町田康「告白」のあらすじ&ネタバレ

告白

【ネタバレ有り】告白 のあらすじを起承転結で解説!

著者:町田 康 2005年3月に中央公論新社から出版

告白 の簡単なあらすじ

百姓の長男、戸城熊太郎は少年時代、森の小鬼と名乗る子供と相撲をとり、相手に怪我を負わせてしまう。

森の中で再会した小鬼は小鬼の兄と一緒だった。

兄は弟に怪我を負わせた熊太郎を殺そうとするが熊太郎は逆に兄を殺してしまう。

無事に生還した熊太郎は人を殺めてしまったことに後悔し、どうせいつか捕まってしまうのだからと自暴自棄になりやくざの道にすすむ。

大人になった熊太郎は働かないで毎日博打を打っていた。

そこで出会ったのが少年の弥五郎だった、この少年とは10年後に再会しそれから生涯を共にする。

そして村の権力者の長男、永松熊次郎と出会う。

この熊次郎は根性が腐った奴で熊太郎は度々お金を騙し取られることになる。

それから熊太郎は奈良で寅吉という出会う。

寅吉は熊次郎の弟だった。

寅吉は熊太郎達と行動を共にするようになる。

そのうち熊太郎は縫という美少女と内縁の関係になるが、寅吉と縫の密通が発覚する。

熊太郎は縫の母トラに渡す仕送りの金を用意するために、熊次郎に貸した金を返すように催促する。

しかし熊次郎は知らないととぼけ、手下に熊太郎を袋叩きにするよう命じる。

永松家に妻、お金を騙しとられた熊太郎は復讐を決心し弥五郎と共に永松家の人々、内縁の妻縫、おトラ、次々に殺害した。

これがのちのち河内十人斬と呼ばれる事件だ。

逃走した二人は山に立てこもりましたが熊太郎が弥五郎を射殺、そのあと自決してしまう。

なぜ人を殺すのかを題材にした町田康の長編小説。

告白 の起承転結

【起】告白 のあらすじ①

熊太郎の幼少期

河内の水分で父母の寵愛をうけて育った百姓の長男、戸城熊太郎。

熊太郎は自分の思弁的なところ、人より不器用で臆病な事に気づき次第に劣等感を感じることになる。

周りの者は思考=言葉となっていて考えたことが即座に言葉となる。

しかし熊太郎は自分の考えている事を上手く言葉に変換することができきないのだ。

これは熊太郎の生まれつきの不幸だった。

熊太郎はいつも一生懸命にやって失敗するのが恥ずかしく本気を出さないでは周りの餓鬼たちにいじめられていた。

ある時友人達と相撲をとった熊太郎はコツを習得し5人抜きで勝利した。

熊太郎は悟ったのだ。

弱い自分でも相手の力をつかって奇策、奇略で勝つことができると。

それから熊太郎は水分の餓鬼たちの間で熊やんは強いといわれ悪ガキたちのリーダーになっていく。

しかしこれは一種のフェイクでいつか自分が本当は弱いということが露見してしまうのではないかと眠ることができなくなる。

そのあと熊太郎は威嚇の仕方を覚え、弱い人でも相手を倒せる技も会得し、熊太郎は強いというイメージを操作した。

これで熊太郎は本当は滅茶苦茶弱いということを封印することができた。

【承】告白 のあらすじ②

小鬼との出会い

ある日、村の者ではない森の小鬼と名乗る、つり目で真っ赤な唇な気色の悪い子供と相撲をとることになった熊太郎。

相手を投げ飛ばし怪我を負わせてしまう。

そのまま餓鬼たちと逃げた熊太郎は風車が何者かによって破壊されている所を発見する、熊太郎は森の小鬼がやったと考えた。

しかし風車の持ち主は悪ガキの熊太郎達がやったと言いがかりをつけ熊太郎達の両親に風車の弁償するように迫る。

熊太郎達は親たちに言われ、熊太郎は駒太郎、鹿造、番太、三之助とともに森の小鬼を探すためにでかける。

