「俺俺」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|星野智幸

著者:星野智幸 2010年6月に新潮社から出版

俺俺の主要登場人物

永野均(ながのひとし)
本作の主人公。家電量販店「メガトン」のカメラコーナーで働いている。地の文で一人称が太文字じゃないのが特徴。

檜山大樹(ひやまだいき)
均が盗んだ携帯の持ち主。スーツのあまりいけてない営業担当の男で、よくうんこ我慢するらしい。のちに主人公の名前になる。

大樹の母(だいきのはは)
読んで字のごとく、大樹の母親。今は亡きその夫もとい大樹の父はサラ金で借金膨らませてたので、均との電話中、そこをよく心配していた。

俺俺 の簡単なあらすじ

なりゆきでオレオレ詐欺を働いた俺こと均は、気付いたら別の「俺」になっていました。

上司も母も「俺」、「俺ではない俺」が増殖していきます。

増殖していく「俺」に耐えきれず、右往左往する「俺」同士はやがてお互いを消しあい、最終的に元に戻ります。

俺俺 の起承転結

【起】俺俺 のあらすじ①

なりゆきでオレオレ詐欺したら久々の実家に別の俺がいた

マクドナルドのカウンター席で、俺こと均の、左側の男檜山大樹が、均のトレーを自分のトレーと思って携帯を置いて、均がそれを持って立ち去りました。

均はアパートに帰り着いて、携帯を盗んだことを思い出し、後悔して捨てようと思ったら持ち主の母から電話がかかってきました。

一度は出ないで放置しましたが、母が携帯を持ってないと知り、こっちからかけようと考え、声や口調を真似てるとまた母からかかってきました。

均はそれに出て、話しているうちに借金こさえちゃったんだと、自分でもびっくりなフレーズが口をついて出ました。

それから友達の口座と称して自分の口座を告げ、母はそこにお金を振り込みました。

それから三日後の日曜日、均が仕事と飲みの誘いから帰ると、なぜか大樹の母がいました。

やむを得ず母を泊めて家に帰る母のあとをつけて、均は檜山家に入りました。

大樹の姉と姉の子供の話をしながら姉と子供の写真と、大樹ではなく均が写っている写真二枚を見つけます。

母から語られる思い出の数々に均はもうやばいと思って檜山家を後にし、均の実家を訪ねると「俺」が出てきました。

【承】俺俺 のあらすじ②

三人の「俺」

「俺」から駅付近で落ち合おうと言われたので、実家を追い出された均はマックを指定し、カウンター席で爽健美茶をすすりながら「俺」を待っていると爽健美茶を持った「俺」が均の左隣に座ってきました。

「俺」曰く均みたいな学生が二回やってきて最初は力ずくで追い返しましたが、二回目が来たときはそいつが「俺」に見えて母マサエと一緒にお前なんか知らないと言えませんでした。

さらに「俺」は均に対して本物の大樹が檜山大樹でなくなってる気がする、おまえは檜山大樹になりかけているから檜山大樹でいるしかないなどと話し、連絡先を交換しあい、均を檜山大樹として登録し、均は「俺」を均と登録ました。

それから土曜の朝に例の学生と三者面談すると連絡が入り、日曜の夜遅めなら参加可能と返信して、その日に学生の下宿でビールを飲みながら昔の愚痴を話し合っていました。

それから大樹こと均と、均と登録された「俺」と学生「俺」の三人は高尾山へ遊びに行き、街なかに出かける感覚で高尾山へ行く女の影口を言ったり、花札や周りが「俺」しかいない「俺山」作ろうなどと盛り上がりました。

【転】俺俺 のあらすじ③

止まらない「俺」の増殖と消えてく知り合いたち

職場の嫌いな先輩田島が「俺」に見えて以来、原初の均はあちこちで「俺」を見かけるようになりました。

市役所勤務の「俺」の均が生活保護申請する「俺」に会ったり、テレビのニュース映像に幾人もの「俺」がいたり、裁判の映像で被告人や裁判官や弁護人に「俺」がいたり、女の「俺」が現れたりと「俺」を見ない日はなくなりました。

原初の均は、原初の均を見下す職場の「俺」らに殺意を抱き、電車の中の「俺」どもを殲滅したいなどと思うほどでした。

そんな気を紛らわすために若禿げ「俺」の新聞を盗み読んでみたら、昨日一日、東京二十三区内だけで二十八人が自殺して五十三人が殺されたらしいのですが、原初の均の耳に届かないほど話題になっていませんでした。

さらに言えば交通事故や自殺の記事と入り交じって殺人事件がそっけなく報じられていました。

学生「俺」の家で学生「俺」が死んだり、市役所勤務の「俺」の均が生活保護申請者を刺して失踪したりと、知り合いが続々いなくなっていき、原初の均は高尾山へ逃げます。

【結】俺俺 のあらすじ④

そして誰もが「俺」でなくなった

原初の均は高尾山に逃げ込んでいましたが、何日間食べてないか覚えてないほど、飢えていました。

雪深い高尾山で削除しあった「俺」や草やきのこに当たって死んだ「俺」の服で均は寒さをしのいでいました。

均には削除した感覚や削除された感覚が刻み込まれてましたが、均は生きています。

蕎麦屋らしき店の戸口で死んだ「俺」の肉を切り取ろうとしたら別の「俺」がやってきて一悶着の後、シェアしようという結論に落ち着いたかと思いきや、結局「俺」はそれを反故にしました。

身体を離れ、意識だけになった均は、「俺」は「俺」を馬鹿にしてるから食えるのだ、「俺」を食えば食うほど「俺」の価値は落ちる悪循環を悟り、せめて栄養分として……と思ったら自分が必要とされている感覚に歓喜し、意識だけだった均は食った「俺」となりました。

ついに高尾山の「俺」は均しかいなくなり、高尾山を出て煙を見つけて煙の方へ向かうとそこは逃げた先で独りになった「俺」の集落でした。

気が付けば「俺ら」は消えてただの自分になっていました。

俺俺 を読んだ読書感想

大学一年生前後の時に最初に読み切ったときは「俺」の増殖こわい、半端ないなど頭の悪い感想しか浮かびませんでした。

ですが、改めて読み返してみて、あまたの俺の字にある種ゲシュタルト崩壊しかけたり、登場「人」物の大多数が「俺」になっていったりと、頭がどうにかなりそうでした。

個人的に泣きかけたポイントは、終盤の高尾山で主人公が栄養分として必要とされる自分に気付いて歓喜したところです。

いつものわたしは、小説を読むとき、解説まで読もうと思わないタイプなのですが、この『俺俺』では思わず読んでいました。

解説の一字一句が腑に落ちて、身にしみるように感じました。

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