ふがいない僕は空を見た(窪美澄)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

ふがいない僕は空を見た(窪美澄)

【ネタバレ有り】ふがいない僕は空を見た のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:窪美澄 2010年7月に新潮社から出版

ふがいない僕は空を見たの主要登場人物

斉藤卓巳(さいとうたくみ)
男子高校生。

岡本里美(おかもとさとみ)
主婦。5年前に夫・慶一郎と結婚。

福田良太(ふくだりょうた)
卓巳の友人で同級生。

野村千栄(のむらちえ)
卓巳の担任教諭。

斉藤寿美子(さいとうすみこ)
卓巳の母。助産師。

ふがいない僕は空を見た の簡単なあらすじ

コミケで知り合った主婦との不倫に溺れる男子高校生、夫の母親から不妊治療を強要されている女性、団地で祖母とふたりで極貧生活に耐える少年。バラバラに見えていた3人の男女の運命が、盗撮動画のばらまき事件から次第に交錯していきます。ひとつの生命の誕生によって、それぞれが新たなる旅立ちを迎えることになるのでした。

ふがいない僕は空を見た の起承転結

【起】ふがいない僕は空を見た のあらすじ①

ふたりだけの秘密のはずが

高校生の斉藤卓巳は友達の付き合いで参加したコミケのイベントで、12歳年上の既婚女性・あんずと知り合いました。

それ以来学校が終わると川向かいにある彼女のマンションを訪れて、アニメキャラに扮して情事に耽るのが放課後のスケジュールです。

夏休みに入ると同じ学校の女子生徒から告白されたために、これまでのあんずとの関係にけじめを付けることを決意します。

あんずの方も夫とアメリカに行くことが決まったために、この時が最後の密会となりそれ以降は会うことはありません。

ネットの掲示板で卓巳とあんずを隠し撮りした動画が出回るようになったのは、夏休みも残り僅かとなった8月の後半くらいからです。

卓巳はショックからそれまで頑張っていたプールでの監視員のアルバイトも欠勤するようになり、クラスメイトや新しく出来た彼女からのメールにも答えなくなります。

新学期が始まる頃には、自分の部屋から一歩も出ることができなくなってしまうのでした。

【承】ふがいない僕は空を見た のあらすじ②

孫の顔が見たいあまりに

岡本里美は市内を巡回する小型バスに乗り込んで、いつものように隣町のレディースクリニックに向かっています。

結婚して5年目に突入しましたが、夫の慶一郎との間には体質的な問題もあってか中々子供を授かりません。

お節介焼きの慶一郎の母・マチコに、しつこく勧められたのがこのクリニックでした。

それ以来様々な検査や不妊治療を言われるままに続けることになり、里美に無断で人工授精の手続きまで進めるほどの入れ込みようです。

マザコン夫と威圧的な義母に挟まれた中で、大好きなアニメキャラクターにコスプレして「あんず」に成りきることだけが里美の慰めでした。

コミケで高校生の斉藤くんに声をかけて自宅にまで連れ込んだのも、現実逃避のひとつでしかありません。

間もなく慶一郎が部屋に仕掛けた隠しカメラによって、里美の浮気が露見します。

土下座までして離婚を懇願しますが、里美はアメリカにまで連れていかれて体外受精を受けさせられるのでした。

【転】ふがいない僕は空を見た のあらすじ③

極貧団地から抜け出すための武器

福田良太は朝早くからの新聞配達と夜遅くまでのコンビニバイトに明け暮れながら、認知症の祖母と団地で暮らしていました。

夏休み期間には昼間のプール監視員の仕事も始めたために、宿題や受験勉強どころではありません。

そんな福田に救いの手を差し伸べてくれたのは、バイト先の先輩・田岡さんです。

元予備校の講師らしく休憩時間には自作のプリントを使って学習指導するほど面倒見が良くて、実家は病院を経営するほど裕福で症状が悪化した祖母の受け入れ先まで紹介してくれます。

その一方では田岡さんの周辺には、何かにつけて不吉な噂が絶えません。

予備校で働いている時に男子児童の裸の写真を集めていたとか、高級マンションで独り暮らしをしながら同性のパートナーを探しているとか。

田岡さんが強制わいせつの容疑で逮捕されたのは、祖母が入院してから1週間後のことです。

福田は団地を見下ろす高台に立ち、死ぬほど勉強して大学に入りこの町から出ていくことを誓うのでした。

【結】ふがいない僕は空を見た のあらすじ④

新しくうまれるもの

卓巳の不登校が続いていることを心配した担任の野村千栄が、家庭訪問にやってきました。

応対に出た卓巳の母・寿美子は、助産師ならではの経験と洞察力で彼女が妊娠していることを見抜きます。

交際相手にも両親にも打ち明けることができずに既に7か月に入っているために、野村先生は寿美子の助産院に入院して出産するしかありません。

他にも受け持ちの妊婦を抱えて大忙しな寿美子と対照的に、卓巳は相変わらず自室に引きこもったままです。

バイトの合間を縫って様子を見に来た福田とは、何を話すわけでもなく一緒にゲームをしたりマンガを読んだりします。

ある日の夜に姿を消した卓巳を探して、寿美子が向かった先は山の中にある神社です。

境内で泣き叫ぶ息子に対して、母は拝殿の前で手を合わせて神さまにお祈りを捧げます。

この日を境にして卓巳は学校に行くようになり、予定日を控えた野村先生と田岡さんのお陰で成績アップした福田と共に授業の遅れを取り戻すのでした。

ふがいない僕は空を見た を読んだ読書感想

高校生から主婦までの幅広い世代の恋愛事情と出産にまつわるエピソードが、赤裸々に綴られていて衝撃的でした。

ネット社会ならではの危険性や、人と人との結びつきが薄れていく今の時代の流れについても考えさせられます。

主人公・斉藤卓巳の母親・寿美子が、やたらと自然分娩にこだわる助産院を経営しているのも意味深です。

ひとりの人を愛することによって、他の誰かを無意識のうちに傷つけてしまう厄介さや難しさを痛感します。

クライマックスでの新たな生命の誕生への予感が、全てを許すような慈愛に満ち溢れていて心を揺さぶられました。

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