シュレディンガーのチョコパフェ(山本弘)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

シュレディンガーのチョコパフェ

【ネタバレ有り】シュレディンガーのチョコパフェ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:山本弘 2008年1月に早川書房から出版

シュレディンガーのチョコパフェの主要登場人物

俺(おれ)
主人公。出版社に勤務。

裕美子(ゆみこ)
俺の彼女。CGアーティスト。

溝呂木隆一(みぞろぎりゅういち)
俺の学生時代の友達。高校卒業後に渡米し電磁波の研究に没頭する。

シュレディンガーのチョコパフェ の簡単なあらすじ

「俺」の高校時代の友人・溝呂木は天才的な頭脳に恵まれながらも、深い孤独と人類への敵意を抱いています。彼が全てを破壊しようとしていることを知り、恋人の裕美子と共に宇宙を救うための戦いへと挑んでいくのでした。

シュレディンガーのチョコパフェ の起承転結

【起】シュレディンガーのチョコパフェ のあらすじ①

ほろ苦いチョコパフェ

秋葉原でのショッピングの帰りに俺は、自称「チョコパフェのオーソリティ」である裕美子に連れられて喫茶店に入りました。

コーンフレークがトッピングされたパフェに不満たらたらながらも、彼女はしっかりと完食します。

せっかくのデートながら何処か上の空なのは、高校時代の友人・溝呂木隆一のことが心に引っかかっているからです。

高校卒業後にアメリカに渡ってアンテナの研究を続けていた溝呂木は、つい最近になって世界で初めてプラスの電磁波の観測に成功します。

これまでの電磁方程式を覆すほどの大発見になり、ノーベル賞ものの研究成果です。

その一方でプラス電磁波は時間を遡るほどのエネルギーを秘めていて、全宇宙が消滅する危険も否定出来ません。

【承】シュレディンガーのチョコパフェ のあらすじ②

孤独な天才

高校生の頃から溝呂木はクラスでも浮いた存在で、休み時間には教室の隅っこでペーパーブックを読みふけるような生徒でした。

アメリカの大学へ進学したために長らく疎遠になっていましたが、俺の勤め先の編集会議で彼の名前が上がります。

インタビューがてら一時帰国している溝呂木を実家まで訪ねて再会を果たしますが、その偏屈な性格は学生時代と変わっていません。

海の向こうでも人間関係やコミュニケーションに苦労したようで、大学側ともトラブルを起こしているようです。

プライベートでは24歳の時にお見合い結婚をするものの、僅か1年足らずで離婚に至っています。

自分以外の全ての存在を否定する溝呂木は、この世界そのものを破壊しようとしているようです。

【転】シュレディンガーのチョコパフェ のあらすじ③

2人の命運を分けたもの

俺自身もかつては電気街を徘徊してフィギュアやアニメのDVDを買い漁るのだけが慰めだっだ、残念な男子高校生でした。

そんな「オタク」のレッテルを貼られた青年が変わるきっかけになったのが、裕美子との出逢いからです。一見するとスイーツにしか興味がない今時の女子ながらも、深い知性とCGアーティストとしての仕事への情熱を胸に宿しています。

休日になると彼女のチョコレートパフェ巡りに付き合わされてばかりで、俺の膨大なフィギュアコレクションは相変わらず理解されることはありません。

お互いの違いを受け入れながらお付き合いを続けてきた俺たちのように、溝呂木の凶行を止めるためには手を差し伸べる他の誰かの存在が必要なはずです。

【結】シュレディンガーのチョコパフェ のあらすじ④

最期に残るもの

再び溝呂木の自宅を訪れた俺が目撃したのは、歴史をリセットする電磁波装置です。地球規模での環境破壊に資源の枯渇、繰り返されるテロ事件に紛争。

誤った世界を1度バラバラにして、再び組み立て直すと豪語します。

電磁波発動を阻止するために飛びかかりますが、溝呂木の姿は既に消えていて装置は止まりません。

宇宙の消滅を覚悟した俺は、最期の時を一緒に過ごすために裕美子の下へ駆け付けました。

記憶が消えていく中でも、ふたりはお互いへの愛だけが残ることを強く念じます。意識を取り戻した俺の前にいたのは、由宇という女性です。名前の響きに若干違和感を感じましたが、近くのフルーツパーラーでチョコレートパーラーを食べる姿にひと安心するのでした。

シュレディンガーのチョコパフェ を読んだ読書感想

ゲームデザイナーとしても活躍している著者らしく、文章を目で追いかけていくうちにイメージが頭の中にすんなりと染み渡っていきます。電気街でフィギュア集めに没頭する男とチョコレート・パフェを食べ歩くことが大好きな女性が、全宇宙の運命を救う冒険が痛快です。物理学の才能を誇りながらも他の誰かを愛することができないかつてのクラスメイトが、電磁波を使って世界を崩壊へと導いていく様子もスリリングでした。「生きたいのなら、自分以外の多くのものを許容しなくてはならない」というセリフが心に響きます。マニアやオタクと揶揄され続けてきた今時の若い世代の男女が、初めて自分以外の存在と向き合いお互いを受け入れていく瞬間が感動的です。

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