「ポトラッチ戦史」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|かんべむさし

ポトラッチ戦史(かんべむさし)

【ネタバレ有り】ポトラッチ戦史 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:かんべむさし 1977年4月に講談社から出版

ポトラッチ戦史の主要登場人物

コロンブス(ころんぶす)
15世紀イタリアの航海者。ポトラッチを世界に伝える。

ヒトラー(ひとらー)
20世紀ドイツの浮浪者。第二次世界ポトラッチ大戦の火付け役。

トウジョウ(とうじょう)
20世紀日本の大東亜ポトラッチのリーダー。

ブラウン(ぶらうん)
20世紀末のアメリカ大統領。

イワノフ(いわのふ)
20世紀末のソ連の首相。

ポトラッチ戦史 の簡単なあらすじ

コロンブスは前後4回の遠征によってカナリー諸島から西へと進んでいき、バハマ諸島からプエルトリコへと向かっています。ようやく新大陸へと辿り着いた一向を待ち受けていたのは、「消費」を最上級の美徳と掲げる先住民族・チヌーク族です。このポトラッチが世界各国へと広がっていき、人類滅亡の危機にまで発展していくのでした。

ポトラッチ戦史 の起承転結

【起】ポトラッチ戦史 のあらすじ①

捨てることこそが最大の美徳

新大陸に降り立ったコロンブスは、原住民の代表者と思われる威厳たっぷりとした老人と物々交換を始めました。

こちらがガラス玉を渡せばあちらからは熊の毛皮、鏡を渡せば紋章が刻まれた銅板、金貨を渡せば飾りの付いた手斧といつまでたっても終わりそうにありません。

意地になったコロンブスは乗ってきた船を1隻まるごとプレゼントすると、首長は部族の守り神だというトーテム・ポールを破壊し始めます。

これはこの地方一帯に代々受け継がれてきた「ポトラッチ」という風習で、自らの大切なもの気前よく破棄することによって首長の威信を内外にアピールするためです。帰国したコロンブスが女王や貴族にポトラッチを大袈裟に吹聴したことによって、あっという間に世界各国へと広まっていきます。富裕層は先を競って土地や財産を手放すことによって、自身の権威を高めていくことに夢中です。更には国と国の争い事にも、ポトラッチの観念が持ち込まれるようななっていくのでした。

【承】ポトラッチ戦史 のあらすじ②

ふたつの世界ポトラッチ大戦

第一次世界ポトラッチ大戦のきっかけは、オーストリアが自国の皇太子を殺害して自慢してみせたことでした。

直ちにドイツが参戦して、最先端の科学力を結集した毒ガスや機関銃を惜しみ無く隣国に配ります。

イギリスやフランスがこれに負けじと、国家財源のばら蒔きに乗り出す始末です。余りの馬鹿馬鹿しさに各国が国際連盟をつくって、ポトラッチ防止条約を締結することによってようやく終息が訪れました。

ヒトラーというポトラッチ熱狂者がドイツ国民の心を掴み、第二次世界ポトラッチ大戦へと発展するのにそれほど時間はかかりません。

東ヨーロッパやアフリカの植民地をユダヤ人団体に寄付して、国内の歴史的な文化財に次々と火を放ちます。

これに呼応したのは、大東亜ポトラッチを主張するトウジョウです。戦艦大和や零戦を爆破するだけでは物足りないために、太平洋の小さな島から東南アジアの占領地までを進呈します。

仕上げは自らの命をかけた究極のポトラッチ、「ハラキリ」でした。

【転】ポトラッチ戦史 のあらすじ③

ポトラッチを繰り返さないはずが

第二次世界ポトラッチ大戦が終結してから半世紀が過ぎようとしている1996年、アメリカのブラウン大統領はホワイトハウスからテレビモニターを通じて全国民に語りかけていました。

アメリカは世界一の富を誇る国で、今までもこれからも決して尽きることはないと豪語しています。

これを見た9億人の人民を率いるリン主席や、クレムリンで指揮を執るイワノフ首相も黙っていません。

50年間続いてきた反ポトラッチの誓いは瞬く間に破られて、第三次世界ポトラッチ大戦へと突入です。デトロイトの自動車からロッキードの飛行機、果てはコカ・コーラやハンバーガーにフライドチキンまで。

20世紀のアメリカの繁栄を象徴する品物は片っ端から壊されていきます。対するソ連はダイアモンド鉱山や油田を始めとする、豊富な天然資源の爆破を躊躇うことはありません。

近隣諸国が長期戦を覚悟し固唾を飲んで見守る、ふたつの超大国による核兵器のポトラッチによって一瞬でけりがつくのでした。

【結】ポトラッチ戦史 のあらすじ④

地球上で最後のポトラッチ

ベガトン級の水爆のスイッチが押されたことによって第三次世界ポトラッチ大戦は僅か10日で終了となり、地球上に国家はなくなって辛うじて生き延びた人間も広がる死の灰でバタバタと倒れていました。かつてパリという都市があったあたりに、たったひとりだけジョンという白人男性がいましたが放射能を大量に浴びているために余命いくばくもありません。昔インドの港町として栄えたカルカッタにはマサノリという最後のアジア人がいましたが、こちらも息をひきとる寸前です。

ジョンとマサノリは薄れゆく意識の中でも、残された力を振り絞ってテレパシーで交信を試みます。親から祖父母へ、ご先祖様から何代も遡ったその先へと、ふたりの脳裏には走馬灯のようにこれまでの人類の歴史が流れ込んできました。

マサノリはアジア代表としてアンコール・ワットやバーミヤン寺院を、ジョンはヨーロッパの誇りをかけてロンドン塔や凱旋門を。ふたりは最後のポトラッチを戦い続けていくのでした。

ポトラッチ戦史 を読んだ読書感想

アメリカ太平洋岸からアラスカ南部の広大な地域にかけて暮らす先住民族独特な風習からインスパイアされた、奇想天外なストーリーに引き込まれていきました。

大切なトーテムポールや自分の豪邸を躊躇いもなく破壊することによって自分自身の権威を内外にアピールしていく首長には、拝金主義に憑りつかれている現代社会を思い浮かべてしまいます。

この消費合戦に俄かに対抗意識を燃やしてしまったコロンブスが、乗ってきた船をあっさりと沈めてしまうシーンがユーモアたっぷりです。

15世紀の新大陸から20世紀の破滅的な歴史へと繋がっていく、予想外な展開に驚かされました。

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