【ネタバレ有り】やめるときも、すこやかなるときも のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:窪美澄 2017年3月に集英社から出版
ガーディアンの主要登場人物
壱晴(いちはる)
家具職人。過去の出来事がきっかけで、12月になると一定期間声が出なくなる。
桜子(さくらこ)
金銭的に困窮した実家を支える制作会社のOL。結婚に憧れている。
美織(みおり)
壱晴の高校時代のクラスメイト。父親と二人暮らしで、ホテルのバイトで家計を支えている。
哲先生(てつせんせい)
壱晴が師事する家具職人。寡黙だが素晴らしい作品を生み出す。
やめるときも、すこやかなるときも の見どころ!
・すれ違いながらも惹かれあう壱晴と桜子
・壱晴の悲しい過去
・苦しみを抜け出した壱晴と桜子のラストシーン
やめるときも、すこやかなるときも の簡単なあらすじ
壱晴は過去の出来事がきっかけで、12月になると声が出なくなります。
周囲の者は心配しますが、壱晴は決してこの理由を話しませんでした。
そんな時、自暴自棄になった壱晴はある女性と一夜を共にします。
数日後、新しい仕事相手として壱晴の前に現れたのがその女性・桜子でした。
壱晴と桜子は次第に惹かれ合い始め、付き合うことになりますが、壱晴の過去が二人の恋の障害になります。
壱晴は過去と決別するために、桜子を連れて故郷の松江に向かいますが、その行動が桜子を傷つけてしまいます。
やめるときも、すこやかなるときも の起承転結
【起】やめるときも、すこやかなるときも のあらすじ①
家具職人の壱晴は、毎年12月になると決まって数日間声が出なくなります。
原因は過去の出来事がきっかけでしたが、その理由は誰にも話していませんでした。
ある日、友人の結婚パーティーに営業をかけにいったあと、酔っぱらった壱晴は女性を家に連れ込んでしまいます。
顔も名前もわからないままその女とは別れますが、数日後、家具のパンフレット制作の打ち合わせにやってきた制作会社の女性・桜子こそがその女でした。
桜子は壱晴が自分のことを覚えていないことにショックを受けますが、次第に壱晴に惹かれていくのを感じます。
二回目の打ち合わせは12月でした。
会話の途中で壱晴は突然声が出なくなります。
桜子は心配しますが、壱晴はいつものことだからと筆談で打ち合わせを続けます。
一週間後には壱晴の声は戻りましたが、桜子はその原因を話してくれない壱晴に対して寂しい思いを募らせます。
【承】やめるときも、すこやかなるときも のあらすじ②
次第に距離を縮めた壱晴と桜子は、仕事以外の場でも交流を深めます。
桜子は部屋の模様替えのアドバイスが欲しいと実家に壱晴を招きます。
壱晴は桜子の部屋を見て、似合う椅子を作ってあげると約束します。
その時、突然桜子の父親が酒に酔った状態で帰宅します。
桜子の父親は壱晴に激しく絡み、桜子と壱晴に暴力をふるいました。
逃げるように外に出た壱晴ですが、これからは桜子を守ろうと決意し、付き合うことになります。
新年になると、壱晴は今までに作った椅子を桜子に見せるために、桜子を実家に呼びます。
壱晴の母親は明るく、桜子は楽しい時間を過ごしますが、写真立てに高校生の壱晴と知らない少女の写真を見つけます。
桜子は、まだ壱晴がこの少女のことが好きなのだと直感します。
壱晴は様子がおかしくなった彼女を見て、写真を見たのだと悟ります。
東京に戻った二人はぎくしゃくした時間を過ごします。
壱晴は桜子の椅子を作ろうとしますが、師匠の哲先生が倒れたという知らせが入り、それどころではなくなってしまいます。
【転】やめるときも、すこやかなるときも のあらすじ③
哲先生は、壱晴が桜子を苦しめていることを知っていました。
哲先生は壱晴に、自分の見舞いなんて来ずに桜子の椅子を作り、過去の話をしてやれと告げます。
壱晴はその通りに、桜子に過去の悲しい出来事を話します。
壱晴には高校時代、交際している少女がいました。
美織という名の少女は、とても勉強ができましたが、父親と二人暮らしの家計が苦しく、いつもホテルでアルバイトをしていました。
美織の父親は暴力的で、美織は学費の安い国立大学に進学して家を出ることが夢でした。
壱晴は美織に、二人で東京の大学に進学して一緒に暮らそうと提案し、それが二人の目標になりました。
しかし、ある日美織はアルバイトの帰りに壱晴の目の前で交通事故に遭い、亡くなってしまいます。
壱晴は美織になにもしてやれなかったことを悔い、これが心の傷となって12月になると声が出なくなったのです。
【結】やめるときも、すこやかなるときも のあらすじ④
全てを話した壱晴は、心の傷を治すために桜子を連れて美織が死んだ松江に向かいます。
桜子は、壱晴にとって大切な場所である松江に自分を連れてきてくれたことを嬉しく思いますが、次第に壱晴にとって美織があまりにも大きな存在であることを受け入れられなくなっていきます。
壱晴はそんな桜子の気持ちには気付けませんでした。
二人の心はすれ違ったまま、旅行は終わりを告げました。
東京に戻ると、哲先生が危篤だという知らせが入ります。
桜子は、実家に妹夫婦が二世帯住宅を計画していることを知らされ、家を出ていくことを強いられます。
数日後、哲先生は亡くなり、葬儀で壱晴と桜子は再び顔を合わせました。
壱晴は桜子の椅子を完成させていました。
桜子は、壱晴が過去と決別したことを感じ、二人での生活を始めようと決意します。
数日後、壱晴は結婚の挨拶をしに桜子の家を再び訪れます。
桜子の母や妹は壱晴を歓迎しましたが、やはり父親は暴れました。
そんな父親を、母親が初めて叱り飛ばし、晴れて二人は結婚を認められます。
それ以降、壱晴の声が出なくなることはありませんでした。
不器用な二人は新しい生活をスタートさせたのです。
やめるときも、すこやかなるときも を読んだ読書感想
過去のトラウマを抱える男女というありきたりなテーマではありましたが、壱晴が寡黙ながらにも魅力にあふれていて、ついつい応援したくなるキャラクターでした。
桜子との不器用な恋愛模様がとてももどかしかったです。
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