【ネタバレ有り】流れ行く者 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:上橋菜穂子 2008年4月に偕成社から出版
流れ行く者の主要登場人物
バルサ(ばるさ)
守り人シリーズの主人公。本作では13歳の少女。
タンダ(たんだ)
本作ではトロガイに弟子入りする前でまだ実家にて農業を手伝っている。。
トロガイ(とろがい)
当代随一と言われる呪術師。
ジグロ(じぐろ)
バルサの養い親。元カンバル王国王の槍の筆頭で短槍の達人。
スマル(すまる)
カンバル人のベテラン護衛士。トキアンという商人の隊商の護衛を長年務めてきた。
流れ行く者 の簡単なあらすじ
守り人シリーズに登場するバルサとタンダの幼い頃を描いた短編集です。
まだバルサの養い親であるジグロが生きていて、バルサは毎日のようにジグロに厳しく鍛えられ、タンダは実家で農業を手伝いつつたまにトロガイの家へ遊びに来ています。
タンダの住む村で起きた不思議な事件についてトロガイに相談に来たり、バルサとジグロが追っ手から逃げながら生活している様子が描かれます。
流れ行く者 の起承転結
【起】流れ行く者 のあらすじ①
タンダは幼い頃、貧しい農家の三男坊として育ちました。
しかし、農業は性に合わず夢を見たり、近くに住む呪術師のトロガイの家へ行ったりする方が楽しく感じていました。
トロガイの家には怖いおじさんと共に槍の稽古ばかりしているバルサという女の子がいました。
たまにしか遊べないものの、タンダはバルサを慕っていました。
タンダの村近くで山犬が出たという知らせが出回り、遠い親戚のオンザの祟りではないかと噂になります。
タンダは皆からは疎まれていたもののオンザの事が好きで可愛がってもらっていました。
オンザは遊び人のようにフラフラと旅芸人をしていて家族からも家を追い出されてしまったそうですが、タンダは自分も農業はあまり好きではなくオンザには親近感を覚えていました。
ただ、オンザやタンダのような性格の人は真面目な農民からすると中身が無くて役に立たない浮き籾のようだとバカにされることもありました。
このように気楽な性格のオンザが死んだからと言って祟るとは考えにくく、タンダはその後も何かにつけて山犬の事が気になります。
バルサに相談すると、そんなに気になるなら自分で調べれば良いと言われ、タンダは夜に山犬が出るという場所へと行きます。
山犬が現れるとタンダにはオンザの声が聞こえ、確かに何か心残りがあってオンザが山犬に取り憑いているようでした。
タンダはバルサと共に山犬がしきりに引っかいていた木の根を調べると、綺麗な飾り帯が出てきます。
どうやらオンザは姉に贈り物をしようとしていたらしく、今となっては何を考えていたのか知る術は無いもののバルサが養い親のジグロと共に旅に出るついでにオンザの姉の所へ帯を届けると約束します。
【承】流れ行く者 のあらすじ②
ある夏の日、バルサは一時的に雇われている酒場で物思いに耽っていました。
養父ジグロは出かけたきりまだ帰ってこず、バルサは後ろで盛り上がっているススットという賭け事を観戦する気にもなれません。
バルサはススットが得意でしたが、買ったり負けたりしているうちにある事に気づきます。
酒場にはラフラと呼ばれる賭事師がおり、酒場が負けすぎないように調整しているのでした。
また派手な歓声があがりバルサが覗いてみると知り合いのアールが大負けしていてバルサに助っ人を頼んできました。
真夜中までかかりバルサはアールの負け分を帳消しにすると、ススットが終わった後で相手の男達に絡まれます。
バルサは返り討ちにして相手を殺しかけますが、ラフラの老女アズノに止められます。
それから、アズノは暇があるとバルサにサイコロの投げ方を教えてくれたり、賭事で大負けしない秘訣として上手く逃げる事だと教えてくれたりします。
アズノはたまに1人でブツブツ言いながらススットをしている時があり、その勝負は五十年も続いていると言います。
アズノは相手のターカヌと最後の勝負を行う際、孫のサロームを紹介されます。
ターカヌは最後にサロームと公開勝負で決着をつけ、五十年の戦いを終えて欲しいと頼みます。
