとみは、貫也がいままで騙した女性とは違って堅実な常識人だったのです。

【転】夢売るふたり のあらすじ③

里子のための詐欺のハズが…

貫也は里子のために詐欺をしているといい、里子の詐欺は、新たな店のためではなく浮気した貫也への腹いせのためだと言うのです。

それを言われて里子は、感情にフタをしてしまいます。

その後、貫也はひとみから借用書をもらうことに成功。

さらに、風俗で働く紀代もターゲットにします。

紀代にはDVの元夫が居て、貴也は元夫に殴られてしまいますが、紀代をDV元夫から解放することに成功しました。

貫也は、お金が目当てでありましたが、ひとみにも紀代にも誠心誠意優しく尽くしていました。

ある日ひとみがケガをし駆け付けた貫也は、病院の帰り救急で運ばれたおじいさんを待つ男の子と出会います。

貫也が遊んで待っているとその子の母親が病院に到着しました。

母親は、貫也が通っていたハローワークの受付の女性・滝子でした。

貫也は、儚げな美女・滝子をターゲットに決めます。

滝子は、シングルマザーで滝子の父と息子・恵太と三人暮らしです。

滝子の父は工場を経営していますが、以前のように仕事をするのが難しくなっていました。

あっという間に恵太は貫也に懐き、滝子の父は貫也を頼りにするようになります。

その後、貫也は騙すどころか率先して滝子の元に通うのでした。

いつしか寂しさを抱くようになっていった里子は、貫也の袖をひっぱり引き留めますが、貴也は出ていくのでした。

貫也は里子が気になり振り返りますが、里子が貫也を追いかけた時には貫也の姿はありませんでした。

【結】夢売るふたり のあらすじ④

リセットする里子とまだ夢見る貫也

ある日、貫也は里子と働く料理屋を無断で休みました。

腹を立てた里子は、滝子の元へ行くと滝子の父の仕事を手伝っている貫也を見て怒りは頂点に達します。

里子は、貫也の包丁を持ち出し貫也の元へ、しかしそれを恵太に見つかってしまい、驚いた里子は階段から落ちてしまいました。

その時持っていた包丁は階段の隙間から下へ落ち、心配してくれる恵太を見て我に返った里子は何もせずに帰ります。

かつて貫也から騙された咲月は、探偵を雇って貫也の行方を探していました。

そして、騙されていたと気が付くのです。

咲月は、探偵と一緒に貫也のいる滝子の家へ向かいます。

探偵は、ヤバイ筋の人といった感じでした。

感情が抑えられなくなった咲月は、貫也を叩いても叩き足りない感じで叩き、貫也のことが大好きな恵太が、落ちていた包丁で探偵を刺してしまいます。

恵太から包丁を取りなだめる貫也。

その現場に滝子が帰ってきて、貫也は殺人未遂で逮捕されてしまいます。

貫也の殺人未遂の件で警察が里子の元を訪れますが、里子は詐欺の件かと勘違いし逃亡。

里子は、今までだまし取ったお金を返したのでした。

その後、里子は漁業で働き、一方、刑務所で調理を担当する貫也は刑務所からまだ夢を見ているのでした。

夢売るふたり を観た感想

人が闇落ちするターニングポイントがよくわかる映画です。

たらればで言えば、まず店が火事にならなかったら、貫也が浮気しなかったらこうはならなかったというのが最初だとおもいます。

そして、貫也は浮気をしたくせに里子を責めたのです。

里子のために詐欺をしていると言っていた貫也が、里子の指示の無いところで詐欺を始めてしまったことが、闇落ち最終段階の入り口でした。

二人は元々仲良しだったのに、とても残念に思います。

里子が一番傷ついたのは、最初の浮気より滝子の子どものところに嬉しそうに通っている姿をみた時でしょう。

しかし、貫也はきっと刑務所から出たら里子とやり直せると感じているように思いました。

この辺が男女の感情のズレのようで面白いです。

二人の溝はこの先埋まらないと思います。

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