「聲の形」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|山田尚子

聲の形 映画

監督:山田尚子 2016年9月に松竹から配給

聲の形の主要登場人物

石田将也(入野自由)
小学生の頃は典型的な悪ガキタイプだったが、転校生の西宮硝子へのいじめをきっかけにクラスメイトとの関係性が崩れ、人の顔をまともに見ることができなくなる。そのため中学・高校では目立たない存在となっている。

西宮硝子(早見沙織)
生まれつき耳に障害があり、補聴器を付けていても人の声はほとんど聞き取れない。発話も不完全なため手話や筆談で会話しようとするが、うまくいかず、すぐに謝ったり、愛想笑いでその場をしのごうとすることが多い。

西宮結弦(悠木碧)
硝子の妹。ボーイッシュな服装で一人称は「オレ」のため、男の子に見られることが多いが、これは硝子を守るために意図してやっている。

永束友宏(小野賢章)
将也のクラスメイト。不良にからまれたところを将也に助けられたことから仲良くなり、以降、将也と行動を共にし、何かと世話を焼く。

聲の形 の簡単なあらすじ

石田将也のクラスに耳が聞こえない西宮硝子が転校してきます。

退屈しのぎにやっていた硝子へのいたずらは次第にエスカレートし、問題になります。

これをきっかけに人を顔をまともに見ることができなくなった将也は中学・高校では目立たない存在となり、自殺を考えるようになります。

死ぬまでにやっておくべきことをすべて終え、最後に硝子に謝罪をすべく、手話サークルを訪ねます。

再会した硝子に思わず手話で「友達になりたい」と伝えますが・・・。

聲の形 の起承転結

【起】聲の形 のあらすじ①

二人の出会い

高校3年生の石田将也は自殺を考えています。

アルバイト代と自分の持ち物の売却金でかつて母が出してくれた大金を返し、カレンダーに×をつけ、橋の上から飛び降りようとしますが断念します。

死ぬ前にやっておくべきことを改めて考えた将也は、最後に小学校時代のクラスメート硝子に謝罪するため、彼女が通う手話サークルを訪ねます。

再会した硝子に思わず手話で「友達になりたい」と伝えてしまいます。

将也の言葉に驚き、硝子はその場から逃げ出してしまいます。

時はさかのぼり小学校時代、将也は典型的な悪ガキで「退屈は最大の敵」と友人たちと度胸試しと称して川に飛び込んだり、悪ふざけを繰り返していましたが、小学6年生になり友人たちは塾へ行ったり、危険なことはやめようと言い出したりするようになり、将也は退屈を持て余すようになっていました。

そこへ西宮硝子が転校してきて、自分は耳が聞こえない、筆談用ノートで仲良くなりたいと自己紹介します。

【承】聲の形 のあらすじ②

いじめから孤立へ

耳が聞こえない硝子に当初は優しく接していたクラスメイトでしたが、次第に面倒さを感じ始めます。

また、手話を覚えて硝子をサポートすると言っていた佐原みよこが陰口の対象となり、不登校になってしまいます。

そんな硝子を退屈しのぎにもってこいと考えた将也はいろいろないたずらを仕掛けるようになります。

背後から大声で驚かす、黒板に悪口を書く、国語の時間に硝子の発話をまねて音読するなど、クラスメイトもクスクス笑っています。

「やめなよ〜」と口では言っているものの本気で止める者はおらず、次第にいたずらはエスカレートし、筆談用ノートを池に投げ入れる、補聴器を壊す・投げ捨てるなど、いじめのレベルにまで達してしまいます。

