「夫のカノジョ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|垣谷美雨

「夫のカノジョ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|垣谷美雨

【ネタバレ有り】夫のカノジョ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:垣谷美雨 2011年4月に双葉社から出版

夫のカノジョの主要登場人物

小松原菱子(こまつばらひしこ)
39歳、主婦。パン作りが趣味で腕前はプロ級。麦太郎の浮気を疑う。

小松原麦太郎(こまつばらむぎたろう)
菱子の夫で、42歳。大東亜製粉営業部パスタ課の課長。

山岸星見(やまぎしほしみ)
麦太郎の部下で派遣社員。20歳。菱子に麦太郎との浮気を疑われる。言葉遣いが悪く、服装が派手。

小松原実花(こまつばらみか)
小松原家の長女で中学3年生。高校生の三上先輩に恋をしている。

小松原真人(こまつばらまさと)
小松原家の長男で小学5年生。小学生ながらやたらと勘が鋭く、何度も星見をヒヤヒヤさせる。

夫のカノジョ の簡単なあらすじ

夫の浮気を疑った菱子は手切れ金を渡して夫と別れてもらおうと浮気相手である山岸星見を呼び出します。しかし二人の話はまとまらず言い合いになっているうちに突然現れた老婆に体を入れ替えられてしまいます。二人は主婦とOLというこれまでと違った生活をしていく中でお互いのこれまで知らなかった一面や家族の大切さを知っていくのです。さらには星見が浮気相手だという誤解も解け、二人は無事元の生活に戻るのでした。

夫のカノジョ の起承転結

【起】夫のカノジョ のあらすじ①

夫の浮気相手とまさかの入れ替わり

どこにでもいる平凡な主婦、小松原菱子は優しくて真面目だと信じていた夫・小松原麦太郎の浮気を疑い始めます。

きっかけは麦太郎が「星見のひとりごと」というブログを閲覧していたのを偶然見つけ、よくよくそれを読んでみるとブログの中に「ムギ」という夫を連想させる名前が出てきたことでした。

これを不安に思った菱子は休日出勤をするという麦太郎を尾行します。

すると麦太郎は菱子の思った通り、浮気相手らしき若い女とマンションに入っていきました。

離婚という言葉が頭に浮かぶ菱子ですが、離婚を経験している知人に相談した所、浮気相手に手切れ金を渡して別れてもらい、浮気には目をつぶるのが良いとの事でした。

それを真に受けた菱子は浮気相手が山岸星見という女性であることを突き止め、庭園に手切れ金30万を手に呼び出します。

しかし、2人の話し合いは平行線を辿り、やがて言い争いになってしまいます。

するとそこへ1人の老婆がやってきて、「これからどうするかは神様に任せたらよか」と言い出し2人の中身を入れ替えてしまったのです。

【承】夫のカノジョ のあらすじ②

正反対な2人の入れ替わり生活

中身の入れ替わってしまった2人はとりえず星見は小松原家、菱子は山岸家へ帰り、入れ替わり生活を始めます。

麦太郎の浮気相手・山岸星見は麦太郎の会社で働く派遣社員でした。

星見は母・史子が時々家にお金をせびりに来る為、金銭的に余裕のない生活をしており、主婦である菱子に早速明日から出社してほしいとお願いします。

渋々出社する菱子でしたが、いざ出社してみると普段は穏やかでのんびりとしている麦太郎の仕事熱心な姿に惚れ直しそうになってしまいます。

実は、麦太郎の務める大東亜製粉は社長交代による再編で社内の空気はとても良いものとは言えない状態になっていたのです。

しかしその一方で、会社の部下である若い星見と浮気をしていた事に麦太郎への怒りと軽蔑が押し寄せていくのでした。

また、菱子は主婦の経験を活かした意見を武器に最初は躊躇っていた仕事にどんどん積極的になっていきます。

一方、菱子と入れ替わった星見は料理や洗濯に大苦戦しつつ、PTA活動やパートである学童保育にも精を出します。

PTAでは菱子の忠告も無視し、凝り固まったPTA役員達の意見に刃向かっていき、同じPTA役員である矢島さんの子供がいじめられていることについても相談に乗るなど普段の菱子では考えられなかった行動に出ていくのです。

