監督:ベネット・ミラー 2006年9月にソニー・ピクチャーズから配給
カポーティの主要登場人物
トルーマン・カポーティ(フィリップ・シーモア・ホフマン)
主人公。南部出身の小説家で映画の脚本も手掛ける。自分に正直に書くのがポリシー。
ネル・ハーパー・リー(キャサリン・キーナー)
カポーティの友人。「アラバマ物語」でベストセラー作家の仲間入りをする。
ペリー・エドワード・スミス(クリフトン・コリンズ・Jr.)
殺人犯。足が悪く鎮痛剤が手放せない。内省的で絵がうまい。
リチャード・ヒコック(マーク・ペルグリノ)
ペリーの相棒。愛称は「ディック」。虚言癖がある。
アルヴィン・デューイ(クリス・クーパー)
地元でも信頼されている刑事。妻・マリーとふたりの男の子を育てる。
カポーティ の簡単なあらすじ
カンザスの農場で発生した一家惨殺事件を取材するのは、社交界でも人気のトルーマン・カポーティです。
逮捕されたふたりの犯人のうちペリー・エドワード・スミスの方は、面会にきたカポーティに少しずつ心を開いていきます。
「ノンフィクション・ノベル」という新ジャンルを切り開きましたが、ペリーの死刑を目の当たりにしたカポーティは筆を折るのでした。
カポーティ の起承転結
【起】カポーティ のあらすじ①
1959年11月15日、ニューヨーク・タイムズ紙の朝刊の一面でトルーマン・カポーティはカンザス州で家族4人が猟銃で顔面を撃たれた事件を知りました。
被害者は裕福な農場主・クラッターとその妻、長女・ナンシーで16歳、彼女の弟で15歳のケニヨン、第1発見者はナンシーの友人ローラ・キニー。
さっそく列車で現地へと向かい、取材助手兼ドライバー兼ボディガードとしてネル・ハーパー・リーが同行してくれます。
インタビューを申し込んだ相手は、事件を担当するカンザス州捜査局のアルヴィン・デューイです。
カポーティが興味をもったのは事件がこの街に与えた影響についてで、犯人が捕まるかどうかではありません。
現地の警察官や事件の目撃者はよそ者にあまり好意的ではありませんが、アルヴィンの妻・マリーはかなりの読書家です。
マリーの影響でアルヴィンもカポーティの過去の作品を手に取り始めていき、夫妻と打ち解けたカポーティは事件が無事に解決するまで何も書かないと約束しました。
【承】カポーティ のあらすじ②
1960年1月6日、2人組の男がカンザスシティで偽小切手を使った容疑で保安官住宅に護送されてきました。
先住民を母親に持つペリー・エドワード・スミス、「ディック」の通り名で犯罪者たちのあいだでは有名なリチャード・ヒコック。
カポーティは予審の権利を放棄したふたりのうち、裁判の最中も何か別のことを考えているペリーの方に注目します。
4件の第1級殺人に問われたペリーとリチャードに対して、陪審員の全員が一致で下した評決は死刑です。
ペリーカンザス州ランシングにある刑務所へと移送されることが決まり、面会者リストに入ってなければ二度と会えません。
控訴のために優秀な弁護士を見つけると約束して、カポーティは自分の名前をリストに入れてもらいました。
ここ1カ月でみるみるうちに痩せ細っていたペリーのために、カポーティは離乳食を食べさせます。
母親がアルコールに溺れていたこと、姉のリンダとともに施設に保護されたこと。
カポーティも母が新しい恋人を作っては街から街へと渡り歩いていたために、ペリーの生い立ちが他人ごととは思えません。
【転】カポーティ のあらすじ③
1961年、ニューヨークの騒がしさから逃れるためにカポーティはスペインのコスタ・ブラバに滞在していました。
静かで落ち着いた環境の中で事件を題材にした新作の執筆を開始しますが、ペリーは犯行の夜について詳細を語っていません。
この年の9月にはペリーとリチャードの死刑が執行される予定でしたが、連邦裁判所での再審が決まって延期されます。
猶予期間はそれほど長くないために、何とか真相を聞き出さなくてはなりません。
ワシントン州のタコマに住んでいるペリーの姉によると、弟は繊細な一面を見せて他人を欺くそうです。
姉から託された幼い頃のきょうだいの写真を届けると、ようやくペリーは事件当日について重い口を開きました。
クラッター家が隠しているという1万ドルもの大金、妻とふたりの子供を縛り上げて家捜しするものの出てきた金は40ドル、父親の軽蔑するような目。
気がつくとペリーは父親ののどを切り裂いていて、猟銃で止めを刺した後に残りの3人も射殺していました。
【結】カポーティ のあらすじ④
事件発生から4年がたちましたが最高裁まで審議が持ち込まれる異例の事態となり、カポーティはいまだに結末を書いていません。
ネルの新作「アラバマ物語」は大ヒットして映画も製作されて、カポーティも試写会に招待されました。
会場の隅っこで暗い表情を浮かべながら、ひとりお酒を飲んでばかりいるカポーティのことがネルは心配で堪りません。
ランシング刑務所からペリーの電話を受けたカポーティは、控訴が棄却されて死刑執行の日取りも決まったことを告げられます。
2週間後の1965年4月14日にカポーティが刑務所へ向かうと、5分間だけ面会が許されペリーはこの4年あまりの友情に感謝の言葉を述べました。
郡裁判所と州最高裁の命令によってペリーに刑がくだされ、カポーティも絞首台の下で立ち会います。
まもなく出版された「冷血」によりカポーティの名声は高まりますがその後は1冊も本を書くことはなく、1984年にアルコールの依存性が原因でその生涯を終えるのでした。
カポーティ を観た感想
人気の絶頂期を堪能していたマリリン・モンローから、若手俳優として注目を集めていたハンフリー・ボガートまで。
当時のセレブたちをファーストネームで呼び捨てにする、カポーティの華麗なる交遊関係に圧倒されました。
その一方では時おりちらつく寂しげな表情や、片時もお酒のグラスを手離せない孤独感も伝わってきます。
高級ブランドを身につけたファッションのこだわりから独特の話し方まで、今は亡き名優のフィリップ・シーモア・ホフマンが見事に成りきっていて必見です。
凶悪な犯罪者の心を理解しようとするあまりに、自分自身が深い闇へと落ちていくようなラストに震えました。
コメント