「陽気なギャングは三つ数えろ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|伊坂幸太郎

「陽気なギャングは三つ数えろ」

【ネタバレ有り】陽気なギャングは三つ数えろ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:伊坂幸太郎 2015年10月に祥伝社から出版

陽気なギャングは三つ数えろの主要登場人物

成瀬(なるせ)
ギャング団のリーダー。普段は公務員。

響野(きょうの)
ギャング団の一味。普段は妻と喫茶店を経営する。

雪子(ゆきこ)
ギャング団の逃走請け負い人。普段はシングルマザーとして息子の慎一を育てる。

久遠(くおん)
ギャング団の最年少メンバー。普段は無職。

火尻政嗣(ひじりまさつぐ)
週刊誌記者。

陽気なギャングは三つ数えろ の簡単なあらすじ

人間嘘発見器の成瀬に演説の達人・響野、天才的なスリ師の久遠に正確無比な体内時計・雪子。4人のギャングたちはそれぞれの特殊能力を活かして銀行強盗を成功させましたが、質の悪いゴシップライターの火尻政嗣に付きまとわれてしまいます。成瀬たちは過去に火尻によって人生を狂わされた人たちを集めて、逆襲に転じるのでした。

陽気なギャングは三つ数えろ の起承転結

【起】陽気なギャングは三つ数えろ のあらすじ①

陽気なギャングたちに迫る冷酷な記者

銀行強盗に成功した成瀬たちでしたが、逃走する際に久遠が警備員から警棒を投げつけられて左手を負傷していました。

たまたまホテルで張り込んでいた週刊誌記者の火尻政嗣に目をつけられてしまい、それ以来他の3人にも次から次へと不審な人間が接触してきます。

響野の妻には振り込め詐欺の電話、雪子には当たり屋、成瀬には痴漢のでっち上げ。

4人の身元を暴露しない交換条件として火尻が提示したのは、彼が違法なカジノで作った借金を代わりに返済することです。

マンションを根城にして荒稼ぎをするカジノグループのリーダー、大桑という名前の青年に久遠は会いに行きました。

一見すると祖母の形見である稀少な亀を可愛がる心優しい若者ですが、借りた金を踏み倒す客に対しては決して容赦しません。

成瀬たちは火尻の書いた記事で人生を狂わされた、 数多くの被害者とコンタクトを取ります。

そのうちのひとりが、近頃失踪騒ぎを起こして話題になったアイドルの宝島沙耶です。

【承】陽気なギャングは三つ数えろ のあらすじ②

敵の敵は味方

宝島が芸能界デビューする前の恩人に牛山沙織という女性がいましたが、彼女は20代の若さで自らの命を絶って既にこの世にはいません。

昼間の会社務めと夜の風俗店勤務との二重生活を、 火尻に嗅ぎ付けられ書き立てられてしまったことが原因です。

失踪中に都内や横浜のホテルを転々としていた宝島は、密かに自伝の執筆をしていました。

この度出版記念のサイン会がホテルで開かれているために、成瀬は久遠を誘い合わせて行列に並びます。

サインを貰う際にコッソリと彼女に手渡したのは、自分たちのメールアドレスと憎き火尻にひと泡吹かせる方法を記した手紙です。

牛山の婚約者だった男性も火尻への復讐に燃えているために、 自身が経営しているジビエ料理のお店を計画のために提供してくれました。

当日は火尻をこの店に招いて宝島と一緒にランチメニューをご馳走している間に、久遠が大桑のカジノに忍び込んで顧客情報を抹消する手筈になっていて抜かりはありません。

【転】陽気なギャングは三つ数えろ のあらすじ③

亀を食べた代償

以前に訪れた時に毒蜘蛛の卵を仕掛けておいた久遠は、害虫駆除の業者に変装してマンションに浸入しました。

ヘルメットを被って特殊なマスクで声を変えているために、大桑とその一味たちには気付かれることはありません。

USBメモリーを端末ポートに差し込んで、火尻の要求通りに顧客データを消し去ります。

首尾よく目的を達成した久遠は雪子がこの日のために用意したヴァンに乗り込みますが、一向を呼び止めたのは黒いスーツを身に纏って拳銃を構えた男です。

車のエンジンを切って大人しく相手に従うのか、ハンドブレーキを下げて強硬突破か。

雪子が選んだのは車を急発進させて、一定の距離感を保ちつつ大桑たちを誘い出して火尻と鉢合わせにする作戦でした。

火尻が先ほどから美味しそうに食べていた料理の材料は、大桑の亡き祖母との思い出がたっぷり込められた亀です。

怒り狂う大桑に捕まった火尻は宝島や成瀬たちに必死に命乞いをしますが、彼を助けようとする者はひとりもいません。

【結】陽気なギャングは三つ数えろ のあらすじ④

生きていた亀と相変わらずの4人

火尻とのいざこざが終結した1ヶ月後、 成瀬たちは宝島沙耶のサイン会が開催されていたホテルのラウンジカフェに集まっていました。

ロビーで働いているのは雪子の息子・慎一で、アルバイト先にまでわざわざ押し掛けてきた母親に苦々しげな目線を送っています。

少し前まで小学生だったはずの息子が、今やもう大学生であることは雪子には信じられません。

響野は慎一が教習所で親しくなった女の子とメールをやり取りしていることを知って、しつこく絡んでばかりです。

久遠がようやく包帯が取れた左手に持っているスマートフォンには、つい最近に宝島がハリウッド映画への出演を決めたことを報じるニュースが載っていました。

サイン会に並んでいるところを職場の同僚に目撃されてしまった成瀬は、生真面目にスポーツ新聞を読んで彼女に関する情報を集めています。

火尻に食べられたと思われていた亀は密かにすり替えられていて、今では久遠の自宅の水槽で元気に泳いでいるのでした。

陽気なギャングは三つ数えろ を読んだ読書感想

「陽気なギャング」シリーズも第3弾となりますが、4人の息の合ったチームプレーと軽妙洒脱な会話はマンネリ化することはありません。

第1弾の頃には小学校だった雪子の子供が大学生になったアルバイトをしているシーンや、スマートフォンが作品の中に登場するなど時間の経過もしっかりと反映されていました。

「銀行強盗もそろそろ潮時かもな」と成瀬が珍しく弱音を吐くなど、キャラクターたちの微妙な変化も印象的です。

その一方では相も変わらず平日の昼間から動物園をブラブラしている久遠や、衰えることのない響野の達者な弁舌には安心しました。

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