ターカヌは礼として大金を用意するのでアズノには手加減せず勝って欲しいと頼みますが、アズノは酒場に戻り主人と長い時間をかけて相談します。
勝負の当日、アズノはひたすらに金を稼ぎ続け領土はサロームに与えた為、勝負には負けますが大金を手にします。
アズノはターカヌに深々と頭を下げ、万雷の拍手の中ゆっくりと去っていきました。
【転】流れ行く者 のあらすじ③
バルサは給仕、ジグロは用心棒としてロタ王国の酒場で働き始めて数ヶ月が経ちました。
ある日、縄張り争いの為に金で雇われたならず者が暴れ出しジグロが戦いますが敵の数が多く傷を負います。
その数日後、ジグロは病に倒れ動けなくなります。
バルサは心配でたまりませんが酒場の主人は新しい用心棒を雇ったり狭い部屋に移れと言ったりしてくる為、バルサは恩知らずだと怒ります。
しかしジグロは用心棒と言うのは金を貰って代わりに命をかけて戦うのが仕事なので当たり前だと言い放ち、バルサにこんな流れ者暮らしが嫌ならトロガイの家で暮らすかと問いかけます。
トロガイなら上手くバルサを育ててくれるだろうし、仲の良いタンダもいるのでバルサにとっては幸せなのではないかと思えますが、バルサは父親の仇討ちを心に誓っており嫌だと答えます。
ジグロはある程度身体が回復すると隊商の護衛士に応募して街を離れることにし、バルサは給仕仲間から餞別として女の子用の衣を貰います。
バルサは別れなど慣れていると思いつつも喉に熱いものがこみあげてきます。
隊商に参加する際、子供連れである事にイチャモンをつけられますが、バルサが相手を倒すと護衛士長ゴズはバルサを一人前と認めてくれるようになります。
【結】流れ行く者 のあらすじ④
隊商の護衛士仲間スマルは同じカンバル人のバルサに目をかけ護衛士の心得や狩りのやり方を教えてくれます。
スマルは息子を可愛がっていたものの8歳の時に亡くしているらしく、護衛士なんて家族と離れて暮らす仕事なのでツラいものだと言います。
自分ならバルサのような子供を連れて歩くような危険な真似はしないと言い、バルサにも護衛士を目指すなど止めた方が幸せだと話しますが、バルサは人の事情も知らずにと怒りを覚えます。
雇い主トキアンは見くびられないようにと必要以上に高圧的な態度を取るため、護衛士との間に溝が出来ていました。
宿場町に着くとゴズとジグロは盗賊に金を渡して隊商を襲わないように話をつけます。
しかし街道に出るとすぐに盗賊に襲撃され荷馬車が散り散りになります。
バルサはスマルの後を追っていくと荷馬車の一つがありましたが、スマルは盗賊に通じており荷馬車の砂金を盗賊に渡していました。
ジグロは後方で盗賊と戦い続けており、バルサはスマルと命のやり取りをします。
夢中で戦い意識を失いかけたところでジグロに助けられ、スマルは護衛士たちに殺されその場に捨て置かれました。
スマルはこの護衛の仕事を最後に引退するようにとトキアンから言い渡されていましたが、博打好きな為に借金がありどうしても大金が必要でした。
人生の大半を護衛士として流れ暮らしたスマルは、最後には隊商を裏切り水のない谷底に沈んだのでした。
流れ行く者 を読んだ読書感想
本作は守り人・旅人シリーズの短編集で、バルサやタンダが幼い頃の話です。
父親を殺されカンバルからの追っ手に追われる日々を過ごすバルサはジグロから毎日厳しく鍛えられており、周りの人から驚かれる程ですが、いつか復讐するという思いを胸にバルサは耐え続けます。
13歳のバルサは年上の男相手でも全く引けを取らないくらいに強く、熟練の兵士や護衛士などが相手でない限りはまず負けません。
ちょっとした喧嘩でも相手を殺しかける事もあり、ジグロから諌められたり周りの人間に制止されないと自分の中の破壊衝動を止められないことがあります。
タンダは心優しいものの、農業は性に合わないらしくよくサボってはトロガイの家に遊びに行ったりぼうっと夢を見ていたりします。
既に呪術師になる才能の片鱗は見せており、普通の人には見えないものを見る時もありますがまだ正式にはトロガイの弟子にはなっていません。
守り人シリーズほど不思議な生物は出てこず、全体としてはかなり現実感の強い作品になっています。
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