映画「Village」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|藤井道人

映画「Village」

監督:藤井道人 2023年4月にKADOKAWA/スターサンズから配給

Villageの主要登場人物

片山優(横浜流星)
本作の主人公。父親が過去に起こしたある事件がきっかけで、村人達から疎まれている。ごみ処理施設で働きながら、ギャンブル狂の母親とゴミ屋敷で暮らしている。

中井美咲(黒木華)
優の幼馴染。東京で就職していたが、突然霞門村に戻って来て、優の自立を応援する。

大橋修作(古田新太)
霞門村の村長。村の繁栄のことだけを考えていて、そのためならどんな犠牲も厭わない。

大橋光吉(中村獅童)
修作の弟。霞門村にいた頃は、優や美咲に能を教えていたが、現在は村を出て刑事をしている。

大橋透(一ノ瀬ワタル)
修作の息子。ごみ処理施設で働いている。美咲に好意を持っていて、優を目の敵にしている。

Village の簡単なあらすじ

この作品は、『新聞記者』『余命10年』など、人気作品を多数手がける藤井道人監督が手掛けるヒューマンサスペンスです。

村という閉鎖的な空間の中で、父親の因縁や周囲からの圧力、ギャンブル狂で借金を繰り返す母親に苦しめられながら、ごみと切り離すことができないどん底の生活を続けている優の光と闇を赤裸々に描いています。

Village の起承転結

【起】Village のあらすじ①

出口の見えないどん底生活

のどかな田園風景が広がる霞門村の一角に、大規模なごみ処理施設がありました。

そこで働いている片山優は、過去に父親が起こしたある事件がきっかけで、村人達から疎まれていました。

ごみ処理施設では、一部の作業員から殴る蹴るの暴行を受け、周囲の作業員達はその様子を面白がって眺めていました。

最近この施設にやって来たという筧龍太は、そんな優の様子を見て「よく耐えていられるな」とある意味感心していましたが、優はもう暴力行為には慣れっこで、怒ることも抵抗することもありませんでした。