高価な補聴器が何度も紛失・故障していることが問題となり、学級会が開かれます。

そこで将也は担任からもクラスメイトからも硝子へのいじめを一人でやっていたとみなされ、クラスから孤立します。

将也の母は補聴器代170万円を用意し、硝子の母に謝罪に行きます。

その後、分かり合えないまま硝子は転校し、いじめの対象は将也へと変わっていきます。

中学に入っても小学校のクラスメイトの吹聴で将也には友達ができず、やがて将也はまともに人の顔を見ることができなくなり、人の顔に×印が見えるようになります。

誰ともコミュニケーションをとらないまま、高校3年生になった将也は自殺を考えるようになります。

その前に母に補聴器代170万円を返すべくアルバイトに精を出し、硝子に一言謝ろうと手話を覚え、彼女が通う手話サークルを訪ねます。

【転】聲の形 のあらすじ③

例)再会と交流

手話サークルで再会した硝子に将也は思わず手話で「友達になりたい」と伝えてしまいます。

将也の言葉に驚き、その場から逃げ出してしまった硝子でしたが、自分のために手話を覚えてくれた将也を受け入れます。

後日、将也は再び手話サークルを訪ねますが、「硝子の彼氏」と名乗る結弦(実は硝子の妹)に阻まれてしまいます。

将也は不良にからまれたところを助けたことから、同じクラスの永束友宏と仲良くなります。

情に厚く、ややお節介な永束でしたが、そのおかげで将也は結弦を突破し、硝子と話ができるようになります。

将也を快く思わない結弦は、池に落ちた筆談用ノートを拾おうと池に飛び込んだ将也の写真をネットに投稿します。

それが原因で謹慎処分になった将也でしたが、謹慎中に結弦と偶然再会し、距離を縮めることになります。

硝子のためにできることを考えていた将也は、小学校時代に仲良くしていた佐原みよこに会いたいと言う硝子を佐原の高校まで連れていきます。

久々に会い、談笑する硝子と佐原を見て、将也は複雑な気持ちになります。

一方、硝子は将也への想いが募り、「好き」と伝えようとしますが、発話がままならず「月?ああ、きれいだね」と返されてしまいます。

佐原との再会をきっかけに将也は小学校時代のクラスメイト、植野や新井とも交流するようになり、高校のクラスメイト真柴からも声をかけられるようになります。

人との交流が増え、人の顔に見えていた×印が少し取れた将也でしたが、小学校時代を知る新井がかつてのいじめのことを皆に話しているのではと疑心暗鬼になり、新井や植野の言動が原因で再び心を閉ざしてしまいます。

新井、植野、佐原の痛いところを突き、永束さえも拒絶してしまいます。

【結】聲の形 のあらすじ④

生きるのを手伝ってほしい

硝子と結弦だけには変わらず接していた将也でしたが、空元気に見えます。

夏休みが始まり、「明日も遊ぼう」と言う将也を硝子と結弦は家に来るように言います。

その日は晶子の母の誕生日、三人でケーキを作ります。

将也が家にいることに晶子の母は驚きますが、一緒にケーキを食べ、皆で花火大会を見に行く約束もします。

花火大会当日、将也・硝子・結弦・硝子の母は一緒に花火を見ます。

結弦と硝子の母が買い物に行っている間、ぎこちなく会話しながら花火を見る将也と硝子。

途中で「勉強があるから帰る」と言う硝子に「じゃあ、また」と手話で伝える将也でしたが、硝子はいつもの「またね」ではなく、「ありがとう」という手話をしていました。

買い物から戻った結弦に「カメラを取ってきて」と頼まれた将也は、硝子の家に向かいます。

玄関を開け、ベランダに佇む硝子を見た将也は、硝子が飛び降りようとしていることに気付きます。

慌てて硝子の手をつかんだ将也でしたが、硝子を引っ張り上げた反動で自分が落ちてしまいます。

一命はとりとめた将也は昏睡状態が続きます。

その間に植野は硝子に「あんたのせいだ」と詰め寄り、つきっきりで看病します。

硝子は愛想笑いで逃げるのをやめることを決めます。

ある夜、将也は意識を取り戻し、病院着のままいつも硝子と会っていた橋へ向かいます。

そこには将也の夢を見た硝子も来ていて「ごめんなさい」と繰り返し言います。

そんな硝子に将也は「生きるのを手伝ってほしい」と伝えます。

退院した将也は硝子と高校の文化祭に行きます。

永束が泣きながらやってきて仲直りし、新井や真柴とも話ができ、植野と佐原とも何とかなりそうです。

皆で文化祭を回り、涙ぐむ将也。

人の顔には相変わらず×印が見えていましたが、硝子の飛び降り自殺を助けるときに「全部見る、全部聞く」と決めたことを思い出し、顔を上げると、次第に×印が取れ、紙吹雪がキラキラと舞っているのが見えました。

聲の形 を観た感想

単なるいじめの解決や耳が聞こえないことをテーマにしているのではなく、これをきっかけに人とのコミュニケーションの難しさ、人の心のはかなさを描いていて、とても観応えのある映画でした。

誰にでも起こりえるようないじめの展開、ちょっとしたボタンの掛け違いで崩れていく友人との関係性、いじめる側からいじめられる側に変わってしまった主人公の罪悪感、それに気付き戸惑う母の心情、観ていて胸が締め付けられるシーンがいくつもありました。

登場人物にそれぞれの事情があり、足りない自分を責め、もがき、何とか前に進もうとする姿に「生きるのを手伝ってほしい」という将也の言葉がぴったりだと思いました。

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