【ネタバレ有り】誰か Somebody のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:宮部みゆき 2003年11月に実業之日本社から出版
誰か Somebodyの主要登場人物
杉村三郎(すぎむらさぶろう)
杉村三郎シリーズの主人公。妻の父親の会社今多コンツェルンの広報室編集者兼記者。
杉村菜穂子(すぎむらなおこ)
三郎の妻。今多コンツェルン会長今多嘉親の愛人との間に産まれた娘。
今多嘉親(いまだよしちか)
今多コンツェルン会長で三郎の義父。79歳の高齢だが未だに現役で働き続けている。
梶田聡美(かじたさとみ)
今多嘉親の運転手であった梶田の娘。来月結婚する予定だったが父親を事故で亡くした。
梶田梨子(かじたりこ)
聡美の十歳年下の妹。両親に可愛がられ甘やかされて育った。
誰か Somebody の簡単なあらすじ
杉村三郎は今多コンツェルン会長の愛人の娘である菜穂子と結婚し、いわゆる逆玉の輿で何不自由無く暮らしていました。
可愛い娘にも恵まれ、今多コンツェルンの社内報を発行する広報室で編集者兼記者として働き、今多の本妻の息子達も人柄が良く菜穂子にも優しくしてくれます。
そんなある日、今多の個人運転手であった梶田が自転車に轢き逃げされて亡くなるという事故が起きます。
梶田の娘が父親の無念を晴らそうとしていると今多に相談があり、三郎が対応して欲しいと持ちかけられます。
誰か Somebody の起承転結
【起】誰か Somebody のあらすじ①
杉村三郎は今多コンツェルン会長の愛人の娘である菜穂子と結婚し、いわゆる逆玉の輿で何不自由無く暮らしていました。
三郎は結婚の条件として絵本出版社を辞めて今多コンツェルンの社内報を発行する広報室で編集者兼記者として働くようになり、あまり忙しくもない職場で平凡な日々を送っていました。
そんなある日、今多の個人運転手であった梶田信夫が自転車に轢き逃げされて亡くなるという事故が起きます。
梶田の娘の聡美と梨子が父親の無念を晴らそうとしていると今多に相談があり、三郎が対応して欲しいと持ちかけられます。
三郎が連絡を取ると姉妹がやって来て話を聞くこととなります。
梨子は信夫の無念を晴らす為に人生を一冊の本にまとめて発行しようと考えていました。
轢き逃げ事件は数え切れないほどに発生しているため、警察もマスコミもあまり興味を持っておらず犯人が逃げ切るのではないかと危惧しており、犯人に罪の重さを認識させてやると意気込んでいました。
2人と別れた後で聡美だけがこっそり戻ってきて、今回の事は梨子が先走っているだけで自分はあまり乗り気で無いと話します。
確かに聡美の結婚式を一ヶ月後に控えていて信夫は楽しみにしていたのでとても残念だけど、父親の人生には梨子が知らない部分もあるのであまり掘り返して欲しくないと言います。
聡美だけが知る父親の若い頃の人生はあまり褒められたものではなく、むしろ梨子が傷つくのではないかと聡美は心配していました。
聡美は昔父親を恨む人物に誘拐された事もあり、父の死も単なる事故死では無いのではないかと疑っていました。
三郎はさすがに考えすぎだろうと思い、梨子は言い出したら止まらない性格のようである為、自分が上手く誘導するのでとりあえずは本を書くだけ書いてみたらと勧めます。
【承】誰か Somebody のあらすじ②
三郎は梶田姉妹から聞いた話を今多に報告すると、今多もさすがに聡美は心配のし過ぎで信夫の死はやはり事故死だろうと言います。
聡美が結婚式も延期しようと考えていると伝えると、今多はむしろ信夫の性格であれば無事式を挙げた方が喜ぶだろうと延期には否定的でした。
2日後、梨子が可能な限りの資料を集めて持参し本の題材について話し合います。
聡美とは喧嘩中で梨子は1人でやって来ると父親の知人に連絡を取り何人かから昔話を聞いてきたと報告します。
三郎は話を聞きつつ比較的新しい情報は梨子に調べさせ、聡美が怪しいと言っていたトモノ玩具勤務時のことについては自分が調査を担当することにします。
トモノ玩具を探すと元社長である老人と連絡が取れ、会って話を聞かせてもらうこととなります。
信夫の過去を調べつつついでに犯人探しもしようと事故現場にも何度か足を運びますが、有力な情報は得られません。
当初警察の調べでは子供が走り去っていくのを見たという人はいましたが、事故そのものを見た人は誰もいません。
近くに住む人にも話を聞いてみますがやはり犯人に繋がるような情報は出てきませんでした。
トモノ玩具は昔はオモチャの製造工場でしたが、今はオモチャ屋さんになっていました。
信夫を雇っていた友野栄次郎に話を聞くことが出来ますが、これと言って印象に残る出来事も無かったらしく、聡美が心配していたような暗い過去も無さそうでした。
三郎は聡美に会って友野栄次郎氏に聞いた話をし、トモノ玩具に務めていた頃に梶田信夫についてはこれと言って問題になりそうな出来事は無かったようだと報告します。
聡美が誘拐されたという事件について詳しく聞こうとしますが、聡美もうろ覚えらしくその犯人も動機も不明なままでした。
【転】誰か Somebody のあらすじ③
聡美の婚約者浜田もやって来て三郎に紹介され、3人で話をしていると浜田の携帯が鳴り浜田は離席します。
