「たすけて」
暗くて狭い物置の中で、ボクは誰に言うでもなくつぶやいた。
寒くて寒くてたまらない。
「生意気なガキは倉庫で反省してろ!」
そう言うと父さんはボクをここに放り込んだ。
それからもう丸1日以上たっているはずだ、
ぶたれた頬の痛みも、1月の厳しい寒さのせいで感覚がない。
ボクはただただ震えながら、許してもらえるのを待っている。
父さんはお酒を飲むといつもママを殴った。ボクがやめてって言うとボクを殴る。
それをママがかばうから僕らはいつも痣だらけだった。
きっとお酒が悪いんだ!
そう思って父さんのお酒を隠しさえしなければ……いつものように数回殴られるだけで済んだのかもしれない。
ボクがもっと強ければ、お母さんも守ってあげられるのに……
なんだか眠たくなってきた、肌を刺すようだった寒さも今はもう何も感じない。
ガッガタッ
薄れ行く意識の中で朦朧としていたら突然大きな音が響いた、
目を開けると扉が壊され真っ暗だった倉庫に光が差していた。
「あきらくん、もう大丈夫だよ。」
それが後に誘拐犯と言われる、ボクにとってはかけがえのないヒーローとの出会いだった。
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