監督:廣木隆一 2011年6月に角川映画から配給
軽蔑(2011)の主要登場人物
二宮一彦(高良健吾)
主人公。「カズ」の愛称で地元では人気者。裕福な家で甘やかされて育った。
矢木真知子(鈴木杏)
天涯孤独のヌードダンサー。恋愛では五分・五分の関係を大切にする。
二宮一幸(小林薫)
一彦の父。家賃収入が潤沢にあるために働いていない。
伊藤(村上淳)
歌舞伎町で幅を利かせる極道。同郷のよしみで一彦を実の弟のようにかわいがる。
山畑万里(大森南朋)
強欲な闇金業者。望むものは力ずくで手に入れる。
軽蔑(2011) の簡単なあらすじ
ギャンブルで作った貸しをチャラにしてもらうために歌舞伎町で大暴れをした二宮一彦は、そのまま踊り子の矢木真知子と故郷へ高飛びします。
地方ならではの風習や息苦しさに違和感を覚えた真知子は東京へ帰り、ひとりになった一彦の生活は荒んでいく一方です。
真知子が一彦のもとに駆け付けた時には、借金取りとのトラブルが原因で殺人を犯した揚げ句に重傷を負っていたのでした。
軽蔑(2011) の起承転結
【起】軽蔑(2011) のあらすじ①
兄貴分の伊藤と一緒に東京に出てきた二宮一彦ですが、野球賭博の負けが600万円をこえて返せる当てがありません。
暴力団の幹部にまで出世した伊藤に泣き付くと、新宿のトップレスバー「ニュー・ワールド」の営業を妨害するブラックバイトを紹介してくれました。
同じような境遇の若者たちを引き連れてやって来た一彦が暴れていると、この店のナンバーワン・ダンサーの矢木真知子の姿を目撃します。
そのまま真知子を連れ去って車に乗せた一彦が東名高速道路を走り続けると、たどり着いた先は和歌山県新宮市です。
一彦の父親・一幸はここで土地や駐車場をたくさん所有しているために、鴻田のマンションにある空き部屋を用意してくれました。
一幸の弟が経営している「二宮酒販」で正社員として雇ってもらい、配達から表計算までを1から勉強していきます。
知らない町で疎外感を覚えていた真知子に「好きにしたらいい」とアドバイスをしてくれたのは、一彦が子供の頃から入り浸っていたカフェ「アルマン」のマダムです。
【承】軽蔑(2011) のあらすじ②
仕事が休みの日に実家を訪ねた一彦は真知子と籍を入れることを報告しますが、両親はあまりいい顔をしません。
飽きたら手切れ金を渡して東京へ帰せという言葉にカッとなった一彦は、台所から包丁を持ってきて刃先を一幸に向けました。
もみ合いになった際に一彦は左手にケガを負ってしまい、真知子と待ち合わせをしていたアルマンに引き返して手当てを受けます。
「アルマン」とはアレクサンドル・デュマの小説に登場する地方出身の貴族の名前で、ヒロインが椿姫です。
芸者をしていた若き日のマダムが椿姫、ひいきのお客さんでこのお店を持たせてくれた一彦の祖父がアルマン。
身分の違いのために結ばれることは許されなかったというマダムは、かなりの高齢になった今でめ日陰の女で我慢するしかありません。
ここでは自由に生きられないと悟った真知子は、ひとりで東京に戻って再びニュー・ワールドのステージに立つことにしました。
真知子を追いかけてきた一彦はショーの最中に店内で騒ぎを起こしたために、黒服姿の用心棒にこっぴどく痛めつけられます。
【転】軽蔑(2011) のあらすじ③
真知子に見捨てられて自暴自棄になっていた一彦は、得意先を回っている時に昔の恋人と再会しました。
いま現在では別の男性と結婚して家庭を持っている彼女と、勤務時間中にも関わらず密会を繰り返します。
真知子を侮辱した社長に殴りかかったために一彦は二宮酒販を辞めさせられてしまい、これまでは息子の尻拭いばかりをしてきた一幸も今回だけは助けるつもりはありません。
スナックに出入りするようになった一彦がすっかりハマってしまったのが、高額レートのトランプゲーム「バカラ」です。
新宿で作った借金は伊藤に精算してもらいましたが、新宮市浮島で高利貸しをしている山畑万里というたちの悪い男に引っ掛かってしまいました。
伊藤が所属している歌舞伎町の組とも付き合いがあるという山畑は、以前にニュー・ワールドで踊っていた真知子にひと目ぼれしています。
厳しい取り立てで一彦を追いつめた後に、担保として真知子を奪い取るつもりです。
一彦は悪友たちを集めて山畑が取り仕切るカジノに盗みに入りますが、金庫の中にはわずかな現金と拳銃しかありません。
【結】軽蔑(2011) のあらすじ④
マダムはアルマンの権利書と引き換えに一彦を見逃すように交渉しにいきましたが、たいした資産価値がないと踏んだ山畑は店内に火を放ちました。
一彦が現場に到着した時にはすでに勢いよく炎に包まれていて、逃げ遅れたマダムは助かりません。
何食わぬ顔で葬儀会場に現れてお焼香を済ませた山畑は、一彦の前で初めて胸のうちを明かします。
生まれた時からこの町も人も嫌いだったこと、みんなから愛されている一彦のことが憎かったこと。
舎弟たちを使って一彦の仲間たちを次々と誘拐していく山畑の最期のターゲットは、マダムの葬儀に参列するために東京からやって来た真知子です。
新宮駅で新大阪行きの特急電車に真知子を乗せた一彦は、先日手に入れた銃を片手にひとりで山畑の事務所まで乗り込みます。
刃物を振り回しながら襲いかかってきた山畑を射殺した一彦ですが、腹部を刺されてしまったために息も絶え絶えな状態です。
大阪から引き返してきた真知子は、血まみれで浮島のアーケード街をさ迷い歩いていた一彦を見つけて抱きしめるのでした。
軽蔑(2011) を観た感想
もとになっているのは早世の作家・中上健次による1992年発表の長編小説ですが、主人公の髪形がツーブロックになっていたりスマートフォンを持っていたりと時代設定がアレンジされています。
朝の連続テレビ小説への出演など清純派のイメージが強かった鈴木杏が、妖艶な演技を披露していてそのギャップに驚かされるでしょう。
矢木真知子の決めゼリフは「男と女、五分と五分」ですが、土地や人が変われば通用しない現実もあってほろ苦いです。
ふたりだけの世界を夢見て突き進んでいく一彦と真知子に待ち受けている、壮絶なクライマックスには息をのみました。
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