「だから荒野」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|桐野夏生

著者:桐野夏生 2013年10月に毎日新聞社から出版

だから荒野の主要登場人物

森村朋美(もりむらともみ)
主人公。46歳の誕生日に夫と子供を捨て家出を決意する。車で長崎まで向かう。

森村浩光(もりむらひろみつ)
朋美の夫でハウジングメーカーに勤めている。妻の家出より車とゴルフバックの行方を心配している。

森村健太(もりむらけんた)
森村家の長男で大学生。同じ大学に彼女がおり、彼女の家に入り浸っている。

森村優太(もりむらゆうた)
森村家の次男で高校一年生。学校から帰るとすぐ自室に篭りネットゲーム三昧の日々を送る。

だから荒野 の簡単なあらすじ

46歳の誕生日を迎えた森村朋美ですが、家族の誰一人として祝ってくれる者はおらず、突然車ひとつで家出を決意します。

結婚する前まで付き合っていた男性に会うため、長崎まで向かうことにしたのですが、向かう途中で若い女にだまされて車を盗まれてしまいます。

その後、山岡という老人と出会い、何とか長崎にたどり着き、そこで同居生活が始まります。

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だから荒野 の起承転結

【起】だから荒野 のあらすじ①

家族との決別

46歳の誕生日を迎えた主婦の森村朋美。

?には茶色いシミが増え、年を取るごとに誕生日が虚しい日だと感じていました。

そんな気持ちを払拭するため朋美は、夫の浩光の重い尻を叩き、近頃は母親とも目も合わさなくなった2人の息子を連れて豪華なディナーを食べに出かけようと計画します。

この日のために買ったチュニックドレスに着替えた朋美を見た家族は「おめでとう」の一言もなしに朋美の服装や化粧についてダメ出しをはじめます。

次男の優太はレストランには行かないと言いだし、夫と長男は誕生日までも朋美に運転をさせてレストランへ向かいます。

レストランでも朋美への嫌味や止まりません。

料理や掃除の苦手な朋美に対し、あれが出来ていない、これが嫌だったと文句を言い、しまいには朋美自身が予約したレストランの料理にまで意見します。

そんな夫と長男に「先にレストランを出る」とだけ告げて朋美は車に戻ります。

車に戻った朋美は家に帰るのはやめよう、皆と暮らすのは、これでおしまいにしようと決意します。

朋美はふと、今の夫と結婚する前まで付き合っていた、長崎に住んでいる酒井典彦に会いに行ってみようかと思いつきます。

家族を捨て、現金9万円とクレジットカード2枚を手に朋美は東京から長崎まで車で向かうことにするのです。

【承】だから荒野 のあらすじ②

朋美の失敗

家出した朋美に対し、夫の浩光はメールを送ります。

しかしそこには朋美への謝罪の言葉はなく、週末に予定しているゴルフコンペまでに車とトランクに積んであるゴルフバッグを返してほしいという内容でした。

怒った朋美は近くのゴルフ中古品店に浩光のゴルフバッグを売ってしまいます。

その際ゴルフバッグとともに革製のポーチが見つかりました。

中を確かめてみると大量のコンドームと「小野寺小百合」という名前と住所、電話番号が書かれた紙が見つかります。

朋美は夫の浩光が、ゴルフバッグより何よりポーチに入っていた「小野寺小百合」という人物の連絡先をほしかったのだと気が付きます。

自分を一切心配していないらしい夫と息子たちの態度に朋美は腹立ち、落胆します。

東京から長崎に向けて車を走らせ山陰道に入ったところでした。

朋美がパーキングエリアでトイレに立ち寄ったところ、桜田という女性が声をかけてきます。

桜田は10月の寒空にタンクトップとスカートという薄手の格好でした。

聞くと桜田は、下関に行く途中の車中で旦那と口論になり、置いて行かれたと朋美に助けを求めます。

見かねた朋美は彼女を下関まで送ってあげることにします。

車中ではお互いの身の上話をして打ち明けた二人でした。

途中、桜田が宮島サービスエリアから宮島が見えるので、見に行こうと朋美を誘います。

宮島サービスエリアで車から降りた二人でしたが、桜田から車内に忘れ物をしたのでキーを貸してほしいと頼まれます。

朋美は鍵を桜田に渡し、トイレに寄って車に戻りますが、自分の車がどうしても見つかりません。

朋美は、桜田に車を盗られたことにようやく気が付きます。

【転】だから荒野 のあらすじ③

山岡との出会い

夫の浩光は自分の体裁を守るため、妻はハワイ旅行に出かけていると周囲に嘘をつきます。

朋美が帰って来るつもりがないことが分かると浩光は貯金を切り崩し、新車のベンツと新しいゴルフクラブセットを購入して、何とか日常を保とうとします。

その頃桜田に車を盗まれた朋美は、長崎までヒッチハイクをしながら向かうことにします。

すると一台の軽自動車が止まり、長崎まで同乗させてもらえることになりました。

車に乗っていたのは山岡という鍼灸師をやっている老人とその弟子である亀田という青年でした。

山岡は鍼灸師になる前は教師として働いており、今は阪神淡路大震災や東日本大地震の被災地を周り、講演活動をしていました。

そんな山岡に朋美は、数日前に車一つで家出をしたこと、東京から長崎へ向かおうと思っていたこと、その車を若い女に盗まれてしまったことなどを打ち明けます。

山岡は行くあてもない朋美に、決まるまで自宅にいてもいいと言ってくれます。

親戚も友人もいない長崎で朋美は、山岡の身の回りの世話をしながら同居生活を始めます。

【結】だから荒野 のあらすじ④

家出の結末

山岡の家で暮らすようになった朋美のもとに次男の優太から、自分も長崎に行ってもいいかという電話がかかってきます。

久しぶりの息子の甘えた態度に嬉しくなった朋美は、長崎空港まで優太を迎えに行きます。

3人で暮らし始めた朋美たちでしたが、山岡は認知症があるようで、生活費のことで度々食い違いが起き始めます。

これまでは山岡の弟子である亀田が講演会の講演料や身の回りの金銭管理を行っていたようですが、ヒッチハイクをして長崎に着いて以来、彼はすっかり姿を見せなくなります。

朋美は、亀田が山岡のお金を騙し取っていたのではないかと疑念を持ちます。

そしてこのままでは、自分たちが山岡のお金を使い込んだと疑われてしまうのではないか不安になります。

そのうち近所に住む山岡の姪御が訪ねてきて、世間体も悪いので出て行ってくれと朋美に告げます。

朋美は考えた末、今後のことについては一度東京に戻り、夫と相談した上でまたお手伝いに来ると告げます。

こうして1カ月に及んだ森村家の家出騒動は、幕を閉じます。

だから荒野 を読んだ読書感想

朋美に対する家族への態度があまりにも冷たくて、「ひどい!」「家出して当然だ!」と共感の気持ちが止まりませんでした。

物語の冒頭で既に夢中にさせられてしまっています。

最後は結局自宅に戻る朋美ですが、最初とは明らかに家族の関係性が変わっています。

子供たちが母親の大事さに気づいた!とかそういう大きな結果ではありませんが、朋美自身が遠く離れた長崎まで自力で行き、そこで暮らした経験を持ったからこそ強くなったような、打ち負かされない何かを知らぬ間に身につけたというような感じでしょうか。

ドラマチックなことが起きるような本ではありませんが、題材が身近なだけに、かなりのめり込んで読みました。

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