水越峠を超え御所に向かう途中で小山を発見したので目指して歩くことにした。

その道の途中で小鬼を発見したのだ。

しかし小鬼は小鬼の兄と一緒だった。

小鬼の兄は頭が異様にでかく不気味な風貌で餓鬼たちは熊太郎を置いて逃げてしまった。

小鬼と兄は熊太郎を岩室に引っ張ていっていく、中には石の装飾品、盃、宝石が散乱している古代豪族の墓、御陵だった。

自分達は豪族の子孫だといい、御陵に入ったのが露見すればお前は死罪になると熊太郎を脅した。

兄は熊太郎を殺すといい、小鬼に見張りを頼み、熊太郎を殺そうとした。

しかし熊太郎は御陵にあった錆びた剣で反撃しドールを殺してしまう。

初めて人を殺めた熊太郎は呆然とする。

熊太郎が他人に対して暴力をふるったのは初めてで熊太郎は自分が暴力というものを極端に厭悪していることを知った。

それは罪を恐れたからだ。

死罪が恐ろしいのだ。

熊太郎は兄の死体を岩室に隠した。

【転】告白 のあらすじ③

弥五郎、縫との出会い

生還した熊太郎はこの事件をきっかけに自堕落な生活になっていく。

いつか捕まって死罪になるのなら真面目に働いていても意味がないと思ったのだ。

働くことはなく博打をしては酒を飲んだ。

周りの友人たちはいつしか熊太郎と付き合うことは減っていく。

23才になった熊太郎は賭場で14才の弥五郎という少年と出会う、賭場の大人達は弥五郎からお金を巻き上げ暴力をふるった。

それを目撃した熊太郎は子供だった自分を殺そうとした小鬼の兄を思い出し、良心で弥五郎を助けたのだ。

それから10年後、弥五郎と熊太郎は水分で再会を果たす。

弥五郎は過酷な人生を歩んでおり、立派な任侠になっていた。

10年前に熊太郎助けられたことで命の恩人として、熊太郎の事を兄貴と慕うようになり、熊太郎の人生で唯一深く絆を結ぶことになる。

一時は真面目に働こうと思った熊太郎だが周りの友人達は立派な百姓になっていて周りと比べてすぐに挫折してしまう。

そして小鬼に風貌が酷似している永松熊次郎という男と出会う。

熊次郎は熊太郎と同じように博打ばかりだったが親が村の権力者ということで一目おかれていた。

熊次郎はお金のためならどんなことでも手段を選ばず、熊太郎を陥れお金をだまし取り、村の皆とあざ笑う、根性が腐った奴だった。

この熊次郎との出会いが熊太郎の人生を大きく変える。

ある時弥五郎と奈良に出かけた際にお金がないのに遊郭で遊んで困っていた寅吉を助けるのだが寅吉は熊次郎の弟だった。

寅吉は熊次郎の事を自分の兄貴ながら根性が腐っているといい、熊太郎達と共に行動するようになる。

熊太郎は寅吉と自分は似ているところがあると感じていた。

弥五郎と寅吉には小少年時代に子鬼の兄を殺した事、殺した兄を御陵に隠した事、御陵には宝石、装飾品が残っていることを打ち明ける。

この二人の事は信用していたのだ。

やがて熊太郎は村の17才の少女、縫に一目ぼれをし恋に落ちる。

このとき熊太郎は34才だった。

【結】告白 のあらすじ④

河内十人斬り

縫と熊次郎に縁談の話が持ち上がり、熊太郎は熊次郎に縁談を破談にするように頼む。

熊次郎はお金を積めば考えてやるといい大金を要求する。

熊太郎は大金を用意し、縫との縁談を破談にした。

縫と一緒に生活するようになった熊太郎だが以前通り働きもせず弥五郎と出歩いてばかりだった。

そのあと熊次郎から借金を作ってしまったのでお金を貸してくれと頼まれる。

熊太郎は土下座している熊次郎をみて証文を書かせお金を貸してしまう。