三郎はつい最近同じ着メロを聞いて同じように席を立っていった人がいたような気がし、聡美を見ると固まったように浜田を凝視していました。
後日、手伝いを頼んだアルバイト椎名、梨子と共に信夫の事故現場でビラを配っていると三郎は自転車に轢かれてしまいます。
相手の不注意ではあり幸いにも大事には至らなかったものの、救急車で運ばれ警察も来る事態となり、梨子はあの場所は呪われているんじゃないかと感じます。
聡美と梨子が自分達の手伝いをしてもらっている上に怪我までさせてしまい申し訳ないと三郎の自宅を訪ねてきて色々な話をしていると、携帯に疎い三郎が着信音の設定を変えられるのかと口にすると3人に笑われます。
今の機種なら相手ごとに変更できると言われ、三郎は少し驚きました。
三郎がまた事故現場の近くで聞き込みをすると、近くに住む人からどうやら信夫を撥ねた犯人は中学生であるという噂が出回っているとの事です。
数日後、警察から三郎に連絡が入り、三郎が信夫の遺族から依頼を受けて犯人探しを手伝っていると分かると犯人の目星は付いていて自首出来るように中学のカウンセラーと協力している所だと教えてくれます。
やはり聡美が心配していたような殺人事件などではなく単なる事故であったと分かりますが、警察からは本をどうするのかと尋ねられ三郎は自分が2人を説得すると答えます。
梶田姉妹に事情を説明すると犯人の目星が付いたことで2人とも涙を流し、梨子は本について単なる思い出本にコンセプトを変えると言い出します。
これで事故の件は片付いたとは思うものの、聡美が昔誘拐された件については三郎が引き続き調べることにします。
【結】誰か Somebody のあらすじ④
友野氏の右腕であった関口氏によると、梶田夫妻と同時に事務の野瀬祐子という女性が辞めていたということが分かります。
また、時々三郎に非通知の電話が掛かってくるようになりますが、出ても相手は何も喋りません。
今度は梨子に脅しの電話が掛かってきたとの事で、聡美の誘拐について教えますが梨子は気にせず本を書き続けると言います。
三郎に4度目となる非通知の電話があり、今回は相手がようやく話をしてくれます。
相手は野瀬祐子であり梶田信夫が事故に遭う直前まで会っていた人物でした。
トモノ玩具に勤めていた頃、野瀬は博打好きの父親にたかられており誤って殺してしまい、梶田夫妻が同情して殺人の隠蔽に手を貸してくれました。
その際、1晩だけ聡美を預かったのが聡美誘拐事件の真相で、野瀬はずっと自分のした事が聡美の人生に暗い影を落とすのではないかと心配していましたがこの度聡美が結婚する事になり信夫は安心させようと訪ねてきたとの事でした。
これで信夫の事故と聡美の誘拐についてはかたづきますが、三郎は街を歩いていてある曲を耳にし最後の謎解きに向かいます。
三郎が信夫の生まれ故郷で待っていると取材に来た梨子と共に浜田が姿を現します。
2人は数ヶ月前から不倫関係にあり、浜田は結婚までの期間限定だと軽く考えていましたが、梨子は婚約を解消させて自分が浜田と結婚するのだと言い張ります。
三郎は2人を嫌悪し説教をしますが、梨子は三郎を罵倒し浜田も三郎みたいな人間には自分達の事は分からないと言い残して去っていきます。
聡美から三郎に電話があり、聡美は確かに浜田と梨子の関係に気づいていたし過去にも似たような事はあったが、目をつぶって浜田と結婚すればそれで幸せになれるはずだったのに何でこんな余計な事をしたのだと怒りをぶつけられます。
三郎のような恵まれた人に自分の気持ちなど分からないと言われ、三郎は返す言葉が見つかりませんでした。
誰か Somebody を読んだ読書感想
本作は杉村三郎シリーズの第1作目であり、杉村三郎は結婚生活を満喫中で妻と子供最優先で仕事はそこそこにこなしています。
その中でたまたま妻の父親今多嘉親の個人運転手であった梶田信夫の事故死に関わることとなり、その中で梶田姉妹の諍いに巻き込まれていきます。
梶田姉妹はどちらも美人ですが歳が10歳離れており、姉の聡美は内向的で心配性な性格、妹の梨子は派手で明るく猪突猛進な性格と正反対です。
姉からすると妹は両親の寵愛を受け一番星のように扱われていたと見えており、妹からすると両親は何事も姉ばかり頼りにしているように見えており、互いにその存在を羨んでいました。
その中で今回父親の死が絡んで三郎と関わるようになり、最後には梨子が聡美の婚約者を寝取っていたという事実が判明してしまいます。
しかし三郎が関わらずともいつかは分かっていたことだとは思いますし、結婚してから聡美が気づくよりはタイミング的には良かったのでは無いかと思います。
聡美の心配性な性格でも浜田と梨子の不倫関係を見抜くまでに時間がかかったということは、梨子もなかなか巧妙に動いていたのだろうと思いますが、三郎の目から見てももっと早くに良い男に巡り会えていて良いはずの聡美が不憫です。
しかし、良かれと思って不倫関係まで暴いた三郎は聡美、梨子、浜田からお前のような恵まれた環境にいる人間には分からないと指摘され、他人から見ると金持ちが道楽で人の恋愛に首を突っ込んできたと見えてしまうと気づきます。
今多からも放っておけと言われたように、本当は浜田と梨子の関係を暴かなかった方が良かったのかも知れません。
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