「パンとスープとネコ日和」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|群ようこ

「パンとスープとネコ日和」

著者:群ようこ 2012年4月に角川春樹事務所から出版

パンとスープとネコ日和の主要登場人物

アキコ(あきこ)
本作の主人公。唯一の身内である母親を突然なくし、永年勤めていた出版社を辞め、母親がやっていた食堂を改装し再オープンさせた。店の上で猫の「たろ」と暮らしている。

しまちゃん(しまちゃん)
店の求人募集の紙を見て応募し、採用される。背が高く、ソフトボール経験者。体ががっちりしている。全てに関して勘がよく、働き者。

ママ(まま)
向かいの喫茶店のママ。アキコに嫌味を言ったり、呆れたりするけれど、実はアキコのことを心配している。

パンとスープとネコ日和 の簡単なあらすじ

WOWOWにて小林聡美主演でドラマ化し、話題になった作品です。

母が経営していた食堂を改装し、サンドイッチとスープの店をオープンさせたアキコ。

しまちゃんや、喫茶店のママたちの助けもあり、店は繁盛していきます。

ひょんなことから、死んだと聞かされた父親のことを知り動揺したり、愛猫「たろ」の死で悲しみに暮れたりしますが、アキコは周囲の助けを借りつつ前を向いていきます。

パンとスープとネコ日和 の起承転結

【起】パンとスープとネコ日和 のあらすじ①

店の開業

53歳のアキコの身内は、猫の「たろ」しかいません。

唯一の身内であった母親は6年前に67歳で亡くなりました。

長患いせず、あっという間に倒れて亡くなりました。

父親の顔は知りません。

母親は「お食事処カヨ」というお店を切り盛りしていました。

アキコは母親亡き後、店を改装し、サンドイッチとスープの店としてオープンさせることにしました。

元は出版社に勤務していましたが、担当になった料理の先生に「あなたがやればいいじゃないの」と言われ、背中を押される形で出版社を辞め、お店をやってみることにしたのでした。