そんなある日、小松原家の長女で中学3年生の実花にトラブルが起こります。

実花は高校生の三上先輩に恋をしており、ことある事にお金を要求されていていたのですが、ついに菱子の鞄からお金を盗んでしまうのです。

それに気付いた星見は三上先輩がそのお金を実花以外の女性と遊ぶことに使っている事実を突き止め、三上先輩に夢中になっている実花の目を覚まさせたのでした。

【転】夫のカノジョ のあらすじ③

思いがけない真実と姑からの提案

2人の入れ替わり生活が段々と馴染んできた頃、麦太郎が骨折、入院してしまいます。

これはチャンスとばかりに星見の格好をした菱子は麦太郎を動揺させてやろうと菱子の姿をした星見と共にお見舞いに行こうとしますが、運悪く星見が遅刻してしまいます。

するとそこへ星見と同じく大東亜製粉の派遣社員である石黒がやってきて、石黒の話から麦太郎が休日や仕事終わりの時間を利用して石黒と星見に正社員採用試験への勉強会を開いてあげていた事を知ります。

麦太郎が菱子に勉強会と言わずに休日出勤等と言っていたのはただ単に菱子に余計な心配を掛けたくなかったからだったのです。

菱子は拍子抜けすると共に、こんなにも仕事熱心で部下想いな夫の浮気を疑っていた自分を責め恥ずかしく思うのでした。

それからしばらくして星見は姑から自宅を交換しないかという提案をされます。

小松原家が住むマンションは4人家族にも関わらず2LDKSという狭さで菱子は以前からより広いマンションを購入しようと節約をしている最中でした。

その為、菱子にとっては姑が住む広い家に移れる事は良い提案だったのですが、草履職人である舅は作業場がなくなり職人を引退しなくてはならない為、反対していました。

その事を知った星見は菱子に相談もなく、お義父さんがそう言っているなら続けさせてやれば良い、と姑の提案を跳ね除けてしまうのでした。

【結】夫のカノジョ のあらすじ④

元に戻った2人

とある日、菱子と星見が会っていると、そこにあの老婆が現れます。

元の姿に戻してくれと懇願する菱子と星見に対し、老婆は「神様に聞いてみんといかんばい」と言って呪文を唱え始めます。

すると、菱子と星見の中身は見事入れ替わり、元通りになったのです。

2人は元に戻った自分達の姿に喜び一安心します。

そして以前までと同じ何ら変わりない生活を送り始めた菱子と星見でしたが、そこには僅かに変化がありました。

まず菱子の方では反抗期気味で三上先輩と同じ高校に行くと言い切っていた実花が三上先輩とは別の地元進学校を受験する事を決めていました。

また、PTAでは以前までのルールに縛られた肩苦しい雰囲気ではなく他のPTA役員が会長に意見するという今までに見られなかった光景が広がっており、菱子は驚きを隠せません。

更には、同じPTA役員ながら今まであまり交流がなかった矢島からなぜかいじめの相談に乗ってくれた事に対してお礼を言われ、戸惑います。

星見の方では、お金にだらしない母・史子が働き始めており、祖母に一緒に会いに行こうとまで言い出し、星見を新潟にある史子の実家へ連れていきます。

また、星見が久しぶりに出社すると入れ替わっていた間に菱子が提案したのであろうパスタソースが商品化され社内で高評価されていました。

しかし主婦である菱子の仕事ぶりに星見はこの仕事に向いていない事に気付かされるのです。

そして星見は派遣社員の契約更新をせず、派遣会社の登録も抹消し行方不明になりました。

そんなある日、菱子の元へ姑から電話がかかってきます。

それは家交換の件はなしにしてほしいという要件でした。

理由は草履職人である舅に弟子が出来たからというものです。

そしてよくよく姑の話を聞いてみると、菱子の義父に弟子入りした人物というのは派遣会社を退社した星見だったのでした。

夫のカノジョ を読んだ読書感想

登場人物が入れ替わる物語は沢山あるのですが、異性同士ではなく年齢や立場、境遇の全く違う女性が入れ替わる話は新鮮で面白かったです。

菱子と星見はお互いにないものを持っているからこそ元に戻った世界ではお互いを取り巻く環境が変わっているのだから、自分じゃない誰かになったように生きていく事も時には大切なのかもしれないなと思いました。

また、菱子と星見が慣れないお互いの立場に悪戦苦闘している姿についつい応援しながら読んでいました。

星見の母や過去の事などシリアスな部分も多々ありましたが、菱子と星見の言い合っている部分はとても面白く読み終わった後も嫌な気分にならず、笑顔になれる作品です。

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