【ネタバレ有り】愛がなんだ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:角田光代 2003年3月にメディアファクトリーから出版
愛がなんだの主要登場人物
山田テルコ(やまだてるこ)
主人公。二十八歳の会社員。契約社員から正社員になったばかりで、毎日よくわからないアンケートの入力業務をしている。
田中守(たなかまもる)
テルコに一目惚れされた出版社の社員。三十三歳になったら会社を辞める、というのが口癖。
塚越すみれ(つかこしすみれ)
学習塾の事務員。腰まである髪を橙色に染め、奇抜なファッションに身を包んでいる。
葉子(ようこ)
テルコの友人でライター。母とふたり暮らし。
ナカハラ
葉子の恋人のひとり。葉子に忠実に尽くしている。
愛がなんだ の簡単なあらすじ
二十八歳のOLテルコは、五か月前に出会った守に恋をして、彼のことしか目に入らなくなってしまいます。周りからそんなおれさま男はやめろと言われても、同僚との約束を破り、仕事をさぼり、とうとう会社をクビになっても、テルコにとって彼以外はどうでもいいことなのでした。ある日、テルコを家から追い返したきり、守との連絡がとれなくなってしまいます。三か月後に再会した守は、年上の奇妙な女・すみれに熱を上げていました。その日以来、テルコと守、すみれの歪んだ三角関係が始まったのでした。
愛がなんだ の起承転結
【起】愛がなんだ のあらすじ①
五か月前、交際していた男との関係に行き詰っていたテルコは、友人の葉子に誘われた飲み会で田中守と出会いました。
あいさつした次の瞬間にふたりは打ち解け合い、十二時を過ぎた頃、守はふたりで飲みなおそう、と誘います。
手をつないで抜け出したテルコと守は、バーで温かいラムを飲み、キスをして、おたがい帰りがたい気持ちを抱いてはいましたが、別々のタクシーに乗って家に帰ります。
翌朝、調子に乗らなくてよかった、守とはもう会うことはないだろうとテルコは思いますが、一週間後、テルコの会社に守から電話がかかってきて食事に誘われ、四回目の食事のあとでふたりは関係をもつようになります。
テルコは引きずっていた男を清算し、このまま守との交際が始まるのだろうと確信しましたが、守は自分の都合のいい時に気まぐれに連絡をよこして誘い出すだけで、いまだにふたりは恋人にはなれていません。
守に出会ってから世界のすべてが「好き」と「どうでもいい」しかなくなってしまったテルコは、好きでたまらない守のためなら、自分自身のことさえ「どうでもいい」と感じるようになっていきます。
守の誘いに応じるために会社の女友達との約束をドタキャンし、就業中に携帯電話で長話をし、遅刻・早退・居眠りを繰り返した挙句に、やる気がないなら辞めてほしい、と上司に言い渡されてしまうテルコですが、守といられるならばこんな罰は恐れるに足りないと、守との結婚まで妄想し始めます。
しかし、これからは暇だから雑用でも何でも使いっぱしりにしてくれて構わないと言うテルコに、守は突然不機嫌になり、テルコを家から追い返してしまいます。
【承】愛がなんだ のあらすじ②
拒絶された理由になんの心当たりもないまま、それきり電話はつながらず、守と連絡がつかない日々が過ぎて行きますが、テルコは守に避けられていることを認められずにいます。
みやげ物を渡したいと呼び出された高校時代の同級生・山中吉乃に、守の振る舞いをどう思うか、話し始めて止まらなくなるテルコ。
吉乃はそんな都合のいい女はやめろと忠告し、自分が男をいかに教育しているかを語り始め、いたたまれなくなったテルコは予定があると嘘をついて、そのまま守のアパートに向かいます。
守の部屋に明かりがついているのを見てテルコは安堵し、守が受け入れるか拒絶するか確かめたくて電話をかけますが、やはり電話はつながらず、途方にくれて駅までの道を歩いていきました。
守と連絡がつかないまま迎えた大晦日、テルコは葉子の家で年越しをしようと誘われますが、葉子は自分の恋人のナカハラとテルコを残してひとりで出かけていってしまいます。
葉子を通してしかつながりのないテルコとナカハラが、言葉も交わさずちびりちびりと酒を酌みかわして葉子を待っていると、葉子の母が料理を持って入ってきて、出かけてしまった葉子の文句を言い出します。
つられてテルコも、ナカハラくんに対して葉子はいい気になりすぎだ、何様だと言い始めますが、言いながら守のことを思い出し、葉子に文句を言っているのか守に向かって言っているのか、自分でもわからなくなってきます。
しかしナカハラはテルコの言葉をさえぎり、葉子さんはやさしい、と怒る様子を見せません。
