【ネタバレ有り】夢の守り人 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:上橋菜穂子 2000年6月に偕成社から出版
夢の守り人の主要登場人物
バルサ(ばるさ)
守り人シリーズの主人公。女用心棒として生計を立てており、短槍の名人。
タンダ(たんだ)
バルサの幼なじみ。トロガイの弟子で薬草師。
トロガイ(とろがい)
当代最高と言われる呪術師。「花」との出会いがきっかけでノルガイの弟子となる。
シュガ(しゅが)
若き星読博士。聖導師の右腕で、トロガイの呪術に魅かれる。
チャグム(ちゃぐむ)
新ヨゴ皇国の皇太子。かつて水の精霊の卵を体に宿した際、バルサ達に助けられた。
夢の守り人 の簡単なあらすじ
新ヨゴ皇国の西隣のロタ王国で年老いた歌い手ローセッタが死を迎えていました。死の直前、身体から魂が抜けていきますが歌い手にはまだ時間が残されていました。束の間の空中浮遊を楽しんだ後、歌い手は花の種をまく仕事があり、新ヨゴ皇国の美しい湖へと飛びます。そこで種をまくと、最後の歌を贈ります。その歌に魅かれ集まってきた魂の中から、激しく強く輝いていた若き日のトロガイを選び、花の宿主の魂の母親とします。そして52年の歳月を経て、花が満開の時を迎えました。
夢の守り人 の起承転結
【起】夢の守り人 のあらすじ①
女用心棒のバルサは、何かに触れられた感触で目を覚ましますが誰もいませんでした。
不審に思っていると、ある男が三人組の男に追われて逃げて来ました。
三人組は南のサンガル人の人身売買専門の狩人であり、バルサはこれを撃退して男を助けます。
助けた男はユグノと名乗る歌い手であり、お礼にと特別な歌を聞かせてくれます。
それは魂が震えるような歌であり、ユグノはリートゥルエン「木霊の想い人」と呼ばれる特別な歌い手であるが故に狩人に追われていたのでした。
身を隠す必要があるというユグノをバルサはタンダの元へと連れていくことにします。
タンダは親戚の娘カヤの容態を診ていました。
突然眠り続けて起きなくなったらしく、呪術師の弟子であるタンダは魂を確認するとカヤの中には魂がいませんでした。
家に帰り師匠のトロガイに相談すると、トロガイも星読博士のシュガに呼ばれて都へ行き一ノ妃が同じ症状になっていたのを診てきたと言います。
トロガイは昔語りと共にナユグで花の夜が訪れたのかもしれないと自身の考えを説明しました。
トロガイは若い頃、とても貧しく子供を産んでもすぐに亡くしてしまいます。
それを嘆き悲しんでいた頃、山に呼ばれるようになり湖の中に大きな宮を見ます。
その夢のような宮から若い男が現れ、トロガイを花の種の宿主になるよう求めます。
トロガイは男を愛し子供を産みます。
子供は花の成長を助け、いずれは花の夜がやってきてサグから夢が誘われて来て受粉すると言われます。
この時、トロガイの師匠となるノルガイがトロガイを夢の世界から現実へと連れ戻しましたが、トロガイの話を聞いたタンダはもし花の夜が来ているなら夢を見ている人々を連れ戻しに行く必要があると考えます。
【承】夢の守り人 のあらすじ②
ユグノは最近新ヨゴ皇国に招かれて一ノ妃に歌を歌ったと自慢します。
その時に歌った歌をバルサにも聞かせてくれますが、それは失って戻らないものを恋しく思う歌であり、バルサはチャグムのことを思い出して悲しくなります。
一ノ妃も喪った息子を思い出して悲しんだだろうとバルサは思いますが、ユグノはむしろ喜んだはずだと気に留めませんでした。
都では、一ノ妃が病に伏せっていると噂になっていました。
この都で勉学に勤しむ皇太子のチャグムは、一年半前に水の精霊の卵を体に宿したことで実の父である帝から命を狙われ、バルサ、タンダ、トロガイ、そして星読博士のシュガに助けられました。
シュガは天才であり若くして聖導師の右腕となり、またこの事件時にトロガイと出会い呪術の世界を知りました。
今はチャグムの教育係となっており、チャグムはシュガがトロガイと会っている話を聞いた夜、バルサ達と過ごした日々を懐かしみ夢の世界へと飛んで行ってしまいます。
シュガは慌ててトロガイに相談すると、トロガイは魂呼ばいをしてみると言い、シュガには星読と呪術を組み合わせて考えてみるようアドバイスします。
タンダはカヤの容態を診ているうちに、貧しい農民の生活に嫌気がさしたであろうカヤに同情し魂呼ばいが危険でも自らの力でカヤを助けようと決意します。
師匠のトロガイからは止められていましたが、タンダは儀式の支度を整えると魂を飛ばします。
声に呼ばれて飛んでいくと美しい宮に着き、花が咲いている所で花番と出会います。
花番はトロガイの息子が帰って来て夢たちを目覚めさせてくれれば無事に帰れるのだが、肝心の男が帰ってこないのだと困っていました。
花番はタンダに歌い手である男を連れ戻すために花守りになれと命じます。