コンビニで買い物をしていると、優を見て思わず顔をしかめ、ひそひそと話し合う村人達がいました。

優はそんな人達には目もくれず、荒い運転で自宅へと戻りました。

家ではパチンコ三昧の母・片山君枝が優の帰りを待っていて、優が食料を手渡すと、お金を前借りさせて欲しいと頼んできました。

優は「先週渡したばかりだ」と拒否しようとしましたが、君枝に「それが親に対する態度か」と逆ギレされてしまい、仕方なくお金を渡しました。

優が自室に戻ると、そこはごみが溢れ、ほとんど足の踏み場もない状態でした。

母親の借金を返すためにごみ処理施設で働いていた彼は、日々の生活だけで手いっぱいで、自分の容姿や住環境にまで気が回らないほど疲れ切っていました。

さらに、施設の給料だけでは足りない優は、時々ヤクザの丸岡勝から呼び出されては、夜中にこっそりごみの不法投棄を手伝うという闇バイトも行っていました。

村長の息子・透は、そんな優や他の作業員達を見下し、あざ笑うようにごみを埋め立てている様子を写真に収めていました。

そんな中、ある日優は丸岡から、君枝が優に内緒でさらに300万円の借金を増やしていたことを聞かされました。

働いても働いても、借金は減るどころか逆に増えて行くという負のループに愕然とした優は、自室の布団に顔を埋め、行き場のない怒りに嗚咽を漏らすのでした。

【承】Village のあらすじ②

見え始めた希望の光

ある日、優の幼馴染である中井美咲が、就職先の東京から戻ってきました。

彼女は幼い頃から優と仲が良く、一緒に村長の弟・大橋光吉から能を教わったりしていました。

その当時のビデオ映像を見ながら、美咲は楽しかった過去を思い出していました。

実は美咲は、仕事仲間と反りが合わず、生きている意味が見いだせないと心を病んで、村に戻って来たのでした。

自分と同じように陰鬱な雰囲気を漂わせている優が心配になった美咲は、彼の現状を聞くと、能面を手渡し、「この能面には心を静める力がある」と告げました。

そして、その能面に関係する演目「邯鄲」について語り始めました。

その内容は、ある男がある日突然目を覚ますと、王様になっていて、数十年間好き放題に人生を謳歌したが、それは実は全て夢だったというものでした。

「自分はもう能はやらない」と拒絶しようとしていた優でしたが、その話を聞き、能面をもらって帰ることにしました。

その後、村長・大橋修作は村おこしのために、ごみ処理施設の工場見学ツアーを企画しました。

美咲はその案内役に優を推薦しましたが、村人達は大反対しました。

というのも、優の父親はかつてごみ処理施設建設の反対運動の中心人物で、建設が決定的になると村の講堂に火を放ち、数人を巻き添えにして自殺したのでした。

優は「殺人犯の息子」だと罵られ、自分自身も村の顔にはふさわしくないと乗り気ではありませんでしたが、村長と美咲はどんどん話を進めてしまいました。

ですが、いざ身なりを整えた優は人当たりもよく、ツアーに参加した子供達にも好評で、村にはテレビや雑誌の取材の依頼が増えて行きました。

それにつれて、村の知名度も上がり、観光客も爆発的に増えました。

村人達も掌を返したように優に好意的になりましたが、施設の人間は未だに優のことを快く思っていませんでした。

優の代わりに龍太が暴力を受けるようになりましたが、優は何もできませんでした。

【転】Village のあらすじ③

露呈した村の闇

すっかり村の顔になった優は、村長から闇バイトも辞めていいと言われ、心から喜んでいました。

家の中もすっかり綺麗になり、君枝もギャンブル漬けから抜け出し、明るい表情を見せていました。

施設で働くようになった美咲の弟・恵一も、優を自分のヒーローだと言い、尊敬のまなざしを向けていました。

施設の作業員達も、村が潤うにつれ、優への当たりも柔らかくなってきましたが、透だけは優を毛嫌いしていました。

美咲と一緒に過ごす時間が増えた優は、彼女と愛し合うようになりましたが、美咲に密かに想いを寄せていた透は、ある夜、突然美咲の実家に押しかけ、彼女を襲おうとしました。

そこに駆けつけた優が彼女を守ろうと透の前に立ちはだかりましたが、彼は力任せに優を投げ飛ばしたり、殴る蹴るの暴行を加えました。

翌朝、優は顔を腫らしていたものの、何事もなかったかのようにテレビの取材に応じました。

その日から透は行方不明になっていましたが、元々素行が悪かった人間のことなど、周囲はほとんど気にしていませんでした。

そんな中、恵一は偶然、違法な産業廃棄物が埋められていることに気が付き、光吉に報告しました。

そして、村長もまた、村の地質が有害物質の基準値を超えているという報告を受けており、優に「何とかしろ」と詰め寄りました。

困った優が現場に駆け付けると、ちょうど闇バイトの最中だった龍太達が、警察に連行されるところでした。

ここを辞めて実家に戻ると言っていた龍太の寂しそうな表情を見た優は胸が痛みましたが、「自分は何も知らない」と光吉にシラを切りました。

警察は掘り起こし作業を始めましたが、その途中で、土の中から行方不明になっていた透の遺体が発見されました。

透のスマホの中身を確認していた光吉は、優が闇バイトをしていた時の写真や、美咲が透に襲われそうになった時に優が駆けつけた動画を見て、慌てて村へと向かうのでした。

【結】Village のあらすじ④

再び深い闇の底へ

透の死を知った村長は、優を呼び出し、「今まで散々透の尻拭いをしてきたが、ようやく肩の荷が下りた」と思わず本音を漏らしました。

あの日、優が殺されるかもしれないと怖くなった美咲は、とっさに傍にあった剪定鋏で透の首を刺し、殺してしまったのでした。

すぐにふたりは透の遺体を施設の中に埋め、隠蔽しました。

村長はそのことに気づいていましたが、優を責めようとはしませんでした。

ですが、この事実がバレないよう、優に上手く取り計らうよう要求してきました。

「これまでに築いてきたものが全てなくなる」と脅された優は、恵一に透がヤクザに拉致されたと嘘の証言をするよう迫りました。

ですが、恵一は「嘘をつくのは嫌だ」と拒絶し、無理やり優の車から降りようとしました。

慌てた優はハンドル操作を誤り、車は近くの木に激突しました。

恵一は頭から血を流してぐったりしており、気が動転していた優は彼に謝ることしかできませんでした。

恵一は一命を取り留めましたが、優も美咲も責任を感じていました。

美咲は村を出る決意をし、優は「守れなくてごめんなさい」と涙を流しながら謝りました。

村長はこんな状況でさえ、まだ村の評判を気にしており、「美咲に泥をかぶってもらおう」と優に提案しました。

とうとう堪忍袋の緒が切れた優は、「あんた、ゴミだな」と吐き捨てるように言い、村長の首を力一杯絞めると、しばらくして彼は動かなくなりました。

村長の屋敷には、彼の母親・ふみもいましたが、優は構わず家に火を放ちました。

そして、優が家から出て来ると、偶然近くに来ていた光吉と出くわしました。

燃え盛る屋敷を見て、光吉は驚きましたが、優は何も言わずにその場に立ち尽くしていたのでした。

Village を観た感想

”自分の利益のために、人を犠牲にするのは最低だ”そう頭ではわかっていても、一度甘い汁を吸ってしまうと、そんなモラルは一気に吹き飛んでしまいます。

優は常に周囲のエゴのはけ口にされてきましたが、朱に交われば赤くなるというように、立場が変わると優自身も無意識にそんな悪意ある人間に同調してしまったように見えました。

霞門村の人間は、みんな偏見に囚われて、完全に思考停止している無気力状態で、その内面は能面をつけて行進する姿に象徴されています。

本当は嫌なことは嫌だと思っていたはずなのに、村長の圧力が強くなればなるほど、未来に絶望し、自分達のもやもやを最後まで抵抗し続けた優の父親に対する嫌悪感にすり替えて、何とかやり過ごしているのかもしれません。

こんな闇しか生まれないような村ならなくなってしまえばいいという結論に至った優の気持ちもよくわかりました。

ここから村がどういう方向に向かうのか、その先は想像するしかありませんが、遠い世界のようで共感できる部分もあり、見終わった後に自分の心にまでもやがかかったような気分になりました。

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