【ネタバレ有り】宇宙の坊っちゃん のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:かんべむさし 1978年12月に徳間書店から出版
宇宙の坊っちゃんの主要登場人物
俺(おれ)
宇宙間渉外庁のパイロット。
宇宙間渉外庁長官(うちゅうかんしょうがいちょうちょうかん)
年配の男性。俺の上司。
宇宙貿易学部助教授(うちゅうぼうえきがくぶじょきょうじゅ)
神楽坂経済大学の助教授。俺におべっかを使う。
宇宙消費者連合会長(うちゅうしょうひしゃれんごうかいちょう)
独身女性。俺に色目を使う。
宇宙の坊っちゃん の簡単なあらすじ
就職先に迷っていた「俺」は、誰にでも出来ると評判な宇宙船のパイロットに応募します。意外なほど簡単に訓練を修了して実地での任務に励んでいたある日、一癖ある3人の男女を宇宙貿易交渉の場に送り届けることになるのでした。
宇宙の坊っちゃん の起承転結
【起】宇宙の坊っちゃん のあらすじ①
先祖代々の軽率人間の家系に生まれた俺は、よく考えずに行動して損ばかりしていました。
せっかく内定が決まっていた海底工場への就職を、卒業直前に「泳げない」という理由から断ってしまいます。
求人センターで新たに紹介されたのは、かつては強靭な肉体と卓越した頭脳を持つ者にしか許されなかった宇宙航空士です。完全にマニュアル化された操縦システムによって誰でも成れる今では、かえって成り手は見つかりません。面倒なことは全てその道の専門家にお任せなために、宇宙艇に乗り込んでコンピューターの指示に従ってボタンを押すだけですだけの退屈な職業ですから。
あっさりと採用された俺は仕度金を受け取り、富士山麓の訓練センターで研修に望みます。
ライセンスを無事に取得した後に配属されたのは、宇宙間渉外庁と呼ばれている外務省関連の部署です。VIP専用の宇宙艇に乗り込んで日夜惑星間を飛び回っていた俺は、ある時に3人の厄介な人物のお相手をすることになりました。
【承】宇宙の坊っちゃん のあらすじ②
本来であれば明日から3日間は纏めて休暇を楽しめるはずでしたが、言葉巧みな上司に丸めこまれて休日返上で任務を遂行しなくてはなりません。
派閥争いに巻き込まれたために現在のポジションでストップしているというお役人気質の宇宙間渉外庁長官、太鼓持ちの血を引く助教授、やたらめったら馴れ馴れしい宇宙消費者連合の会長。先行き不安な一向を引き連れて向かった先は、大宇宙連合の貿易交渉部会です。共用会議場となるのは地球から遥か彼方にあるサバス星という辺境の惑星ですが、ワープ航法によって一瞬で時空を飛び越えるのは造作もありません。
会議は昼夜ぶっ通しで行われる予定で、3日後に迎えに来るつもりでしたが宇宙船内で待機しているように命じられてしまいました。
好奇心だけは人一倍旺盛な性格から、俺は3人のお供として現地での会議を見学してみることにします。巨大なドームに覆われた入り口には、続々と銀河系からの代表団が集結していました。
【転】宇宙の坊っちゃん のあらすじ③
蛇のようにとぐろを巻いた高等生物、液体タイプのケチャップ人間、羽根が回転翼式に進化したヘリコプター女、伸縮自在な肉体が特徴的なアコーディオン男。
会場内は実に多種多様な宇宙人によって埋め尽くされていて、あれやこれやと議論が巻き起こっていました。
それぞれのブースからは同時通訳用のコードが伸びていて、思考をそのまま銀河系共通言語に変換して伝え合うことができます。
異星人が相手なだけに一方間違えれば惑星間戦争に発展する危険性もありますので、コミュニケーションには気を遣わなければなりません。
自分たちの星の全輸出品目をアピールする恰好の場でもあり、地球からの代表として3人に課せられたその責任は重大です。しかしながら消費者連合会長は本来の使命を忘れて宇宙人たちとの婚活に夢中で、助教授は幇間の血筋が騒ぐのか愛想を振り撒くばかりでした。
3人の一挙手一投足に場内がどっと沸くために、俺は些細な違和感を覚えていきます。
【結】宇宙の坊っちゃん のあらすじ④
別室に設置された生中継用のモニターと通訳装置を発見した俺は、ようやく3人がここに呼ばれた理由にピンときました。
地球との貿易交渉は二の次で、芸人として見せ物にすることこそが最大の目的です。
元々3人に対しては良い印象を抱いていませんでしたが、ご先祖様はチャキチャキの江戸っ子で地球人が侮辱されるのだけは許せません。
愛媛県松山市で姑息な田舎教師たちの横暴に耐え兼ねて大暴れを繰り広げた先祖のように、怒り心頭に発した俺は通訳コードを引きちぎり中継モニターをひっくり返して地球代表として怒りの鉄拳をお見舞いします。
地球に帰還した俺の話はお堅い上司にはまるで信じてもらえずに、挙げ句の果てにはパイロットライセンスを取り上げられて休職処分になり精神衛生センターに収用されてしまいました。
宇宙の坊ちゃんであるはずの俺は今でも閉鎖病棟から出ることは出来ずに、「貿易団長」に任命されたあの3人は星々を旅しながら巡業を続けているようです。
宇宙の坊っちゃん を読んだ読書感想
就職先にあぶれた青年が宇宙飛行士となるオープニングから皮肉たっぷりです。先祖代々の軽率人間でろくすっぽ考えずに行動して損ばかりしている主人公が、求人センターで応募してあっという間に3級宇宙航空士の資格を取得する様子が笑いを誘います。
テクノロジーの発達した近未来において誰しもが気軽に宇宙飛行士になれるだけに、なり手がなかなか見つからない現状がリアリティ溢れていました。
銀河系からありとあらゆる異星人たちが集まってくる大宇宙会議へと、3人の親善大使を引き連れて地球を旅立っていく姿が勇ましかったです。
喧嘩っ早くチャキチャキの江戸っ子気質な主人公と、個性豊かな宇宙人たちとの繰り広げられる大乱闘が迫力満点でした。
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