年越し蕎麦を食べながら、ナカハラは、葉子がすごくさみしくて誰でもいいから会いたいときに、呼び出してもらえるようになりたいのだとテルコに話します。
ナカハラとふたり、窓から身を乗り出して除夜の鐘を聞きながら、テルコは自分たちが飼い主を待ち続ける犬のようだと感じていました。
【転】愛がなんだ のあらすじ③
三か月の空白ののち、何もなかったかのような口ぶりで守から誘いの電話がかかってきました。
舞い上がって出かけて行ったテルコに、守は奇抜な恰好をした年上の女・すみれを紹介します。
合コンで知り合ったというすみれは、飲み同盟をつくろう、と言ってテルコにも親しげに話しかけてきますが、店を出ると、ひとりでタクシーに乗りこんで素っ気なく去っていきました。
守とふたりきりになったテルコが、恋人ができたからもう連絡するなということか、と冗談めかして言うと、守は、そういう自意識過剰なところが苦手だ、気を使わないすみれを見ならえ、と言い捨てて帰っていきます。
すみれと会った日から、なぜ私はすみれではないのかという思いに苛まれ、散らかった部屋に閉じこもるようになってしまったテルコを、葉子が訪ねてきて、自分の父親を引き合いに出して守をこき下ろし、最後にはテルコと葉子はふたりで笑いながら部屋を片付けます。
職探しをやめて近所の健康ランドでアルバイトを始めたテルコは、ある日の仕事帰り、すみれからの突然の誘いで、すみれの家を訪ねて行きます。
しかし、会えると期待した守はおらず、酔いが回った頃、テルコはトイレに隠れて守に電話をかけ、すみれの家に来ないかと誘います。
やってきた守は、友人の膝枕で眠ってしまったすみれを見て、突然すみれの家を出ていき、後を追って出てきたテルコの部屋に行こうと言います。
酔った守は、自分はかっこ悪くて好きになるようなところはない、とテルコにぼそぼそと話し始めます。
好かれるようなところがないのだからすみれなんて無理だ、だから私でいいじゃん、とテルコは答えますが、守は笑うだけで、そのまま眠ってしまいます。
【結】愛がなんだ のあらすじ④
すみれはテルコをしょっちゅう飲みに誘うようになり、テルコはすみれを通して守につながろうとしているのか、守の願いを叶えようとしているのか、自分の本心がわからなくなってきていました。
守はすみれのために夏休みに海に行こうと計画を立て、しつこく同行を求められたテルコは根負けして承諾します。
海から帰ってくるなり熱を出したテルコを、守は話があるから会いたいと呼び出し、もう会うのをやめよう、と切り出しました。
葉子からあなたのしていることはおかしいと言われた、テルコの気持ちは考えたことがなかったと言う守に、テルコは苦し紛れに、もう好きじゃない、守はうぬぼれていると答え、海で紹介されるはずだった守の友人とさっさと引き合わせるように言って、何とかその場をごまかします。
本格的に体調を崩して寝込んでいたテルコに、ナカハラが、もう葉子には会わない、好きでいるのをやめる、と言って連絡してきます。
別れ際に手を振るナカハラに無性に苛立ったテルコは、彼の後ろ姿に向かって、きれいごとだ、手に入らないから諦めたんだ、と大声で罵倒します。
一緒にさまよっている朋友だと感じたナカハラが去ってしまい、これからはたったひとりでやらなくてはならないと、テルコは決意します。
海で会うはずだった守の友人・神林を紹介された席で、テルコは守とすみれに向かって、守はいい人だけど好きにはならないと告げ、神林にふたりで抜けようとこっそり持ちかけます。
テルコは、神林といればその友人である守とつながっていられると打算し、その計画は思いのほかうまく進むかもしれない、という予感を感じていました。
そそくさと帰り支度をして、テルコは神林の腕をとり、振り返って守に笑いかけ、店を出るのでした。
愛がなんだ を読んだ読書感想
最初のうちは、自分の思いを伝えられず、守のいいなりになるテルコの姿に少しイライラしましたが、時折挿入されるテルコの過去、自己嫌悪や自尊心の低さ、守との関係が壊れることを恐れる気持ちなど、細やかな内面の描写を読むうちに、しだいに自分の中にもテルコと同じ部分があると思うようになっていきました。
結末はどんでん返しと言っていいほど意外なものでしたが、覚悟を決めたテルコのしたたかさやたくましさに成長が感じられ、爽快感も覚えるようなラストでした。
きれいでもなく、恰好よくもないグダグダの恋だけれど、あーわかる、と思わされてしまう、胸がチクッと痛むような場を誰もが見つけられるのではないでしょうか。
巧みな心理描写が読みごたえのある小説でした。
愛がなんだ 実写映画化4月19日より全国映画館でロードショー
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