初恋(中原みすず)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

初恋

【ネタバレ有り】初恋 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:中原みすず 2002年2月にリトルモアから出版

初恋の主要登場人物

中原みすず(なかはらみすず)
女子高校生。三億円事件の実行犯。

岸川貴志(きしかわたかし)
三億円事件の発案者。「岸」の愛称で呼ばれる東大生。

亮(りょう)
みすずの兄。早稲田大学を除籍処分になる。

初恋 の簡単なあらすじ

1966年の6月、独りぼっちの女子高生・中原みすずは兄から受け取ったマッチに記されていた住所を頼りに新宿のジャズ喫茶にたどり着きました。そこでの不思議な出会いは、1968年12月の府中で起きる事件へと繋がっていくでした。

初恋 の起承転結

【起】初恋 のあらすじ①

新宿とジャズの喧騒

4歳の頃に父親を亡くして母親は出奔し、女子高校生の中原みすずは親戚中をたらい回しにされていました。

ある時に幼い頃に生き別れになった兄の亮を訪ねて、新宿のジャズ喫茶「B」を訪れます。

学生運動に熱中するもの、小説家や俳優を目指すもの、喧嘩に明け暮れるもの。

若者たちで賑わうこの店の中でも、亮はみんなから憧れられているボスです。

学校にも身を寄せている叔父夫婦の家にも居場所がなかったみすずにとって、Bで出会った仲間たちと過ごす時間が唯一無二の喜びへと変わっていきます。

ガサツなメンバーの中でも上品な顔立ちと佇まいを見せているのは東大生であり「岸」と呼ばれている青年で、何時しかみすずは彼に心惹かれていくのでした。

【承】初恋 のあらすじ②

権力に対して知力で挑む

岸の知り合いのバイク屋さんから自動車やオートバイの乗り方を教えてもらい、無免許ながらもみすずの運転技術はみるみるうちに上達していました。

そんなある日のこと、岸から呼び出されたみすずは驚くべき計画を打ち明けられます。

大学生たちを力でねじ伏せる機動隊に反感を抱いていた岸は、頭で勝負をするつもりです。

日本信託銀行から東芝の府中工場へ運ばれる社員用のボーナスは、ジェラルミンケース3個に詰め込まれてセドリックで輸送されます。

総額3億円にも上る大金を白バイ隊員に化けて奪い去るという大胆不敵な犯行は、国家権力への挑戦です。

みすずは他の誰かに初めて必要とされたことに胸の高鳴りを感じて、犯行に加担することに決めました。

【転】初恋 のあらすじ③

雨天決行

1968年の12月10日、都内では冷たい雨が降りしきっていました。

みすずは白バイ隊員に変装して府中刑務所まで向かいますが、バイクのタイヤが泥濘に取られたりトラックの荷台から落ちてきた布がタイヤに絡まったりとトラブル続出です。

決行場所へは大幅に遅れて到着しますが、何とかターゲットのセドリックに追い付きました。

発煙筒を爆弾と勘違いした銀行員を車外へと追い出し、車を岸との合流地点へ移動させます。

ジェラルミンケースの大金を持ち去った岸は、しばらくBにも立ち寄らないようにとみすずに忠告をしました。

事件はたちまち日本全国で話題となって、今や三億円事件の犯人はヒーロー扱いです。

みすずは世の中の大騒ぎを尻目に、静かに受験勉強を続けます。

【結】初恋 のあらすじ④

心の傷に時効はない

無事に大学受験に合格して本郷で独り暮らしを始めたみすずの下に舞い込んできたのは、Bから姿を消した岸からの手紙です。

三億円は自身の父親であり有力な政治家に郵送して持ち主へ返還する計画でしたが、社会的な立場を重んじる父によって揉み消されてしまいました。

必ず決着をつけると記されたその一文の最後に、岸はみすずへの想いを書き足しています。

初めて会った時からみすずを愛していたこと、親友の亮の妹であるが故にその気持ちを伝えられなかったこと。

岸との秘密を守り抜くことを誓ったみすずは、たった1人で生きていくことを決意します。

Bの仲間たちの多くは事故や病気によって夭逝し、三億円事件が時効を迎えた後も岸は海外を放浪し続けていくのでした。

初恋 を読んだ読書感想

誰しもが知る昭和の完全犯罪の真実が、当時はまだ18歳だった女子高校生の口から語られていて引き込まれていきます。

孤独に生きてきたヒロインのみすずにとって心の拠り所となる、ジャズ喫茶の店内や座席の喧騒が味わい深かったです。

マイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンの薀蓄に熱くなり、自分たちのお気に入りのナンバー以外は絶対に流さないこだわりには共感出来ました。

初めて愛した謎めいた青年に心惹かれていくうちに、何時しか歴史的な事件へと巻き込まれていく展開がスリリングです。

綿密に練り上げていく計画や決行当日の鮮やかな犯行手口よりも、青春時代の思い出として偽物の白バイを走らせていくみすずの姿が心に焼き付きました。

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