大沼紀子「真夜中のパン屋 午前5時の朝告鳥」のあらすじ&ネタバレ

真夜中のパン屋さん 午前5時の朝告鳥

【ネタバレ有り】真夜中のパン屋 午前5時の朝告鳥のあらすじを起承転結で解説!

著者:大沼紀子 2017年6月に株式会社ポプラ社から出版

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真夜中のパン屋 午前5時の朝告鳥の簡単なあらすじ

複雑に身の上の高校生の篠崎希実が夜にだけ開くパン屋「ブランジェリークレバヤシ」に転がり込んでから数年。奔放だった希実の母が他界してから更に5年が経っていた。この5年の間に更なる転機は希実にも、ブランシェの弘基にも、オーナーの暮林にも、そして常連客の面々にも訪れていた。常連客で変態覗き魔の斑目は美しい妻綾乃と可愛い娘百葉子のいる「パパ」となり、綾乃の双子の妹佳乃とパートナーである多賀田はシンガポールで平和に暮らしている。同じく常連のソフィアは家族と和解し、恋人安田との同棲を決めた。希実の弟分水野こだまは家庭の問題が少し落ち着き、ひねくれながらも心根に優しさを秘めた思春期を過ごす。自らの生活の変化に困惑しながらも、誰もが、ある時から突如部屋に引きこもってしまった希実を心の底から心配していた。

閉じこもる希実が一年遅れで無事大学に戻れたのはひとえに階下に集う常連客の温かさと、同居を決めてそばにいてくれた暮林、そして最高のパンを食べさせてくれる弘基のおかげだった。暮林のいる「ブランジェリークレバヤシ」が身内に恵まれない希実の居場所となり、本音で語り合える弘基が恋愛を恐れる希実の恋人となる。フランスでブランジェとして活躍する弘基と日本で就職を決めた希実。孤独な少女だった希実は、いつしか暮林の妻美和子の愛に想いを馳せられるほど、成長していた。

真夜中のパン屋 午前5時の朝告鳥の起承転結

【起】真夜中のパン屋 午前5時の朝告鳥のあらすじ①

五年後の日常

住処をなくした篠崎希実が母の書置きに従い「ブランジェリークレバヤシ」に転がり込んだのは高校1年生の時。「ブランジェリークレバヤシ」は希実の母律子の親友である故・暮林美和子が開こうとしていた夜にだけ営業するパン屋だった。オーナーでパン作りの下手な暮林は、穏やかな性格をした美和子の夫。天才ブランジェの柳弘基は口の悪いイケメンで、実は昔、美和子の繋いだ縁で幼い希実に会っていた。暮林や弘基、常連客とのふれあいの中で明るくなった希実は、彼らの支えもあり「病の母の死」という一大事を乗り越える。

その五年後から、「まよパン」シリーズ最終巻のこの作品は始まる。

五年後、「ブランジェリークレバヤシ」の常連客斑目裕也は自分には不似合いなほどの幸せに戸惑っていた。美人の妻綾乃と愛娘百葉子のいる日常に言い知れない不安を感じる。綾乃の双子の妹佳乃がマタニティーブルーとなったことを心配して佳乃とパートナー多賀田が住むシンガポールを訪れた際、多賀田も斑目同様の居心地の悪さを抱えていると知った。しかし斑目と多賀田は、引きこもりを脱したばかりの希実からの手紙をきっかけに、「幸せでいて良いのだ」と気付く。

一方常連客のソフィアは、心を病んだ希実の前で「強い自分を見せたい」と疎遠だった家族との邂逅を決意した。戸籍は男性、心は女性、見た目は一見すると女性という自分には幸せになる資格はないと考えていたソフィアは、五年後、同じく常連客である安田との幸せな交際を強引に終わらせたところだった。しかし、ソフィアと安田の幸せを願う希実と、希実の弟分である中学生水野こだまの連係プレーで、また「ブランジェリークレバヤシ」で自信の幸せの象徴、安田と会うことを了承するのだった。

【承】真夜中のパン屋 午前5時の朝告鳥のあらすじ②

心の病

奔放な性格で希実の育児を他人に託してきた母の葬儀を終えた後、希実は同級生でこだまの兄美作孝太郎と勉学に励み志望の大学に合格した。希実の夢は国立の大学に入り、在学中に資格を取り、経済的に自立した大人になること。その第一歩を踏み出した希実は、しかし、数ヶ月後、どうしても店の外に出られなくなってしまう。原因は不明。医者の見立てでは「母の死が関係している」というが、希実はその言葉に苛立ちを覚えるだけだった。

