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丹治郎の夢に現れた緑壱
何百回と説明を受ける事に加えて”正解の形”を一度見せてもらえると格段に理解度が高まると丹次郎は夢を見ながら感じていました。
手首の角度、足の運び、呼吸の感覚などほんの僅かだけれど縁壱と異なる点を知り、丹次郎は自分の無駄な動きに気がつきます。
丹次郎が夢で見た縁壱は物静かで素朴な人でした。すやこが剣の型を見たいとせがみ、優しい縁壱は快く披露します。炭吉は縁壱の動きを取りこぼす事なく瞳に焼き付けました。縁壱の日の呼吸の型は息を忘れるほどきれいです。縁壱が剣を振るうその姿は人というより精霊のようでした。日の呼吸が後に”神楽(かぐら)”として受け継がれていった理由がよく分かります。すやこと子供がはしゃいで喜ぶと、縁壱は照れくさそうに俯きました。
炭吉は縁壱との別れ際にまた遊びに来てほしいと伝えますが、縁壱はそれに答えず耳飾りを差し出しました。丹次郎には縁壱がもうここに来るつもりないように見えました。遠ざかる縁壱の後ろ姿はもの悲しく、炭吉は見送りながら涙を流します。
炭吉は離れていく縁壱に向かって、胸に込み上げた思いをぶつけます。あなたは価値のない人なんかじゃない、何も為せなかった等と思わないで欲しい、俺がそんな事誰にも言わせない、縁壱に救われた命でこの耳飾りと日の呼吸を後世に伝える事を約束すると、炭吉は叫びました。縁壱は呼吸を乱した炭吉を見つめます。一拍置いて、縁壱は炭吉に向かって優しく微笑み、『ありがとう』と答えました。
その光景を傍観する丹次郎は縁壱の『ありがとう』の言葉に呼応するように、『俺の方こそ俺たちの祖先を助けてくれてありがとう』と感謝します。縁壱が信じて逃した珠世の協力があって無惨を追い詰める事ができました。縁壱が見せてくれた日の呼吸で丹次郎は無惨と戦う事が出来ます。何百年も経過しているのに、日の呼吸の型は驚く程正確に伝わっていました。
十二の型は円舞と炎舞で円環を成す
縁壱が見せた日の呼吸の型は十二個です。丹次郎は炎柱が聞いた十三個目の型について、ずっと考えていました。十二個の型の中に音の同じ『円舞(えんぶ)』と『炎舞(えんぶ)』がある事、父の『正しい呼吸ができれば丹次郎もずっと舞える』という言葉が気にかかっています。丹次郎の父は夜明けまでヒノカミ神楽を舞う事ができました。丹次郎は無惨の体の造りを見た事で、十二の型は繰り返す事で円環を成し、『円舞(えんぶ)』と『炎舞(えんぶ)』で繋がると確信します。そしてそれが恐らく十三個目の型だと推測しました。
夜明けまで十二の型を繋ぎ続ける
夜明けまでこの十三個目の型で無惨の脳と心臓を斬り続ける事を思うと、丹次郎は途方もなく感じます。自分は地獄を見る事になるだろうと静かに思いました。縁壱に出来なかった事を縁壱や父のような才覚がない自分に出来るだろうかと、丹次郎に不安が押し寄せます。縁壱が自信を失った理由が、丹次郎にもよく分かりました。それでも丹次郎は”今自分にできることを精一杯やる”と決めて、『心を燃やせ 負けるな 折れるな』と自分を奮い立たせます。丹次郎は刀を力強く握り、再び無惨とぶつかり合いました。辺りに無惨の管と丹次郎の刀が激しくぶつかり合う音が鳴り響きます。
襲いかかってくる丹次郎に無惨は縁壱の亡霊を見て、忌々しさを覚えます。一方の丹次郎には他の柱達が負かされた理由が見えてきました。背中の九本の管と両腕、それを上回る速度の管を腿から八本生やしている無惨の身体。それは変幻自在で固定された姿で認識すると思わぬ攻撃を受けてしまうのでした。
丹次郎は『円舞 烈日紅鏡 火車(えんぶ れつじつこうきょう かしゃ)』を繰り出し、やはりそれぞれの型が繋がると体感します。そして今度は十二の型全てを繋ぐと決心しました。第193話に続きます。
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