【ネタバレ有り】A2Z のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:山田詠美 2000年1月に講談社から出版
A2Zの主要登場人物
森下夏美(もりしたなつみ)
ヒロイン。 文芸編集者。結婚後も仕事を続ける。
森下一浩(もりしたかずひろ)
夏美の夫。 編集者。
本宮冬子(もとみやふゆこ)
一浩と1年前から付き合う。 女子大生。
坂上成生(さかがみなるお)
夏美の恋人。郵便局員。
永山翔平(ながやましょうへい)
小説家。期待の新人。
A2Z の簡単なあらすじ
文芸雑誌を扱う出版社で編集者として働く35歳の森下夏美は、ある時に同業者の夫から浮気を告白されました。一回り以上年下の女性との不適切な関係に嫌悪感を露にする夏美でしたが、今度は彼女自身が25歳の恋人を作ってしまう始末です。自分の仕事に打ち込みつつ自由気ままに恋愛を楽しむ夫婦でしたが、お互いへの思いは変わることはないのでした。
A2Z の起承転結
【起】A2Z のあらすじ①
澤野夏美は大学の英文科を卒業した後に、老舗の文芸誌を扱う出版社に就職しました。
別の大手出版社に勤務する森下一浩と知り合って、2年間の交際の後に結婚します。
その後も夏美は職場では旧姓の「澤野」を使っていて、8年間の結婚生活で子供を授かることもありません。
一浩がある日突然に愛人の存在を告白したのは、夏美が35歳になったばかりの頃です。
相手は本宮冬子という名前の有名女子大に通っている学生で、彼女との関係は1年ほど前から続いていました。
一浩は冬子と別れるつもりはなく、夏美とも離婚する勇気もありません。
自分勝手な一浩に呆れ果てていたはずの夏美にも、しばらくして秘密の恋人ができます。
坂上成生は夏美の勤め先の向かいにある小さな郵便局で、窓口業務に就いている25歳の青年です。
業務時間中に速達を出しに行った時にお互いに心惹かれていき、間もなく深い仲になりました。
夫への罪悪感を感じながらも、夏美が成生の存在を打ち明けることはありません。
【承】A2Z のあらすじ②
年末年始は横浜にある一浩の実家と、立川にある夏美の実家を交互に訪れるのが毎年恒例になっていました。 今年は一浩は冬子と年越しを迎えると堂々と宣言したために、夏美も成生に12月31日の予定を聞いてみます。
成生は幼い頃から親代わりに育ててもらった祖母の具合が悪いために、正月も彼女の面倒を見るつもりです。
独りぼっちの新年のカウントダウンを覚悟した夏美でしたが、予想外の人からお誘いを受けました。
永山翔平という新人賞を獲得したばかりの小説家で、彼の伯父さんが経営している旅館に招待されます。
滞在中は簡素でありながら行き届いたおもてなしを受けつつ、おいしい料理にお酒を振る舞われて至れり尽くせりです。
地元の神社でふたりっきりの初詣をした後に、永山は夏美と一緒に夫婦でも恋人でも作ることができないものを作りたいと伝えます。
現在では一浩の出版社で連載を抱えている永山でしたが、次回作の担当に指名されたのは夏美です。
【転】A2Z のあらすじ③
このところ暗く塞ぎ込んだ様子の一浩を察知した夏美がそれとなく尋ねてみたところ、案の定冬子に振られたことをあっさりと白状しました。
一浩は仕事でも永山の担当の座を奪われて、 プライベートでも年若い恋人とうまくいっている夏美が面白くありません。
激しい言い争いの末にビンタを喰らった夏美は、大きなスポーツバッグに身の回りの物を詰め込んで家出を敢行します。
夏美が向かった先は成生のアパートではなく、高校生の頃からの親友である今日子の家です。
夏美は成生との馴れ初めから一浩との間に何が起こったかの経緯を、ことごとく今日子に話し始めました。
学生時代から彼女にだけは、どんな小さな隠し事もできません。
何でも相談できる今日子との信頼関係を、夏美は心から感謝します。
今日子が夏美の目の前に置いたのは、クリーマーで泡立てた牛乳をたっぷりと注いだコーヒーです。
夏美はそれに砂糖とシナモンを入れて、心の疲れをリフレッシュしました。
【結】A2Z のあらすじ④
今日子の部屋に転がり込んだ夏美でしたが、今後の落ち着き場所を選択することができません。
一浩のもとに帰るのか、成生と暮らすのか、 自分で新しくアパートを借りるか。 このまま中途半端では良くないという今日子のアドバイスを受けて、夏美は成生の部屋のドアベルを押しました。
中には成生の姿は見当たらず、台所のまな板に刻みかけた野菜が載っているため料理を作りかけて慌てて出て行ったのでしょう。 ベッドの上には1枚の書き置きがあり、祖母が亡くなったために実家へ帰るとのことです。
夏美は成生が1番大変だった時に、彼の側にいることができなかったことを悔やみます。
成生との別れを決意した夏美は、今日子に散々嫌みを言われながら荷物を抱えてタクシーで自分の家へと帰ります。
恐る恐る玄関を開けた夏美が見たのは、ダイニングテーブルの上に原稿のゲラ刷りを広げた一浩です。
大人になろうとしても成りきることができないふたりは、それぞれの恋の終わりを語り合うのでした。
A2Z を読んだ読書感想
編集者としては優秀で良きライバルでありながらも、異性との関係にはだらしなくドロドロの愁嘆場を繰り返す夫婦の姿がユーモラスです。
職場では旧姓を使い数多くの人気作家を手掛けて、世の中に次々とベストセラーを送り出していくヒロイン・夏美の沈着冷静な仕事ぶりが伝わってきました。
その一方で仕事中にたまたま速達便を出しにいった郵便局のカウンターで、10歳年下の男性と恋に落ちてしまう情熱的な一面も垣間見ることができます。
お互いに傷つけ合いながらも、やがては元の場所へと帰っていくクライマックスが微笑ましかったです。
コメント