監督:クリント・イーストウッド 2015年2月にワーナー・ブラザーズから配給
アメリカン・スナイパーの主要登場人物
クリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)
主人公。イラク戦争で「伝説の狙撃手」といわれた人物。
タヤ・カイル(シエナ・ミラー)
クリスの妻。 挙式直後にクリスに派兵され一人で家庭を守る。
マーク・リー(ルーク・グライムス)
ネイビー・シールズ隊員。クリスとともに任務に就く。
ビグルス(ジェイク・マクドーマン)
ネイビー・シールズ隊員。クリスとともに任務に就く。
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アメリカン・スナイパー の簡単なあらすじ
厳格な父に育てられたクリスは、米国大使館爆破事件のニュースを見たことをきっかけに入隊し、イラク戦争に4度従軍します。
クリスは、狙撃手としての能力を開花させ仲間たちから「伝説」と呼ばれるようになりますが、イラクで懸賞金をかけられ命を狙われることになります。
激戦地から帰還し除隊した後は、心の傷に苦しめられるクリスの姿がありました。
この作品は、イラク戦争で160人もの敵の排除に成功し「伝説の狙撃手」といわれたクリス・カイルの自叙伝を映画化したものです。
アメリカン・スナイパー の起承転結
【起】アメリカン・スナイパー のあらすじ①
「伝説の狙撃手」といわれたクリス・カイルは、両親のもと弟ジェフとテキサスの田舎で育ちました。
父は「人間には悪が訪れたとき身を守れない羊と、弱者を暴力で餌食にする狼と、群れを守るため圧倒的な力を駆使する番犬の三種類がいる」と言います。
さらに父は「羊など育てない、狼は厳しく罰する、だが家族は守る、弟がいじめられたらやり返してもいい」とクリスに許可を与えるのです。
その後、成長したクリスは毎週末ロデオを楽しんでいました。
ロデオ大会で優勝し彼女のもとへ向かうのですが、浮気現場に出くわし別れてしまいます。
その時、タンザニアとケニアでの米国大使館爆破事件のニュースを見て、力になりたいと新兵募集所へ行き志願します。
エリート戦士なれと特殊部隊シールズを勧められ、クリスは30歳で入隊し厳しい訓練を受けます。
射撃訓練をしていた頃、クリスはバーでタヤに出会います。
シールズの男性は、横柄で自己中で浮気性だから彼氏にはしたくないと言っていたタヤですが、クリスとの距離は縮まり結婚します。
その頃、アメリカ同時多発テロ9.11をきっかけにイラク戦争が始まっていました。
そして、挙式の直後にクリスはイラクへ派遣されるのでした。
【承】アメリカン・スナイパー のあらすじ②
スナイパーの任務は、海兵隊員を護衛することで、建物の屋上で隊員たちを監視します。
クリスは初めての任務で、対戦車手榴弾を持っていた子供と女性を撃ち抜きました。
その後も、次々と敵の侵入を阻止するクリスを仲間たちは「伝説の男、誇りだ」と健闘を称えます。
アルカイダNO.2のザルカウィを排除する任務で、海兵隊とともに行動したクリスは、避難区域で生活をしていたシャイフから、ザルカウィの仲間「虐殺者」の情報を得ます。
情報提供と引き換えに金銭の要求に応えたクリスたちは、シャイフのもとへ向かう途中襲撃され、シャイフの息子は虐殺者に捕まり生きたままドリルで頭をぶち抜かれ死亡。
シャイフは射殺されてしまいました。
任務を終え帰還したクリスは、タヤの出産に立ち会うことができ育児が始まります。
しかし、クリスは敵のスナイパーで元オリンピック狙撃選手のムスタファが、米兵殺害を録画して売っている映像を見ているなど様子がおかしく、タヤは息子をクリスの腕に抱かせ「心も戻ってきてほしい」と訴えるのです。
タヤの心配をよそにクリスは2回目の派遣先へ向かい、そこでクリスは昇進し、自分に18万ドルの懸賞金がかけられていることを知ります。
虐殺者が潜んでいるらしいレストランを見張るため周辺の民家に潜入したクリスは、家主の男の肘が赤くなっていることに気づきます。
ずっと肘を床か何かにつけていた跡です。
大量の銃器も発見し家主にレストランへ向かわせ激しい銃撃戦が始まります。
銃撃戦が終わった後、家主を殺したことで群衆が暴徒と化し、クリスたちは慌てて移動するのでした。
