「作家ソノミの甘くない生活」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|群ようこ

群ようこ「作家ソノミの甘くない生活」

【ネタバレ有り】作家ソノミの甘くない生活 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:群ようこ 2012年11月に毎日出版社から出版

作家ソノミの甘くない生活の主要登場人物

ソノミ
独身の女性作家。基本的にサッパリした性格だが年老いた母や叔母を心配する優しい面もある。

エイコ
ソノミの82歳になる母親。趣味の社交ダンスを生きがいに、元気に一人暮らしを楽しんでいる。性格に少々難あり。

シゲコ
ソノミの叔母で母・エイコの妹。大人しくて我慢強い性格。

作家ソノミの甘くない生活 の簡単なあらすじ

ソノミは大学卒業後、梱包会社の営業事務職として働いていましたが、26歳の時に転職した編集プロダクションで頼まれ気軽に書いた文章がきっかけとなり、それから三十年以上のあいだ物書きとして生活を送っています。作家という職業に関する悩みも持ちながら、身内である母や叔母の面倒を見るソノミ。そんなソノミのリアルで甘くない日常生活。

作家ソノミの甘くない生活 の起承転結

【起】作家ソノミの甘くない生活 のあらすじ①

ソノミの日常

57歳のソノミは気ままな一人暮らしをする独身女性です。

職業は作家なのですが気づくと三十一年もの長い間、物を書くことを生業としていることに愕然とします。

そして、最近は体力が落ちたことで仕事も家事も思うようにいかないこと、出版業界は不況をたどる一方なので家賃を支払っていけるかなどの老後についての心配もあります。

自分と同じ年齢だった時の母は溌剌としていたし、当時の母から比べると自分は既にお婆さんだという気分になります。

そんな母は趣味の社交ダンスに精を出し、楽しそうに一人で暮らしているので、その点は安心なソノミですが母への生存確認の電話はマメにしています。

もう一人の身内である叔母のシゲコは遠方で金物屋を営んでいますが、こちらも一人暮らしの為ずっと営んできた金物屋を閉めたいと言っています。

なんでもチャキチャキと事を進め気も強い母と比べ、大人しくて優しい叔母に対しては母よりも親身になって色々と心配してしまうソノミなのでした。

【承】作家ソノミの甘くない生活 のあらすじ②

シゲコからの相談

相変わらず老化現象により仕事もはかどらず、図書館や買い物をする店でも不快な思いをするようなソノミの毎日ですが、そんなある日、叔母・シゲコから電話があり金物屋閉店についての相談を受けます。

無理をして体を壊すといけないので、閉店セールをして店を閉めるようにアドバイスするソノミ。

叔母は素直にソノミのアドバイスに従って、落ち着いたらソノミのマンションに遊びに来ると言って電話を切ります。

そんな二人のやり取りを知って面白くないのは、ソノミの母・エイコでした。

エイコとシゲコは性格が正反対のせいが、会えば喧嘩になってしまう姉妹だったのです。

以前から双方の悪口を聞かされるのはソノミの悩みの種でしたが、今回シゲコが上京することが決まり更に嫌な予感がするのでした。

案の定、仕事中にエイコから何度も「シゲコはいつ来るのか」と電話がかかってくるようになります。

母に仕事のペースをかき乱されて、ついつい頭に血が上ってしまうソノミなのでした。

【転】作家ソノミの甘くない生活 のあらすじ③

エイコ怪我をする

やっと仕事の調子が上がってきたころに、また母から電話がかかってきて憂鬱になるソノミ。

しかし今回の電話は病院からで、エイコが転んで怪我をしてしまったという知らせでした。

骨は折れていなかったものの、エイコは一人で家に帰ることは出来ずソノミは慌てて病院に迎えに行きます。

エイコを病院に連れて行ってくれたのは同じマンションに住む若い主婦で、エイコが日ごろから悪口を言っていた女性でした。

ソノミがお礼に行くと、その女性は確かに派手な見た目でしたが、エイコが困っていたから助けただという親切な女性でした。

ソノミが軽々しく人の悪口を言うものではないとエイコに注意すると、エイコは屁理屈を言い始めた挙句、「もう来なくていい。

仕事をさぼっちゃだめ」とソノミに説教を始める始末。

それでも心配になってソノミが翌日電話をしてみると、エイコはダンス教室に行くのだと言い張ります。

無理をしないように言っても、返ってくるのは「無理なんかしてない」という言葉で、母に対する鬱積した怒りを持て余すソノミ。

そんなソノミの元にシゲコから電話があり、遠慮がちに上京したいのだと告げられたのです。

【結】作家ソノミの甘くない生活 のあらすじ④

シゲコの上京

ソノミは家の中を整え新幹線のグリーン車も手配して、仕事を調節しシゲコを迎える準備をします。

そんななかシゲコは大きな荷物を持って、ソノミの住むマンションへとやって来ました。

姉であるエイコもマンションへ来ますが、二人は顔を合わせるなり言い合いになってソノミは疲れ果ててします。

そしてソノミは、編集者からのメールでエッセイの締め切りを一本忘れていたことを思い出し、めちゃくちゃ焦ります。

どこかにシゲコを連れて行かなければと思うのですがソノミは仕事に追われ、叔母は近所を散策する以外は家事をして過ごしています。

3日目にゲゲゲの鬼太郎が大好きなシゲコは、水木しげるゆかりの地である調布に行ってみたいと言い一人で出かけて行くと、翌日「本当にいい記念になった」と言って自分の家に帰っていきました。

あっけに取られるソノミでしたが、叔母は本当に楽しんだ様子で、ささやかなことで喜べる叔母は幸せだと羨ましくもなりました。

それに比べて母・エイコは相変わらずの様子ですが、どんなにウンザリしても子供として生まれた定めとして母のことは最後まで面倒を見なくてはならないと心に決めているソノミだったのです。

作家ソノミの甘くない生活 を読んだ読書感想

大きな事件が起きるわけではなく日常を淡々と描いているだけなのですが、自分の老化・親の老化がリアルに迫ってきて感慨深く読み進められた小説でした。

一見何気ないように感じられるソノミの悩みは切実で、未来の自分を見ているようにも感じました。

また、登場人物である三人は各々一人暮らしで性格も環境も違いますが、自分の好きなように気ままに生活できているのは素晴らしいことだと感じました。

性格には少々問題ありでも趣味を持って活動的に過ごすエイコは幸せだと思いますし、一人で元気に暮らしてくれていることでソノミも相当助かっているはずです。

そして、ささやかなことに喜びを感じられるシゲコの美点を見て、不満を抱くだけの毎日のなかに自分も小さな幸せを見つけてみたいと思わせてくれた作品でした。

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