監督:西谷弘 2006年2月に東宝から配給
県庁の星の主要登場人物
野村聡(織田裕二)
主演。県庁職員。エリートで、県の大規模プロジェクトに携わっている。
二宮あき(柴咲コウ)
スーパーマーケット満点堂のパート。派遣されてきた野村の教育係になる。
清水寛治(井川比佐志)
満点堂の店長。派遣されてきた野村をお客さん扱いする。
小倉早百合(酒井和歌子)
県知事。県議会と県民の対立の舵取りを迫られている。
古賀等(石坂浩二)
県議会議長。県の大規模プロジェクトを推進する。
県庁の星 の簡単なあらすじ
県庁職員の野村は、満点堂というスーパーマーケットに派遣されます。
そこでは、野村が県庁でやってきたやり方は通用しません。
そして、県庁で携わっていた大規模プロジェクトから外され、婚約も破棄されてしまいます。
自暴自棄になる野村でしたが、パートの二宮は、満点堂が変わるには野村の力が必要だと訴えます。
満点堂は次の消防署・保健所の検査までに改善されなければ、営業停止処分になる状況に陥っていたのです。
野村は満点堂の業務改善に取り組み、消防署・保健所の検査をクリアします。
そして、野村は県庁に戻り、今度は県庁を変えるため、仕事に取り組み始めるのでした。
県庁の星 の起承転結
【起】県庁の星 のあらすじ①
県庁に勤める野村聡は、産業政策課の係長。
総予算200億のケアタウンリゾート「ルネッサンス」のプロジェクトを、中心として担っています。
県庁の星として上司の覚えもめでたく、ケアタウンリゾートの建設を請け負う篠崎建設の社長令嬢との結婚も決まっている、前途洋々のエリートです。
しかし、「前向きに検討するだけで何もしない」と後輩に指導したり、県が誘致した新工場のせいで住むところを失った県民に対して、「県内に住所がなければ生活保護は許可できない」との判断を下すなど、いかにもなお役人。
また、ケアタウンプロジェクトには、財政難において多額の予算をつぎ込むことに対して市民団体から反発があり、一点の曇りもないプロジェクトとは言えないようでした。
ケアタウンリゾート建設において、「民間の知恵を生かした施設」建設を謳った手前、県は民間交流を目的として、民間企業との人事交流研修を大々的に企画します。
半年間の研修のメンバーとして選ばれた7人の中に、野村も含まれていました。
【承】県庁の星 のあらすじ②
野村が派遣されたのは、満点堂というスーパーマーケットでした。
そこで野村の教育係となったのが、ベテランのパート職員の二宮あきです。
二宮は野村を寝具売り場に配置しました。
野村は寝具売り場のレイアウトを変えてみるなど、何かしら目に見える仕事をしようとしますが、満点堂の職員からは「県庁さん」と呼ばれ、お客さん扱いでしかありませんでした。
そんな中、野村と同様に民間企業に派遣されていた同僚が、派遣先で問題を起こし、週刊誌にすっぱ抜かれてしまいます。
これにより、スーパーでの野村の立場はますます悪くなり、スーパーの客から見えない総菜厨房に回されること。
総菜厨房は、賞味期限ぎりぎりの総菜を揚げ直して売るなど、業務内容に大きな問題があり、野村は改善案を店長に提出しますが、相手にされません。
それならばと野村自ら、衛生基準をクリアし、さらに高級食材を使った弁当を売り出しますが、客には見向きもされませんでした。
研修が失敗に終わりそうなうえ、野村はケアタウンプロジェクトから外されることに。
そして、風向きが悪いことをどこからか感じた婚約者から、婚約も破棄されてしまった野村は、自暴自棄になり、とうとうスーパーを無断欠勤します。
【転】県庁の星 のあらすじ③
しかし、その頃二宮は野村の改善案に目を通し、満点堂の業務改善のために野村が必要だと思うようになっていました。
満点堂は、消防署・保健所から、次回の検査までに業務改善されなければ、営業停止処分になると伝えられていたのです。
このままでは、満点堂はつぶれてしまう。
今が変わるチャンスだと、それには野村が必要だと、二宮は訴えます。
二宮に応えて、野村は在庫管理や商品の鮮度管理、バックヤードの動線などを見直し、満点堂の総合業務手引を作り上げました。
野村の姿勢に満点堂の職員も応えます。
二宮はデートと称して、実際の買い物の様子から分かる女性の購買傾向を教え、それを踏まえて野村は、厄介者扱いされた総菜厨房の職員と、またいちから新しい弁当を考案し、この弁当は大ヒットとなります。
研修も終わりに近づいていました。
久々に戻った県庁で、野村は同僚から、以前とは変わったと言われます。
それに対して、「今度は県庁が変わる番かもな」と野村は言うのでした。
【結】県庁の星 のあらすじ④
県庁に戻った野村は自ら生活福祉課に異動を願い出て、ケアタウンプロジェクトに反対している市民団体と接触します。
その目的は、ケアタウンプロジェクトの問題点を洗い出し、予算を削減することでした。
様々な利権がからんだプロジェクトの可決を目前にして、県議会議長は野村の提案に激しく反発します。
しかし県知事の一声でプロジェクトは寸前で見直されることになるのです。
一方、野村が去った満点堂では抜き打ちの消防署・保健所の検査が入っていました。
職員が息をのんで見守る中、満点堂は検査をクリアします。
満点堂が変化した証を、野村も見届けていました。
野村は、県民の目線に立った提案をすることで、県庁が変わる番だという言葉を実現しようとしていました。
しかし知事室では、県議会議長に押し切られたであろう県知事が、野村の提案を「前向きに検討」し、却下するのです。
一筋縄でいかないことを予想していた野村は、それでもあきらめないと、二宮に言うのでした。
県庁の星 を観た感想
とかくお上と国民の価値観の違いというのは問題になるものですが、この映画はエリートで仕事の出来る県庁職員がスーパーマーケットに派遣されることで、お上としての仕事のあり方を見直すというテーマになっています。
かといって、説教くさい内容でもなく、登場人物の台詞や行動は受け入れやすく、世界観に入り込みやすい映画でした。
原作からは少し内容を変えているようですが、小説として話ができあがっているせいか、伏線の張り方などにも無理がなく、後半に向けて登場人物の台詞がうまく回収されていく様子は、見ていてとても楽しかったです。
最終的に主人公の野村は、県の大規模プロジェクトの予算削減案を県側にたたきつけるわけですが、これは結局うまくいきません。
それでもあきらめないぞというところで映画は終わっており、厳密に言えばハッピーエンドとは言えないのかもしれませんが、世の中そんなに簡単に変わらないよね、という現実味があり、個人的には全部うまくいく終わり方より良いと感じました。
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