【ネタバレ有り】ガソリン生活 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:伊坂幸太郎 2016年3月に朝日文庫から出版
ガソリン生活の主要登場人物
緑デミ(みどでみ)
緑のデミオ。本作の主人公。仙台に住む望月家の所有車。
望月良夫(もちづきよしお)
望月家の長男の大学生。のんきでお人好しな性格。
望月享(もちづきとおる)
望月家次男。大人びた小学生。緑デミからは望月家のブレーンと考えられている。
荒木翠(あらきみどり)
仙台出身の女優。家柄が良い上に、謙虚で明るい性格。私生活は常にパパラッチに狙われている。
玉田憲吾(たまだけんご)
記者。荒木翠を追っている。
ガソリン生活 の簡単なあらすじ
本作は望月家に所有されている緑のデミオ(通称、緑デミ)の視点で描かれるミステリーです。ある日曜日、良夫と享がドライブに行った帰りに突然車に乗り込んできたのは、有名女優の荒木翠でした。車同士のおしゃべりを織り交ぜながら事故の謎解決がされていきます。仲良しな望月家、個性豊かな車達と愉快な会話、車の視点でストーリーが進んでいく斬新な物語です。
ガソリン生活 の起承転結
【起】ガソリン生活 のあらすじ①
緑デミは望月家の所有車です。
普段は望月家の駐車スペースに停められており、お隣に住むフランク・ザッパ好きの校長先生・細見氏に所有されているザッパ(白のカローラGT)とおしゃべりをして毎日を過ごしています。
車同士は排気ガスが届く範囲であれば話すことが可能なため、よくやってくる黒ニコ(宅急便のトラック)ともおしゃべりをしますし、走っている途中も対向車と話すこともあります。
車は非常におしゃべり好きですが、人間に運転されてコントロールされる身であるためどの車も事故にあうことや車検を怖がっています。
また、自分の意思に反して人間の感情に任せて鳴らされるクラクションという機能は下品で不要だと考えています。
最近、望月家の長男で大学生の良夫が運転免許を取ったため、運転初心者で緊張する良夫に運転されることが多くなりました。
【承】ガソリン生活 のあらすじ②
ある日曜日、良夫と享が緑デミでドライブに行った帰りに突然車に乗り込んできたのは、女優の荒木翠でした。
女優でありながら謙虚で明るい性格の翠に好印象を抱いた良夫と享でしたが、翌日翠がトンネルで起きた事故により亡くなったニュースを聞き驚きます。
ニュースによると、荒木翠とその浮気相手がパパラッチから追われて逃走していましたが、スピードを出しすぎてトンネル内で事故にあい、車と共に中にいた2人もすべて燃えてしまったということでした。
緑デミは最後に荒木翠を乗せたことを誇りに思うとともに、事故にあった車のことを残念に思います。
事故のとき追っていたパパラッチは助けもせずに写真を撮り続けていたという話だったので、なんとか制裁を加えてやろうと良夫と享はパパラッチの玉田憲吾に会いにいきますが、大した収穫は得られません。
【転】ガソリン生活 のあらすじ③
その頃、望月家の次女・まどかとその彼氏の江口は物騒な事件に巻き込まれており、江口の昔からの知り合いであるトガシさんをリーダーとするグループに死体の運び屋をさせられそうになっています。
事態に気づいた良夫と享たちは、まどかと江口が呼び出された潰れたパチンコ店に向かいます。
暴力を振るわれ絶対絶命の望月家ですが、お隣の校長先生・細見氏と玉田がザッパに乗って現れます。
なにか事件が起こりそうだと勘が働いた玉田は望月家の様子を訪ねに行き、望月家が留守だったためお隣の細見氏に相談したのでした。
細見氏は仕事柄不良を相手にすることに慣れており、見事望月家を救出します。
その頃、車同士の会話の中で、トンネル事件のあった日に玉田を乗せていたマーチのことが噂されます。
その日玉田はマーチで荒木翠とその浮気相手・丹羽を追っていたはずなのに、事故が起こった後一度タクシーでその場を離れてまた戻ってきたということでした。
緑デミとザッパは望月家の話と車の噂を合わせても不明な点が多くいろいろな憶測を立てますが、事故は謎のままでした。
【結】ガソリン生活 のあらすじ④
望月家の次男・享はイギリスのダイアナ妃の話やトガシが行方不明になっている事実を聞き、事故の謎を解いてしまいます。
事故の日、玉田はトガシが人殺しに関わっていることを知り、トガシを追っていたのでした。
スピードを出しすぎたトガシの車は事故を起こし炎上します。
そこで玉田は荒木翠をパパラッチに追われる人生から助ける作戦を思いつきます。
事故で死んだトガシとその彼女を、荒木翠と丹羽が死んだとすり替えて記事にしたのでした。
つまり、玉田は荒木翠とその浮気相手を追いかけた挙句に事故にあわせてしまったのではなく、今後パパラッチに追われずに2人が別の場所で暮らしていけるよう、事故死に見せかけたのでした。
死体は燃えてなくなりますが、警察は歯で誰かを判定するだろうと考え、すぐにタクシーでその場を去り、歯医者にあるレセプトをすり替えて工作したのでした。
このトンネル事故の真実は緑デミから他の車へと拡散され、車の間では荒木翠が実はどこかで生きていることは有名な話になりますが、人間の世界では彼女は事故死した女優として扱われるのでした。
ガソリン生活 を読んだ読書感想
車が主人公のミステリーは斬新で、面白く読ませていただきました。
ミステリー…というより、車のおしゃべりの内容や個性あるキャラクターの感情が描かれていて、読み応えがある作品です。
人間たちには気づかないけれど、車は排出ガスが届く範囲で会話をしているという設定は不思議ですが興味深くもあります。
自分の車はどんな話をしているのだろうと考えますし、もっと大切にたくさん乗ろうと思うようになります。
車と車、人と人の会話が多いので、本の厚さのわりには、読むのに時間はかかりませんでした。
車の視点と人間の視点が交差しながら話が進みますが、伊坂幸太郎さんの他のお話と同様、ちょっと間の抜けたようなキャラクターが多く登場するところが、読んでいて楽しい作品でした。
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