【ネタバレ有り】真夜中のパン屋さん 午前1時の恋泥棒 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:大沼紀子 2012年2月にポプラ社から出版
真夜中のパン屋さん 午前1時の恋泥棒の主要登場人物
篠崎希実(しのざきのぞみ)
ヒロイン。「ブランジェリークレバヤシ」に居候する女子高生。
暮林陽介(くればやしようすけ)
ブランジェリークレバヤシのオーナー。
柳弘基(やなぎひろき)
ブランジェリークレバヤシのパン職人。
斑目裕也(まだらめゆうや)
ブランジェリークレバヤシの常連。脚本家。
由井佳乃(ゆいよしの)
弘基の元恋人。双子の姉・綾乃がいる。
真夜中のパン屋さん 午前1時の恋泥棒 の簡単なあらすじ
ブランジェリークレバヤシは真夜中限定でオープンする不思議なパン屋さんです。ある時にお店のブランジェ・弘基を訪ねてきた謎めいた美女によって、居候の希実やオーナーの暮林は思わぬ事件へと巻き込まれていくのでした。
真夜中のパン屋さん 午前1時の恋泥棒 の起承転結
【起】真夜中のパン屋さん 午前1時の恋泥棒 のあらすじ①
クリスマス前で大にぎわいなブランジェリークレバヤシで篠崎希実が店番をしていると、ボストンバックを抱えた若い女性が駆け込んできました。
彼女が取り出したのは婚約届けで、茶色い罫線の中には「柳弘基」妻の欄には「由井佳乃」と明記されています。中学2年生のクリスマスからお付き合いを始めたこと、弘基が彼女の姉・綾乃と浮気をして破局に至ったこと、お互いに25歳まで独身だったら結婚する約束だったこと。
行く当てもなく所持金もないと訴える佳乃に暮林が提供したのは、2階の空き屋です。
荷物を運び入れるのを手伝っていた希実は、彼女のボストンバックに札束がぎっしりと詰まっているのを目撃します。次の日から佳乃は自ら率先して店の手伝いを始めるようになり、そのルックスと愛嬌の良さもありあっという間に常連さんの間では人気者です。その一方では佳乃の婚約者だと名乗る不審な男が近所を徘徊しているため、希実と弘基は密かに彼女の身辺調査を開始するのでした。
【承】真夜中のパン屋さん 午前1時の恋泥棒 のあらすじ②
弘基の地元の友達からの報告によると、佳乃の父親は会社社長で一家は高層マンションの最上階で何不自由なく暮らしていました。
しかし彼女が高校2年生の時に経営が立ち行かなくなり、一家離散の憂き目に遇ったようです。
佳乃を目当てにしてお店に足繁く通うひとりに、脚本家の斑目裕也がいます。
近頃では仕事終わりにデートに誘われているようで、斑目はすっかり彼女に夢中です。
遂にはティファニーのエンゲージリングを購入した途端、佳乃は失踪してしまいました。
佳乃は相当な遣り手の結婚詐欺師らしく、被害者の人数も被害総額も既に6000万円にも上ります。希実たちと同時に佳乃の行方を追っていたのは、彼女の一卵性双生児の姉・綾乃です。お弁当屋で働いていた綾乃は見ず知らずの客から、「騙された」と掴みかかられる被害に遭っています。
自分と瓜二つの顔をした妹が悪事に手を染めていることを知り、かつての浮気相手の弘基に彼女を止めることをお願いするのでした。
【転】真夜中のパン屋さん 午前1時の恋泥棒 のあらすじ③
佳乃が言い残した「1月30日までにケリがつく」という意味深なセリフ、6000万円という大金。
これらのふたつの条件に当てはまる物件が、東京都の競売リストの中にありました。
入札日は1月30日になり、落札予想金額は凡そ6000万円になります。
佳乃は父の事業失敗によって差し押さえられたマンションを、騙し取った金で買い戻すつもりです。彼女が引っ掛けた相手にはたちの悪い者もいて、中でも萩尾修司は1番の危険人物になります。
父親がキャリア官僚のため相当な額を渡したようで、ストーカーと化した今となっては何をしでかすか分かりません。
迫りくる萩尾から佳乃を間一髪で救ったのは、中学生の時に書いた婚姻届けと斑目から借りたティファニーの指輪を両手に掲げた弘基です。
佳乃の指にぴったりと指輪がはまるのを見ては、萩尾も引き下がるしかありません。
取り敢えずストーカーを追い払うことに成功した佳乃は、弘基が本当に自分と結婚する気があるのか尋ねるのでした。
【結】真夜中のパン屋さん 午前1時の恋泥棒 のあらすじ④
心に決めた人がたったひとりいること、その人は既に亡くなっているためにこの先誰とも結婚する気はないこと。
そう答えた弘基はブランジェリークレバヤシのイートイン席で、自分が焼いたチョコクロワッサンを佳乃に差し出します。
このクロワッサンのレシピを教えてくれたのが、今は亡き暮林の妻であり弘基が愛した女性・美和子です。
翌日には佳乃は現金を持ったまま姿を消していて、やがて新聞に結婚詐欺師の自主を告げる小さな記事が載ります。
バレンタインデーに風邪を引き自分の部屋で寝込んでいた希実の様子を見に来たのは、閉店作業を終えエプロンの紐を解いた暮林でした。
美和子を失って以来2階には上がることが出来ないはずの暮林が、そこに居ること自体希実にとって不思議で仕方ありません。
希実は弘基から仕込まれて手作りしたチョコレートを、暮林に手渡します。美和子が死んでから止まっていた暮林の時間も、彼女が残した1番弟子と腹違いの妹のお蔭で動き始めていくのでした。
真夜中のパン屋さん 午前1時の恋泥棒 を読んだ読書感想
年末年始の忙しい時期に、大金を詰めたボストンバックを抱えて転がり込んでくる由井佳乃が魅惑的でもありミステリアスでもあります。
何時ものことながら訳ありな他人を、躊躇うことなく受け入れてしまう暮林の寛容性には心温まるものがありました。
次第に明かされていく佳乃の過去と、多くの人を欺きながら追い求めたものが痛切です。
事件のほろ苦い顛末とともに、この世から去った後もブランジェリークレバヤシに大きな影を落としている、暮林の妻・美和子の存在が印象的でした。
死者の思いを受け継いで、未来へと歩んでいく人たちの決意が感動的です。
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