監督:アリ・アスター 2020年2月にA24から配給
ミッドサマーの主要登場人物
ダニー(フローレンス・ピュー)
主人公。妹の無理心中で家族を亡くし、もとから不安定だった精神がより苦しい状態に陥っている。
クリスチャン(ジャック・レイナ—)
ダニーの彼氏。精神不安定なダニーを持て余しているが、冷たく突き放すこともできないでいる。
マーク(ウィル・ポールター)
クリスチャンの友人。論文のための旅行と言いながら、現地で羽目を外すことばかり考えている。
ジョッシュ(ウィリアム・ジャクソン・ハーパー)
クリスチャンの友人。ホルガ村の儀式のことを、論文に書こうと考えている。
ペレ(ヴィルヘルム・ブロングレン)
クリスチャンの友人。生まれ故郷のホルガ村に、クリスチャンたちを招き寄せた。
ミッドサマー の簡単なあらすじ
悲劇的な事件で家族を失った主人公のダニーは、恋人であるクリスチャンとの関係もうまくいかず、精神的な支えを失いつつある状況にいました。
そんな彼女が招かれたのが、太陽が沈まない白夜の村ホルガで行われる夏至祭り「ミッドサマー」です。
おおらかで陽気な村人に囲まれ、和やかに祭りは始まりましたが、生贄の儀式アッテストゥパンを皮切りに、少しずつ状況は不穏になっていきます。
ダニーと共に村を訪れた部外者たちが次々と消えていく中で、最後の生贄の候補としてクリスチャンに白羽の矢が立ちます。
彼を生贄にするのか否か、ダニーは決断を下すのでした。
ミッドサマー の起承転結
【起】ミッドサマー のあらすじ①
恋人のクリスチャンとの関係がぎくしゃくしている主人公、ダニーの元へ、双極性障害を患っている妹から不穏なメッセージが届きます。
ダニーが感じた嫌な予感は的中し、妹は両親を巻き込んで自殺を図ってしまったのでした。
天涯孤独になったダニーの支えは、優しさを見せてはくれているけれど、彼女の扱いに困っているのが態度から見え見えなクリスチャンだけです。
しかも彼は論文の取材のために、友人たちとスウェーデンへの旅行を計画していました。
このことを知らされたダニーは、何とか同行させてもらうことになったものの、クリスチャンの友人たちからはあまり歓迎されてはいないことを感じ取っていました。
到着したスウェーデンのホルガ村は、しかし美しい楽園のような場所でした。
クリスチャンたちはこの村で90年ごとに行われる浄化の儀式を取材しに来たのです。
9日間にわたって開催されるこの祝祭は、村人たちにとってとても大切な儀式であり、村では華やかにその準備が行われているのでした。
【承】ミッドサマー のあらすじ②
到着の翌日、ダニーとクリスチャン、クリスチャンの友人のマークとジョッシュ、イギリスから村を訪れたゲストであるサイモンとコニ—を交えて、儀式の始まりにあたる食事会が始まりました。
厳かに、しかし和やかに食事は進み、長老と思しき男女の静かな献杯にて、食事会は終わります。
そのまま村人たちは断崖絶壁の下へと移動し、ダニーたちも参加するよう促されます。
儀式の中で特に重要な、アッテストゥパンという行事を執り行うのだと説明されますが、ゲストたちには意味が分かりません。
不安を覚えるダニーたちの目の前で、崖の上に運ばれてきた先ほどの老女が突然投身自殺を図ります。
悲鳴を上げ抗議し、狼狽えるゲストたちを気にも留めずにもうひとり、先ほどの老人も同様に崖から飛び降りました。
打ち所が悪く、苦しむ男性に、村人たちは容赦なくとどめを刺します。
これは、村人たちなりの誇らしい命の終え方であり、名誉ある生贄なのだと説明されますが、部外者であるダニーたちゲストには理解することができません。
この祭りは、この村は、何かどこかがおかしいのではないかと思い始めるものの、既にこの村からの脱出方法は無い状態なのでした。
【転】ミッドサマー のあらすじ③
そんな状況下であっても、研究を優先したいジョッシュは、この夏至祭のことを論文にしようと考えていました。
ところが、もともと別なテーマを探すはずだったクリスチャンまでもが、この村の思想や風習に惹かれ、同じテーマを選ぼうとしていることを暴露します。
何とか共同研究という形にすることで決着したものの、納得のいかないジョッシュは「村の儀式は秘密であるため、年長者たちの許可が必要だ」という条件を無視したために、何者かによる襲撃を受けてしまいます。
マークもまた、食事会の最中に村の女性に誘われて連れ出され、そのまま戻ってきませんでした。
サイモンやコニ—の姿も見当たらなくなり、ダニーもクリスチャンも不安が強くなりますが、村から出る術はありません。
またクリスチャンは、村の少女に思いを寄せられてしまい、恋の成就を願うと伝えられている様々なおまじないをかけられていきます。
様々な思惑が交錯し、ひとり、またひとりとゲストが消えていく中で、ダニーは儀式のメインイベント「メイポールダンス」に招かれ、見事栄えあるメイクイーンの座に選ばれるのでした。
【結】ミッドサマー のあらすじ④
メイポールダンスが華やかに開催されるその裏で、クリスチャンは薬物入りの飲み物を勧められ、酩酊状態に陥っていました。
ふらつく彼が招かれた先には、恋のおまじないをかけていた村の少女が待ち受けていました。
彼らは儀式の一環である「性交の儀式」を果たすものとして選ばれていたのです。
この、衝撃的な裏切りの光景を目撃してしまったダニーは、未来のないクリスチャンとの関係に終止符を打つ気持ちの区切りのようなものを、無意識のうちに見出してしまいました。
9日間にわたる儀式もついに、終わりの時がやってきました。
内臓をくりぬいたクマに縫い込まれたクリスチャンと、数字で選ばれた村人の一人のどちらかを、最後の生贄に選ぶようダニーは促されます。
この選択の権利を持つのが実は、メイクイーンなのでした。
そして、ダニーが生贄に選んだのは、恋人であるはずのクリスチャンでした。
姿が見えなくなっていたダニー以外のゲストたちと、アッテストゥパンの儀式で飛び降りた老人二人、そして村人の中から立候補した2名、合計9人の死者と生者を閉じ込めた神殿に火が放たれ、クリスチャンは生きたまま焼け死んでしまいました。
その光景を見ながらダニーは涙を流し、しかし最後には会心の笑みを浮かべるのでした。
ミッドサマー を観た感想
明るい白夜の村で繰り広げられる、9日間の祝祭を描いた映画です。
しかし、華やかで美しい村で行われるその祭りの実態は、生贄を伴う数々の凄惨な儀式の連続であり、招かれたゲストたちは、生贄になるためにこの地へやってきたということが最後にわかります。
私たちの日常からはかけ離れた、理解の難しい死生観や生活風習への戸惑いや反発、自らの欲を優先させようとして破滅していくゲストたちの姿からは、教訓を得ることもできますが、映像や物語の美しさと残酷さの強烈なギャップがとにかく印象に残ります。
既に破綻してしまっている関係に目を背け、何となく付き合いを断ち切れないでいる人には特に、深く刺さる映画だと言えるため、公開前後の評判でカップルの絆が試されると言われたことも合わせて、覚えておきたい作品です。
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