タンダは違和感を感じたものの、カヤを助けるためには花守りになるしかないと引き受けます。
【転】夢の守り人 のあらすじ③
バルサとユグノはタンダの家に着いた所、突然タンダがユグノに襲い掛かります。
花守りに体を乗っ取られたタンダは人間離れした動きをし、野獣のような表情を浮かべていました。
バルサはタンダを投げ飛ばして右腕を捻りますが、タンダは痛みをものともせずに反撃してきます。
タンダの肩を外し鼓膜を破っても起き上がってくるため、バルサは戸惑います。
そこにトロガイが現れ火の玉の幻を見せるとタンダは逃げ去っていきます。
ユグノはトロガイと花番との間に産まれた息子ですが、互いに夢の世界での親子であるため実感は湧きませんでした。
ユグノは、歌の力で花に人々の夢を集め、人々には自身が見たいと望む夢を見せていました。
またユグノ自身も毎晩花を見に行っていましたが、ある時から花番が母に変わり自分は若返り夢の世界が怖くなっていったと言います。
その話を聞いたトロガイは、花が誰かの夢に支配されてしまった可能性があり、タンダが花守りにされユグノに襲いかかって来たと推測します。
タンダは花に体を乗っ取られる直前に結界で魂だけは守っていました。
体を失ったタンダは他の夢を体に返してやれば命は助かると思い夢を探し始めると、自分が出てくる夢を見ている者がいました。
それはチャグムであり、タンダは驚くと共にチャグムに同情し少し悲しくなります。
タンダはバルサも自分もチャグムを息子のように思っていると伝え、花の罠をかいくぐり自分の体へと戻るよう説得します。
タンダはチャグムをハヤブサに変え、チャグムは真っ直ぐに体目指して飛んでいきます。
チャグムは現実に帰るとタンダからの伝言をシュガに伝え、シュガはトロガイに会いに行きます。
花守りから守る為の結界を張って動けないトロガイに代わりバルサがシュガに会いに来て、花守りからユグノとトロガイを守りつつ花の元へと辿り着く為の作戦を相談します。
【結】夢の守り人 のあらすじ④
チャグムは帝と聖導師に作り話を聞かせ、一ノ妃が眠る離宮の人払いをさせると共に狩人を派遣するように仕向けます。
狩人ジン達の助けを得てバルサはトロガイとユグノを離宮まで護衛する事が出来るようになります。
ジンは花守りと死闘を繰り広げ左脚を折りますが、花守りの攻撃で気を失ってしまいます。
湖に着いたバルサ達はチャグム一行と合流し、トロガイが結界を張って魂を花に向けて飛ばします。
その時、追いついてきた花守りが襲いかかってきますが、バルサと狩人で何とか抑え込みます。
夢の世界でタンダはトロガイと合流し、花を乗っ取った一ノ妃に立ち向かいます。
一ノ妃は何度も幻を見せて皆を道連れにしようとしますが、強い精神力を持つトロガイは幻を見破り一ノ妃を諭して呪いを止めさせ一ノ妃を鳥に変えて現実世界へと帰します。
花番が現れてトロガイに最後の別れを告げると花と共に消えていき、トロガイとタンダは鳥になって急いで現実世界へと向かいます。
ユグノは花が消えて虚無感を感じていましたが、トロガイの夢に呼ばれて花の種と同化させてもらうと人の心の痛みを感じられるようになります。
トロガイは夢の世界での息子ユグノを成長させ、自身の最期にはその歌で見送って欲しいと願います。
事件からしばらく後、タンダは花の近くで見た他人の夢について振り返っていると、かつてトロガイから言われた言葉を思い出します。
呪術師というのは人が夢を見て魂を死の縁ぎりぎりまで飛ばしてしまったとしても連れ帰る役目を持っている、夜の力と昼の力の境目に立っている夢の守り人なのだと。
夢の守り人 を読んだ読書感想
本作は守り人シリーズの第3作目であり、夢の世界が中心となった話です。
このため、呪術師であるトロガイとタンダの師弟コンビが主に活躍します。
シュガも呪術は学んでいるものの、まだ学び始めたばかりであるためほとんど役には立ちません。
シリーズが進むとシュガも少しは呪術を使いこなせるようになりますが、本作ではまだまだです。
今回、花の見せる夢というのが現実に不満を抱えていたり、絶望している人である程に心地良いと感じる夢なので、なかなか抗い難いのだろうなと思います。
もし現実にこんな力を持ったものが存在したら、多くの人が戻って来れなくなるだろうなと恐ろしくなります。
本作では、大呪術師となったトロガイの若い頃の話や呪術師になったきっかけなどが語られ、現実世界でも子供を産んでいたり、夢の世界でも子供を産んでいたりという事実を知る事ができます。
普段は口が悪くて厳しい印象のあるトロガイですが、弟子であるタンダを助けに行って叱咤激励したり、息子のユグノが惚けていると種を与えてもう一度歌えるようにしたりと優しさも見せます。
トロガイの人間味溢れる部分が見え、守り人の世界観がさらに好きになるような作品だったと思います。
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