【転】アメリカン・スナイパー のあらすじ③
クリスが2回目の派遣から帰還して間もなく、タヤは二人目の女の子を出産します。
面会へ行ったクリスは、泣く娘をなかなか見てもらえず看護師に向かって怒鳴ります。
タヤは「目の前にクリスはいるのに心はよそにいっている、戦争で影響を受けない人はいない、いつか心を蝕まれる」と悲しそうにしていました。
3回目の派遣で戦地に戻ったクリスは、虐殺者の手下を追跡中に発砲され町で戦闘が始まります。
クリスとビグルスは車を降り建物の屋上へと向かいます。
ビグルスは、自分の銃に当たった敵の弾が跳ね返って顔に当たり、衛生兵に運ばれてしまいます。
その後、敵の拠点の情報が入りクリスたちも現場へ行きます。
目的の建物の中、部屋を出たところで、今度はマークが撃たれて死亡してしまいました。
クリスは帰還しマークの葬儀に出席します。
母親がマークが死ぬ2週間前に受け取ったマークからの手紙を読み上げます。
この手紙をどう思ったかとタヤに問われたクリスは「マークはあの手紙のせいで死んだ、戦う意欲をなくし高いツケを払ったんだ」と言い放ちました。
一命を取り留めたビグルスの面会へも向かいます。
ビグルスはクリスに「戦地に戻るな、復讐はよせ」と言いますが、クリスは4回目の派遣先、激戦のサドルシティへと向かうのです。
そこで、ビグルスが手術中に死んだことを聞かされたのでした。
【結】アメリカン・スナイパー のあらすじ④
指令部は敵陣営内に防護壁を作りアルカイダを封じ込める作戦を展開しています。
壁を作る建設要因が狙撃されるので、敵の狙撃手を排除するため、クリスたちは敵陣営まで搬送されます。
狙撃手ムスタファの至近距離へ近づき、敵だらけの建物の屋上へ行き位置につきます。
「1920メートル先に何か見える、標的を捕捉した」とクリスは言います。
「そんな距離撃てるはずがない、20分で即応隊が来るから撃つな」とチームは言いますが「殺せるなら撃て」とも言いました。
クリスの放った弾はムスタファに命中しました。
しかし敵に気づかれ戦闘が始まり、全方向から敵が向かって来ます。
その時、クリスは震えながらタヤに「もう辞める、うちに帰る」と電話をするのです。
砂嵐で視界が見えにくいのを利用し建物から脱出したクリスは、撃たれながらも必死に走り、なんとか車に乗り込みました。
帰還し除隊したクリスは、何も映っていないテレビを見つめたままタヤの声が届かなかったり、子供と戯れている犬に殴りかかったりと、日常生活に支障が出始めていました。
医師の勧めで退役軍人と交流を始め、息子とハンティングを楽しんだり、娘と馬を見に行ったりと、心を取り戻していきます。
ある日、2時間ほど射撃場に行くといい、元海兵隊員に同行します。
しかし、力になろうとしていたその元海兵隊員に射殺され、クリスが戻ってくることはありませんでした。
アメリカン・スナイパー を観た感想
まず初めに感じたことは、クリス・カイルという人物は純粋な人だということです。
純粋に祖国は自分が守るという信念を持っていて使命感さえ感じられます。
自身に懸賞金をかけられ命を狙われているのに何度も戦地に戻るクリスの姿もまた、純粋に父の教えを守り番犬になろうとしていたのではないかと思いました。
映画は目を覆いたくなるようなシーンが続きます。
クリスが戦場からタヤに電話をするシーンも何回かあります。
買い物帰りに携帯が鳴り応答したら、怒号と銃声しか聞こえないというシーンは、タヤの苦しみが伝わります。
戦争を知らずに日常生活を送っている私たちもの世界が、電話一本で戦地につながるという状況は、シャイフの息子がドリルで殺されたシーンよりも恐怖を感じました。
マークが戦争と死と名誉について綴った手紙に「手紙のせいで死んだ」と言い放ったクリスにも恐怖を感じましたが、心が蝕まれていく自分を鼓舞していたのだと思います。
激戦のサドルシティから帰還し除隊して自分を取り戻したクリスが、このような形で最期を迎えたのはショックでした。
クリスがどのような生涯を送ったのか、音がないエンドロールまで見届けて欲しいと思いました。
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