手伝いの人を募集したところ多数応募がありました。

どの人もピンとこなかったのですが、しまちゃんという背が高くガッチリした体形の礼儀正しい女性が面接に来ました。

アキコはしまちゃんを気に入り採用。

二人で働くことになったのです。

向かいの喫茶店のママから嫌味を言われたり助言をもらいながら、アキコは試行錯誤を繰り返し、徐々にお客を増やしていきます。

【承】パンとスープとネコ日和 のあらすじ②

父親について知るアキコ

アキコが店で忙しくしていたある日、タナカさんという女性が母親を訪ねてやってきました。

詳しく聞くと、昔、母親と勤め先が一緒だったとのことです。

母親が死んだことを伝えると「ちっとも知らなかった」とタナカさんは目を丸くしていました。

そして、母親になかなか会いに来られなかったことを詫びた後「娘さんの前でいうのはなんだけど、変な噂も流れてたのよ」とタナカさんが言いました。

どういうことかと聞くと、母親が昔、坊さんと良い仲になり、子どもを産んだという噂だということでした。

その時の子どもがアキコなのではないか、とのことでした。

母親からは、父親は生まれてすぐに亡くなったという話だけ聞いていたましたが、それ以上のことは聞いていませんでしたので、初耳でした。

別の日の定休日、再度タナカさんが訪ねてきます。

父親のことを調べてみたとのことでした。

アキコは知らなきゃ知らないでよいと割り切っていて、積極的に聞く気にはなれなかったのですが、タナカさんは、話す気満々といった様子でした。

とりあえず話を聞くと、やはりアキコの父親はお坊さんで、結婚はせずに母親はアキコを産んだようだとのことでした。

寺の名前や住所も知らされ、アキコはタナカさんのパワーに圧され呆然としました。

タナカさんの話を一人で考えながら「たろ」を抱っこしていると、しまちゃんから電話が入ります。

階段から落ち、捻挫をしたとのことでした。

一人で店をやることは難しく、4日間店を休みにすることを決めたアキコなのでした。

【転】パンとスープとネコ日和 のあらすじ③

父親のいた場所を訪ねるアキコ

喫茶店のママから小言を言われながらも、休みの張り紙をしたアキコ。

思わぬ長期休暇となり、まずは部屋の片づけを始めました。

「たろ」に邪魔されながらも一通り片づけを終え、気晴らしにカーテンを買いに、買い物へ出かけます。

アキコが行くインテリアショップのいくつか先の駅に、父親のいたお寺があります。

行ってもいいのだろうかと、アキコは考えます。

父親はもうすでに亡くなっているはずだし、偶然異母兄弟に会ったとしても、アキコの素性を見抜けるわけがないと考えたのです。

お寺のある駅で降りたアキコ。

緊張しつつ、お寺を訪ねます。

中に入る勇気もなく、門の前をうろうろしていましたが、たまたま通りかかった風を装って、門柱の陰に身を隠しました。

作務衣を来た背の高い初老の男性が姿を現し、お父さん!とアキコは思いましたが、父親と年齢が違うこと、すでに父親は亡くなっていると思いなおします。

すると突然、女性で寺の関係者らしき人に、声をかけられます。

花を見ていたと、とっさにごまかしたアキコ。

女性と話していると、先ほどアキコが父親と間違えた男性も歩み寄ってきます。

男性は、その寺の住職で、女性は住職の妻でした。

先代の住職(アキコの父と思われる人)は亡くなっており、息子である男性が寺を継いだとのこと。

自分の素性は隠し、異母兄と思われる住職と話をしました。

先代の住職はとても立派な人だったという話を聞きます。

その立派な住職の秘密の遊びの結果がアキコなのだと、アキコは動機が早くなります。

この思いを、兄と思われる人やその妻に聞いてほしいと思いましたが、何も証拠がないのに、軽々しく言うべきことじゃないと思いなおし、礼を言って寺を出るのでした。

兄と思われる男性と顔は似ていただろうか等々、考えるアキコでしたが、しまちゃんから回復したと連絡が入ります。

久々に店を開けることになり、開店準備やしまちゃんとの生活に戻るアキコなのでした。

【結】パンとスープとネコ日和 のあらすじ④

タロの死と周りの人の助け

しまちゃんも回復し、店を再開したアキコ。

そんな中「たろ」の元気がありません。

ある日呼吸の様子がおかしくなっており、急いで医者に診せますが亡くなってしまいます。

悲しみに暮れるアキコ。

しまちゃんも気遣ってくれて、何とかお店をやっていきますが、一人部屋に戻ると虚無感が押し寄せ、泣いてしまうのでした。

アキコは、どうしても兄のいる寺に行かなければ、心がざわついてしょうがいない状態になり、休みの日に足を踏み入れてはいけない寺にまた行ってしまいます。

こんなところまで来て、何をしているのだろうと、佇んでいましたが、義姉と思われる女性から声をかけられます。

義姉はアキコのことを覚えていました。

義姉を見て、涙を流すアキコ。

そして猫が亡くなった話をします。

話を義姉はしっかり受け止め聞いてくれました。

アキコは、話をしたことで、胸にたまった霧が晴れたように悲しみが薄らいでいきました。

帰り際「私を姉だと思って、また来てくださいね」と言われ、ぎくっとするアキコでしたが、お礼を言って寺を出ました。

しかし、そう言ってもらえて素直に嬉しく、気持ちが軽くなったのでした。

しまちゃんや新たに出会った兄や義姉(と思われる人たち)に支えられ、前を向いていくアキコなのでした。

パンとスープとネコ日和 を読んだ読書感想

群ようこの作品は、どこか人をほっとさせるような作品が多いです。

この作品は、大きな事件は起こらず、おせっかいな人はいるけれど、真の悪人は出てきません。

日々のちょっとしたことを、主人公がどう感じるかが丁寧に描かれています。

主人公が、しまちゃんを始め、関わる人たち皆に助けられて前に進んでいく姿を見て、自分も改めて周囲の人に感謝しなければと思いました。

また、この小説がドラマ化していたとのことで、映像化したら、店はどんな感じなのだろうとか、アキコやしまちゃんが動いている姿を見たくなり、次はドラマを見ようと心に誓ったのでした。

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