しばらくして、寅吉と縫が間男しているのが露見し、熊太郎は憤る。

縫が自分を裏切った、また縫の相手が親近感をおぼえていた寅吉だったため、熊太郎は二重に苦しみ悲しんだ。

熊太郎はトラに仕送りをしていなかったのでトラから甲斐性なしだから間男されるんじゃと罵倒され、熊太郎はトラに渡す仕送りのお金を工面するために熊次郎にお金を返すように催促に証文を持ち永松家に向かう。

熊次郎はお金を催促にきた熊太郎に、とぼけて逆にお金を渡せと罵声を浴びせた。

そのあと熊太郎は永松家の手下に袋叩きにあう。

ボロボロになった熊太郎はお金も妻も奪った永松家に復讐を誓う。

弥五郎も浅井家という家に痴情のもつれの恨みがあったので浅井家、永松家の復讐を熊太郎と一緒に誓った。

熊太郎と弥五郎は全財産を売り払い銃、刀剣を入手した。

刀を腰にさし右手に銃、腰には爆弾をつけて二人で永松家に奇襲をかけた。

赤子も女も関係なく家の人間を次々と殺していった。

熊次郎は啜り泣き、懇願したが弥五郎と熊太郎、二人に刀で切り刻まれ死んだ。

熊次郎は縫も斬った。

しかし、寅吉と寅吉の父、浅井家への復讐は失敗した。

事件後、熊太郎と弥五郎は山にこもり警察から逃げる。

熊太郎は籠城生活で地獄が恐ろしくなっていく、地獄にいくのなら少しでも長生きして善行を積むのがいいのではないかと考える。

しかし弥五郎は浅井家への復讐を捨ててはいなかった。

熊太郎は浅井家への復讐を止めるために弥五郎を銃殺した。

しかし救われると思ったが救われず、激しく後悔します。

そして、胸に銃口をあて引き金に足指をかけ、最後に本当の事を言おうとします。

本当の本当の本当のところの自分の想いを心の奥に探ります。

しかし、なにも出てこない。

涙があふれます。

自分がさがしていたものは最初から無かったのです。

熊太郎は『あかんかった』と残し自害します。

告白 を読んだ読書感想

河内弁独特の言い回しや軽快な文章で熊太郎の一生を書いています。

主人公熊太郎は河内十人斬りのモデルになった実在する人物です。

熊太郎は自分に甘く、働かない、極道ですが根っからの悪人ではありません。

力での暴力を嫌い良心から弥五郎を助けたり、熊次郎の土下座を見て何度も裏切られているのにお金を貸したりします。

そんな人間がなぜ幼児、赤子まで殺害する凶悪事件を起こしたのか。

しかし物語が始まった時から熊太郎は大量殺人を犯すように進んでいきます。

まるで生まれた時から決まっていたようにです。

熊太郎の生まれ持った最大な不幸、自分の考えと口から出る言葉が違うという事を周りに共感できる人間がいなかったのが熊太郎をより孤独にさせたのでしょう。

上手く熊太郎に感情移入してしまい、熊太郎に幸せになってほしいと願うのですが一つの小さな過ちが雪だるまのように大きくなっていき、どんどん熊太郎を苦しめているのをみると胸が痛みます。

村の者から疎まれ、搾取されてきた人間ですが弥五郎だけは熊太郎を兄貴と慕います。

その弥五郎を自分が救われたいが為に殺します。

しかし救われず…完全にドツボにはまっていきます。

今まで自分の中の本当の気持ちを口にすることができなかった熊太郎は殺人を犯してようやく気づくのです。

探しているものがもともと無かったということに。

物語の終盤最後の『あかんかった』に重みを感じました。

この一言にこの物語のすべてが詰まっています。

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