希実の不調を受け、オーナーの暮林がマンションを引き払い「ブランジェリークレバヤシ」の二階、希実の部屋の隣に素早く引っ越した。ブランジェの弘基も希実を心配し、暮林の部屋に泊まり込むようになる。希実の好きな食べ物の匂いで気を引いて閉じこもった部屋から出そうとする暮林と弘基。言い知れない絶望感に包まれていた希実は、二人の温かさに次第に部屋を出られるようになった。

【転】真夜中のパン屋 午前5時の朝告鳥のあらすじ③

遠距離恋愛

希実が店に出られるようになったある日、店のパン作りを一手に担っていた弘基が、両親の借金の肩代わりをするため報酬の高い他店からの引き抜きに応じると決めた。引きとめたい希実は伯父の榊に出資を申し出るよう手回しするが弘基はその申し出を断り、「ブランジェリークレバヤシ」を辞めると言う。寂しさに弘基への恋心を自覚した希実に、弘基も思いがけず「じゃあ、俺と付き合ってみっか?」と口にし、希実への想いを自覚する。

引き抜き先の方針でパリに渡った弘基と大学生活に戻った希実。複雑な生い立ちの二人はそれぞれ、相手を好きな気持ちを持て余していた。恋に振り回される母に放置されて育った希実はどうしても、恋愛を恐ろしいもののように感じてしまう。

仕事帰りに寄ったビストロで押し込み強盗に襲われた弘基は、極限の状況の中で希実への強い気持ちを思い知る。

ニューヨークに短期留学に渡った希実は、隠されている実の父親、美和子の兄の家を訪れた。留守の家を眺めながら、母の葬式で初めて会った美和子の兄久瀬篤人のことを回想する。そして、引き籠もっていた間の暮林と弘基のこと、付き合ってからの弘基のことを考えていた。

希実に気付きながらも無視する篤人にショックを受けた希実。その強がりを電話で見抜いた弘基は翌朝一番の飛行機で希実のもとを訪れると決める。迎えを強要する弘基に悪態をつきながらも、希実の気持ちは浮き立ち、そして親のいる場所ではなく「ブランジェリークレバヤシ」が自分の居場所だと改めて実感するのだった。

【結】真夜中のパン屋 午前5時の朝告鳥のあらすじ④

卒業

弘基の抜けた「ブランジェリークレバヤシ」では暮林が不慣れながらパンを作り、常連客の手伝いで店を回すようになっていた。希実の大学卒業と就職が決まったことをきっかけに、暮林は新しいブランシェを雇うと決める。

明るく笑うようになった希実に目を細める暮林は常連客に言われ自分の幸せを考える。苦労した分、弘基や希実達若者の幸せを守ろうと尽力していた美和子を思い出す暮林に、希実は「これまで夜間営業は自分達のような子どもがいつ来ても受け入れられるように美和子が考えてくれたのだ」と思っていたが、本当は、「海外で単身赴任していた暮林の生活と時間帯と同じ時間で営業したいと思って美和子か始めたのかもしれない」と伝える。

美和子の好きな桜の季節、暮林は早朝からうろつく子どもを見つける。暮林は昔美和子がしたように、その子どもに焼きたてのパンを食べさせ、店の場所を教えるのだった。

真夜中のパン屋 午前5時の朝告鳥を読んだ読書感想

全5巻のシリーズの最終巻で、これまでの4冊の伏線を張る展開とは異なる番外編の雰囲気だと感じました。ここまでの4冊で悩み苦しんできたすべての登場人物が、平穏な生活を手にするシーンが多く描かれています。前4冊が希実を主人公に据えた謎解きだったの対し、この巻は斑目、ソフィア、弘基、希実、暮林の順で章毎に主人公が変わっていき、より詳しく、それぞれの幸せへの葛藤が表現されていました。

「真夜中のパン屋」と主題にあるこのシリーズは、パン屋を舞台として使ったうえで、パン各種の美味しそうな表現も散見できます。人間味溢れる謎解き小説としての面と、グルメ小説の空気感が感じられるシリーズ。その最終巻だけあって、この巻でも各章ごとに象徴となる垂涎もののパンが登場します。

軽快な文章とは裏腹に主要な登場人物が全員心の中に重い闇を抱えている「まよパン」シリーズの、優しい救済のための最終巻だと感じました。

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